「重文橋」を目的に旅する人が急増!
今見るべき橋はこの5つ
日本各所にある、重要文化財に指定された橋はどれも個性豊か!
橋を見るために旅したくなるほどのデザインや構造に優れた橋を紅林章央さんが教えてくれました。
※『和樂』2023年8・9月号掲載時は重要文化財だった「通潤橋」(アイキャッチ画像)は、令和5(2023)年、国宝に指定されました!
諫早眼鏡橋 いさはやめがねばし
●重要文化財 天保10(1839)年竣工/石造二連アーチ橋/約50m
「優美なアーチ曲線で、日本を代表する石橋です」

日本で最初に国の重要文化財に指定された石橋。長崎県諫早市の緑豊かな公園にあり、池に静かに映り込む二連アーチ橋はため息がでるほど美しい。桜やツツジ、蛍や紅葉など季節ごとに趣ある景観とともに楽しめる。「撮影のおすすめは順光の午前8時、9時くらい。繊細な欄干の細工までも池に映り、見事な〝眼鏡〟になります」
旧筑後川橋梁 きゅうちくごがわきょうりょう
●重要文化財 昭和10(1935)年竣工/鋼製昇開橋/507.2m
「造形も構造も、鉄道可動橋建設技術が際立っています」

国鉄佐賀線の鉄道橋としてつくられた、現存する最古の昇開式可動橋。廃線後も保存され、新たな観光地に。「今も1時間に1回稼働していて、昇降シーンは迫力があります。歩道橋として活用されているので、ぜひ歩いて渡ってみてください」。また、日没後にはライトアップも。雄大な筑後川に真っ赤な橋が浮かび上がる姿も美しい。間近でぜひ、橋の昇降をご覧あれ!
神子畑鋳鉄橋 みこばたちゅうてつきょう
●重要文化財 明治16〜18(1883〜1885)年竣工/鋳鉄単径間アーチ橋/16m
「フランス人が手がけただけあって、繊細なデザインです」

兵庫県・神子畑鉱山で採鉱された鉱石を、生野(いくの)の製錬所へ運ぶために架けられた5本の鋳鉄橋のひとつ。鉄橋としても日本で3番目の古さを誇る。「型に鉄を流し込んでつくった材で組み立てていて、つくりが非常に繊細。フランス人が設計・デザインを担当したためか、19世紀のフランスの橋の雰囲気が漂う、とても美しい橋です」
耶馬渓橋 やばけいばし
●重要文化財 大正12(1923)年竣工/8連石造アーチ橋/116m
「川をまたぐ、116mにも及ぶ8連のアーチはやはり大迫力です!」

日本で唯一の8連石造アーチ橋で、日本最長の石造アーチ橋でもある。「大分県の山国川(やまくにがわ)に架かる石橋で、上流の馬渓橋(ばけいばし)、羅漢寺橋(らかんじばし)とともに耶馬渓三橋と呼ばれています。有名な青の洞門も近いので、観光にぜひ」。令和4(2022)年、国の重要文化財に。愛称の「オランダ橋」は長崎県に多い石積み方式であることから付いたといわれる。日本百名橋のひとつです!
通潤橋 つうじゅんきょう
●国宝 嘉永7(1854)年竣工/石造りアーチ水路橋/76m
「豪快に水を吐き出す姿は圧巻。運がよければ虹が出ることも」

四方を河川に囲まれた、熊本県の白糸台地に農業用水を送るために建設された日本最大の石造りアーチ水路橋。「日本で唯一、放水できる石橋。用水路なので、もともとは中の土砂を出す、メンテナンスのため放水なんです。現在も使われているので、ホームページで放水カレンダーを確認して、ぜひ間近で放水を見てみてください」
解説:紅林章央さん 元東京都建設局橋梁構造専門課長。奥多摩大橋など多くの橋や、ゆりかもめなどの建設を担当。著書に『東京の橋100選+100』『橋を透して見た風景』『HERO 東京をつくった土木エンジニアたちの物語』など。
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撮影/紅林章央 構成/田中美保
※本記事は雑誌『和樂(2023年8・9月号)』の再編集による転載です。

