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2019.08.30

【香川】桃太郎を追体験!鬼ヶ島に行ってみたら鬼のやさしさがあふれまくっていた!

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「昔々あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました」ではじまる昔話の中でも、もっとも有名なのが「桃太郎」ではないでしょうか。

川でおばあさんが洗濯していると、上流から桃が流れてきて割ってみたら子どもが飛び出したことから名付けられた桃太郎。成長すると犬、猿、キジをお供に舟で鬼ヶ島にわたり、悪い鬼を退治する。だれしもいずれかのシーンを見たり聞いたりしたことがあるのではないでしょうか。

「桃太郎のふるさと」といわれ、町じゅうに桃太郎のいる岡山出身の私は、帰省した折に、昔話を体験しようとひらめいて、鬼ヶ島に行ってきました。

「桃太郎」を追体験してみよう

まずはきびだんごづくり

最初は桃を拾うシーンから始めたいところですが、ここは省略して、おばあさんが作ってくれた「きびだんご」から。桃太郎伝説発祥の地・岡山では「きびだんご」は人気のおみやげで、いろんなメーカーのものが売られています。ただ、今回は食べやすいおやつ風味のものではなく、鬼とたたかえるくらいの、力のつくお団子をおばあさんではなく母に作ってもらいました。

きびだんごの「きび」は雑穀などを扱っているお店で手に入ります。国産だと100グラム200円、中国産が100グラム100円といったところ。あざやかな黄色と丸い粒が印象的です。

お米を研ぐように洗ったきびを一晩水に浸して寝かせ、同量のもち米と一緒に炊飯器で炊きます。きびを粉にするとよりお団子らしくなりますが、母はレシピサイトを見ながらこの方法がベストだと考えたようです。

そして完成したのがこちら。

まあ、立派なきびだんごができました。ひとつ食べてみると、とってもおいしくて主食として立派に成り立ちそう。すこし苦みがあるのは、きびの味かしら。「きび」を意識したのは初めてなのでよくわかりません。でも、これならお供たちにも喜んでもらるでしょう。母のきびだんごを腰に下げて、いざ鬼退治へ!

桃太郎が活躍した鬼ヶ島へ

鬼ヶ島へ渡るにはいったん香川県の高松までいかねばなりません。岡山駅からJR西日本のマリンライナーに乗って瀬戸大橋を渡ります。車窓から見える海の景色、島がたくさん浮かんで、なんだか心がワクワクします。

1時間弱で高松駅に到着。高松港まで歩いて「女木島行き」のフェリーに乗船します。この女木島(めぎしま)が「鬼ヶ島」といわれている島です。近くには「男木島(おぎしま)」もあります。

夏の間、フェリーは1時間に1便程度と普段の倍に増便されていますが、それでも切符売り場には行列ができていました。「瀬戸内国際芸術祭 2019」の開催期間中だったことも関係しているかもしれません。(瀬戸内国際芸術祭2019 夏の様子がわかる記事はこちら

定刻通りやってきた「めおん号」に乗船。この日は台風一過で日差しが強く、甲板にいても「気持ちいい」より「暑い」ほうが勝っていましたが、港と都市の風景がどんどん遠ざかると、旅の気分も盛り上がっていきます。250人乗りのフェリーが8割ほどうまっていて、鬼ヶ島は想像以上に人気のよう。このなかに鬼退治を追体験しようとしている人は、私以外にいるかしら・・・。

20分ほどで女木島に到着。島の正面にある「おにの館」という建物にコインロッカーがあり、観光案内や、軽食もあります。また、1日1,000円で電動自転車のレンタルもできます。

桃太郎になったつもりで鬼のすみかへ

島の中腹にある鷲ヶ峰山頂の大きな洞窟が、古来鬼が住んでいたと伝えられているところ。徒歩なら1時間ほどですが、猛暑のため断念してバスを利用しました。山頂への道は細く険しく、バス1台通るのがやっとです。

鬼、鬼、鬼が押し寄せてくる!

洞窟へと向かうと大きな鬼が!

山の茂みの中に、巨大な金棒を持って長い角をつけた赤鬼がじっと海のほうをみているではありませんか。すでにちょっとどころではなく、こわい

洞窟の入り口手前にも鬼が!

