世界に1冊の宝物のような本を自分の身近に…
2022年にスタートし、以来、『和樂』本誌の好評連載となっている牧山桂子さんのエッセイ「武相荘のたからもの」。
桂子さんの目を通して綴られる両親、白洲次郎・正子夫妻の思いがけない表情は、ファンならずとも新しい発見に満ちています。そんな連載の第十一回(2024年4・5月号)に登場したのが、桂子さんの発案で生まれた、正子さんの著書の「特別装丁本」でした。
20代の初めにヨーロッパに滞在していた桂子さんは、滞在先のマダムが手がける革張りに金の文字が入った本の装丁を目にします。いつか自分でも、そんな美しい本を手がけてみたいと思った桂子さんに、機会が訪れたのは平成12(2000)年のことでした。
桂子さんの心のなかには、そのときすでに、正子さんが遺した着物を使った装丁のイメージがあったといいます。たとえば『白洲正子への手紙』は、正子さんと親交の深かった織り師・田島隆夫さんとの書簡集ですが、正子さん旧蔵の田島さんの織り地で包まれているほか、見返しには書簡そのものが貼られ、世界に1冊しかない本に…。
これらの特別装丁本は長らく門外不出となっていましたが、「不憫に」なってきたという桂子さんの意向から、このほど販売の機会が設けられました。販売されるのは『白洲正子への手紙』ほか『ひたごころ』『対座』『白洲正子全集』の一部で、価格は70,000円(税抜)~の予定。
読むだけでなく、愛でるために生まれた美しい本を、この機会にぜひ、足を運んで見てみてください。
銀座にあるユニークな書店「森岡書店」で開催!
白洲正子さんの特別装丁本の販売イベントが開かれるのは、「一冊の本を売る書店」として国内外の注目を集める東京・銀座の森岡書店。
毎回、一冊の本を取り上げ、本のテーマから派生する展覧会を開催しながら、本づくりに携わった編集者やデザイナーが集い、本を販売しています。花に関する本なら花屋のようになり、洋服に関する本なら洋服屋のようになり…今回の特別な本がどのように販売されるかも楽しみです。
森岡書店があるのは、昭和初期に建てられた歴史的近代建造物であるレンガづくりの「鈴木ビル」。銀座歩きに組み込みたい書店、そして必見のイベントです。
イベント詳細
会期:2024年10月29日(火)~11月3日(日・祝)会期中無休
営業時間:13時~19時
東京都中央区銀座1-28-15 鈴木ビル1F
03・3535・5020
info@moriokashoten.com
撮影/横田紋子(小学館写真室) 協力/牧山桂子 写真提供/旧白洲邸 武相荘 構成/吉川 純(本誌)
※本記事は『和樂』2024年10月号の転載です。