Craftsmanship

2025.02.27

繊細さにときめく♡ 季節を映す「和菓子」の世界【手仕事の京都・コラム】

季節のうつろいや、みやこびとが愛した文様や物語などを味、色、形で表現。手のひらにのる小さな美意識の結晶ともいうべき、和菓子。「京都の手仕事」といえば、和菓子は外せません。 とりわけ春の和菓子の風情は際立って華やか! 風雅な菓子を競う京都の菓子司のなかでも、干菓子と主菓子の名店の麗しき春の和菓子を並べてみました。

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そのたおやかで麗しい姿はまさに「超絶技巧」!

四季の風情を丹念な細工で表現!「亀廣保」の煌めく干菓子

干菓子専門店「亀廣保(かめひろやす)」は、老舗「亀末廣(かめすえひろ)」」から暖簾分け、大正4(1915)年、室町二条に創業。店内に入ると小上がりの間に小さなショーケース。
季節の干菓子が並び、ひとつからでも購入できますが、季節の彩りが10種ほど詰まった小箱(1700円~)がおすすめ。とりわけこちらの有平糖(あるへいとう)は形と色の美しさ、種類の豊富さに定評があります。

技と色出しが決め手の「有平糖」(流水、つくし、たんぽぽ、れんげ、すみれ、菖蒲<しょうぶ>、楓<かえで>の実)。和三盆や寒梅粉(かんばいこ)に砂糖を加えて木型に打ち出した「打物」(筏<いかだ>、青楓、観世水<かんぜみず>)。砂糖に寒梅粉を混ぜた生地を型で抜く「生砂糖<きざとう>」(花びら、葉)、つくね芋と砂糖を混ぜた生地を型抜きした「片栗」(桜、蝶)。単品120円~。すべて3~5月の販売。

「押物(おしもの)や打物(うちもの)、有平糖などの干菓子は、お茶受けはもちろん、茶席では欠かせない和菓子です。色出しや細工など、色の透明感や細部のつくりにもこだわり、工夫と技を凝らしています。色彩や意匠で季節を感じ、味覚だけでなく、目でも楽しんでいただけたら」と4代目・草野方夫(くさのまさお)さんはいいます。

「亀廣保」店舗情報

読み方:かめひろやす
住所:京都市中京区室町通二条下ル蛸薬師町288
電話:075-231-6737
営業時間:9時~17時
休み:日曜・祝日
公式サイト:http://kamehiroyasu.com/

これぞ京菓子! 美しさと遊び心に満ちた「末富」の風雅な主菓子

一方、明治26(1893)年開業の「末富(すえとみ)」は、東本願寺を中心に、寺社や茶道家元御用達の京菓子の名店。なかでも、刻々と変わりゆく四季折々の色彩を、ため息が出るほど美しいグラデーションで表現したきんとんの存在感といったら! 熟練の職人の手による、繊細な味や舌触りを楽しめる末富の主菓子はどれも、小さな芸術品といえます。

「平安朝の女官の衣を重ねたときの雅な色使いを〝かさねの色目〟といい、それが京菓子の華やかな色合いに生かされています。自然の美を表から裏から見た色目のことで、配色や濃淡によって四季を繊細に表現しています。また京菓子には、5月の主菓子『唐衣(からごろも)』のように、伊勢物語の有名な歌の当意即妙をそのまま菓子にし、趣のある菓銘がつけられたものもあり、菓子に込められた思いや遊び心も一緒に味わっていただくとうれしいですね」と4代目山口祥二(やまぐちしょうじ)さん。

上から/ピンク色と緑色で桜を表したきんとん「都の春」540円。ふんわり、しっとり、薯蕷(じょうよ)生地にこし餡を挟んだ「さくら」540円。つぶ餡を求肥(ぎゅうひ)で包んだ「唐衣」(594円)は、杜若(かきつばた)を折り紙の手法で表現。こし餡に薄力粉を混ぜて蒸し、練り上げた京菓子特有の生地でつくるこなし「花らせん」(572円)。「唐衣」のみ5月、ほかは4月の販売。

京都の和菓子には、日本人が古くから大切にしてきた季節を愛でる心や、受け継がれてきた繊細な手仕事が息づいています。

「末富」店舗情報

読み方:すえとみ
住所:京都市下京区松原通室町東入ル
電話:075-351-0808
営業時間:9時~17時 
休み:日曜・祝日
公式サイト:https://www.kyoto-suetomi.com/

※本記事は雑誌『和樂(2024年4・5月号)』の転載です。
※掲載価格はすべて税込です。掲載商品は、売り切れや販売期間の終了の場合があります。価格や営業時間も変更される可能性がありますので、お出かけの前に公式サイトなどでご確認ください。

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和樂web編集部


構成/田中美保 撮影/内藤貞保
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