青鬼よりも人間っぽい鬼の子が不気味なこわさ。望遠鏡で遠くを見ているなんて、用心深い鬼たち

いよいよ洞窟の中へ。しめ縄の張られた狭い入口をくぐります。このそばにもいかつい青鬼が立っていました。


洞窟に入って、ところどころに「頭上注意」と書かれた低い天井の下を「順路」の文字にしたがって進んでいくと鬼が洞窟のいたるところに立っていました。

こわごわ鬼を観察しながら体を縮めて歩いていたら、いつの間にかひとりぼっちになっていました。そこに天井から水が滴り落ちて、腕にぴちょん。その冷たさにおもわず「ひぃっ」とのけぞってしまいました。これじゃ肝だめしだ。

こちらは、3人の鬼が会議をしているところ。真ん中の鬼が「ラスボス」的な存在かと思っていましたが違いました

こちらが「鬼の大将」。他の鬼よりもひときわ大きく迫力満点。動かないとはわかっていても逃げたくなるようなおそろしさがありました

たたかったあと、最後にはなかなおりをして、お互いよい笑顔で握手を交わしていました。めでたしめでたし

洞窟の出口では、鬼たちが手を振って見送ってくれます。やさしい

こわいのにたのしかった鬼の洞窟。最初は本気でおそろしかったけれど、どことなく名残惜しい気がするのは、鬼は鬼なりに島を守ろうとしていたことがわかったからなのかもしれません。

島の人たちと鬼がともにくらす島

洞窟よりさらに上の山頂は展望台になっていて、瀬戸内海を一望することができます。結局お供は現れなかったので、展望台で海と島を眺めながらきびだんごをいただきました。

その後は海沿いを探索。

この鬼は道しるべとなっていて、山への道のポイントごとに立っています。洞窟までののこりの距離を教えてくる親切でかわいい子です

波止場の先にも鬼がいます。船が来るのを見金棒のかわりに灯台を抱え、この島を見守ってくれているかのようなたたずまい

なぜかモアイもいます

このモアイ像は、高松市内のクレーンメーカーがイースター島のモアイ像を立て直すプロジェクトに携わった際、テスト実験のために製造されたものとのこと。イースター島のモアイ像と同じ凝灰岩を使っているそうです。ほかにも古墳や海水浴場、芸術祭のためのアートなど、本当にいろんなものが鬼ヶ島には詰まっています。

昔話のさとを訪ねるたのしさ

鬼ヶ島は鬼が生き生きと暮らしていた島ですが、その歴史は実はそんなに深くありません。

香川県で小学校の校長をしていた橋本仙太郎が高松市鬼無(おになし)地区の地名や伝承を調査していたときに発見したのが、さっきの洞窟。大正13(1915)年のことでした。それを鬼のすみかだと考えた橋本は、岡山などいくつかの伝承地のうちでも鬼無こそ、桃太郎の物語の舞台だと確信したようです。

洞窟の出口付近にある橋本仙太郎の記念碑

洞窟は、昭和6(1931)年から観光地となり、鬼の人形もおかれました。洞窟は紀元前100年ごろに造られたと推定され、見上げると天井には手で削ったあとがあり、人工的につくられたとわかります。かつて、だれかが実際に、この洞窟に住んでいたのです。

島を歩いていると軽トラックやトラクターの姿が目に入ります。鬼ヶ島も今は生活している人がいて、昔話と21世紀の世界が交錯しているようです。「桃太郎」という昔話のクライマックスの舞台である鬼ヶ島で、鬼は現在、観光資源となって訪れる人たちを楽しませてくれている。そう考えるととてもすばらしいことのように思えました。

おみやげももちろん鬼。Tシャツはどこかでみたようなデザイン

鬼ヶ島のほかにも、昔話にまつわる土地は日本各地にたくさんあります。日本の文化をひっそりと守ってきたであろう昔話のさとを訪れると、新しい発見がありますよ!

女木島へのアクセス・鬼ヶ島大洞窟情報

女木島行フェリー

料金:高松~女木島 大人370円 小学生190円 ※1才~未就学児は、大人1人につき1名無料、2人目から小学生と同じ。0才児は無料
公式サイト:雌雄島海運株式会社(時刻表も確認できます)

鬼ヶ島大洞窟

住所:香川県高松市女木町235
入場料:大人(高校生以上)600円 こども(小・中学生)300円
営業時間:8:30~17:00(入場は16:30まで)
定休日:無休

参考:香川県観光協会サイト

書いた人

岡山市出身、歴史学の博士号をもつ大の歴史好き。レトロという言葉だけでは語れない、戦前の日本文化を伝えたいと思っている。趣味は読書と街歩きと宝塚観劇と漫才で笑うこと。紺野ともという名で詩人もしている。