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京都の夏の風物詩。花街から生まれたしゃれた甘味
鍵善良房の「甘露竹」
つるん、と青竹から出てきた水ようかん。口に入れたときは確かに寒天の固さを感じたものの、舌の上にのせるとふっと消えてしまう。このはかなさは、まさしく笹の葉に浮かぶ朝露のよう。15代主人・今西善也さんは「もう1本食べとなるぐらいが、ええでしょう?」と「甘露竹(かんろたけ)」に言葉を添えました。今でこそ竹流しの水ようかんは京都ではおなじみですが、花街(かがい)ではこのような涼菓を古くから出していました。味わうべきは清々しい竹の色。青竹の香りをあんにのせて季節を感じるというのが、何事にも風流を好んだ花街の人々なのでしょう。
1本の竹から太さのそろった竹筒は3~4本しか取れません。朝、切り出されたものを店で受け取り、水に漬けて洗浄。翌日の朝からようかんを仕上げ、竹筒に流し入れたものがそのまま店頭に並びます。青竹のごとく鮮度のいい味わいが楽しめるのです。「この水ようかんは昭和の初めにはあったと聞いています。とても手間がかかりますが、気に入ってくださるお客様がいらっしゃるおかげで、長く続けてこられました」
江戸・享保(きょうほう)年間(1716~1736)から京都一の花街・祇園に店を構えるこの店。店頭を飾るお菓子のすべてに祇園に暮らす人々の風俗や文化をうかがうことのできる貴重な一軒となっています。
涼しさがさらに増す贈答用の竹かご
店舗情報
鍵善良房 かぎぜんよしふさ
住所:京都府京都市東山区祇園町北側264
電話:075-561-1818
営業時間:9時30分~18時(喫茶は10時~17時30分L.O. こみ具合によりL.O.は早まる場合があります) 月曜休(祝日の場合は営業、翌日休)
●お取り寄せができます。ウェブサイト(https://www.kagizen.co.jp/)もしくは電話にて注文を。
撮影/石井宏明 構成/藤田 優、後藤淳美(本誌)本記事は雑誌『和樂(2021年8・9月号)』の転載です。
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