1780年の創業以来、自然との対話を重ねながら揺るぎない美意識とスタイルを確立してきた
ハイジュエリーメゾン「ショーメ」。新作「ジュエルズ バイ ネイチャー」は、そんな自然主義のジュエラーの集大成ともいえるハイジュエリーコレクションです。〝永遠、儚さ、再生〟という3つの視点から自然の物語をひもとき、その循環と生命の輝きを3部構成で詩的かつドラマティックに表現。ハイジュエリーアトリエが生み出した、傑出した完成度のコレクションをご紹介します。
「自然主義のジュエラー」は新たな表現を完成し、未来へ
1780年の創業から240年以上もの長きにわたり、自然と対話を重ね、その美しさをジュエリーで表現してきたハイジュエリーメゾン「ショーメ」。その創作の根幹にあるのが、自然の美しさだけでなく、命にも向けられたひたむきなまなざしです。
創業者マリ=エティエンヌ・ニトは、草花や果実、昆虫、鳥といった動植物を観察し、その姿を写し取っては、詩的な余韻を感じさせるジュエリーへと昇華させていきました。
そんなニトの自然観、美意識に大きな影響を与えたのが、フランス皇帝ナポレオン1世の后、ジョゼフィーヌの存在でした。カリブ海のフランス領マルティニーク島で生まれ育ったジョゼフィーヌは、自然を心から愛し、自身が暮らすマルメゾン宮殿をバラ園にしてしまうほど、植物学と園芸の研究に情熱を傾けた人物として知られています。ニトはジョゼフィーヌの感性に導かれ、宝飾デザインのインスピレーションを動植物などの自然に求めるように…。いつしか自らを「自然主義のジュエラー」と称するようになりました。
新作ハイジュエリーコレクション「ジュエルズ バイ ネイチャー」は、そんな創業者の精神を継承し、「永遠」「儚さ」「再生」という3つの視点から、自然の多様な表情を描き出しています。「永遠」を主題にした第1章では、野生の植物のたくましさや命の連なりをテーマに、自然のもつ普遍性としなやかな力強さを表現。第2章は、華麗な花や蝶をモチーフに、第1章とは対照的に、自然の一瞬の輝きを描写。華やかなデザインが、むしろ命あるものの「儚さ」を際立たせます。そして「再生」をテーマにした第3章は、春の光のもとで咲く花や飛び交うトンボ、小鳥がモチーフ。再び巡る命の芽吹きが描かれ、希望の物語が静かに語りかけます。
写実を超えて詩情を纏い、自然の真理へと迫る今回のコレクション。「ショーメ」のクリエイションは今、自然主義の新たな表現を完成させ、未来へ歩みを進めようとしています。
メゾンの伝統でもある動植物の出会いを奇跡の職人技で描いて…
〝野原の星〟とオーツ麦の自然に倣った、美しい共存


メゾンが探求してきた自然の写実的な表現。そのひとつの手法が、動植物のモチーフをミックスし、デザインのなかで自然の情景を再現すること。この第1章の作品では、可憐な「フィールドスター(野原の星)」と「オーツ麦」を組み合わせている。両者をともに表現することで、美しさに奥行きとストーリー性が生まれ、見る者を夏の風がそよぐ野へと誘う。また、本作は技術面でも傑出しており、金細工が施された麦の穂は驚くほどリアルな仕上がり。花々の立体的でランダムな配置にも、自然界の法則が踏襲されている。イヤリングは2通りに着用できるトランスフォーマブルな仕様。イヤーカフのパーツは取り外せ、シンメトリーのイヤリングになる。V字形のネックレスは、大ぶりでも軽やか。イヤリング[イエローダイヤモンド計3.62ct×ダイヤモンド計6.97ct×WG×YG]参考価格¥65,120,000・ネックレス[イエローダイヤモンド計9.80ct×ダイヤモンド計30.29ct×WG×YG]参考商品・参考価格¥250,800,000(ショーメ)
アーカイブが着想源の意匠に現代性をもたらす、躍動感に満ちたライン
ともに「永遠」を象徴するクローバーとシダの出会い

「永遠」をテーマにした第1章のメインピース。どちらも野生植物であるクローバーとシダの、しなやかさと力強さが表現されている。アシメトリーの構図と軽快なラインが、デザインに躍動感をもたらす。ネックレスの中央近くのクローバーにセットされた3石のエメラルドは、すべてオイル処理をしていない希少なコロンビア産。右のリングと同様、ペアシェイプにカットされていることも珍しい。ネックレス[エメラルド計13.97ct×ダイヤモンド計53.61ct×WG]参考価格¥459,800,000(ショーメ)
最高品質のエメラルドが希少なペアシェイプに!

「クローバー」モチーフのリングは、野生植物の生命力と永遠の美しさを讃えた第1章の作品。リングの中央にセットされたのは、クローバーの葉を思わせるペアシェイプのエメラルド。透明度の高いエメラルドは、コロンビア産特有の黄色みを帯びたグリーンが鮮やか。最高品質のエメラルドが、ペアシェイプにカットされていることは珍しく、それだけでも希少性が高い。両サイドには、幸運をもたらす四葉のクローバーがあしらわれている。リング[エメラルド計5.42ct(センター5.19ct)×ダイヤモンド計2.05ct×WG]参考価格¥183,700,000(ショーメ)
この職人技に注目!
職人たちの提言がデザインの可能性を広げるハイジュエリーアトリエ
名門ジュエラーが擁するハイジュエリー専門のアトリエ。そこに所属するのは、世界屈指の職人ばかり。彼らが技術的な側面から、デザインにアイディアを出しているのが、「ショーメ」のアトリエです。通常は、デザインを実現するために技術について意見が交わされますが、ここでは逆のケースも…。
新開発された技巧から伝統をアップデートした技術まで、アトリエの責任者によるデザイナーへの提言が、想像を超えたハイジュエリーを生み出すこともあるのです。

右/ネックレスのパーツの接合部を確認する職人。地味だが重要な技術で、常に改善されている。左/クローバーにエメラルドをセット。セッティングへのこだわりも、このアトリエの特徴。
伝統の超絶技巧をさらに発展させて生まれた芸術的デザイン
空を飛び交う姿を描いたトンボは「再生」のシンボル

第3章の「再生」を象徴するトンボのブローチ。繊細なオープンワークと、メゾン伝統の高度なフィルクトー(ナイフエッジ)の技、そして多彩なセッティング技術によって生まれた作品。ダイヤモンドの壮麗な輝きと、鮮明なサファイアの光彩を纏った2匹のトンボが対を成し、互いの美しさを引き立て合う。色が豊富に揃うサファイアは、カラーグラデーションを描くのに最適な宝石。オープンワークにセットされたことで、ステンドグラスを彷彿させる美しさに。ブローチ〈上〉[ダイヤモンド計7.34ct×WG]参考価格¥42,790,000・〈下〉[サファイア計18.48ct×ダイヤモンド計4.81ct×WG]参考価格・参考商品¥55,880,000(ショーメ)
琳派の意匠を想起させる、モダンに昇華された自然美

20世紀初頭に制作されたティアラにインスピレーションを得てつくられたネックレス。モダンに意匠化された花は、欧州では艶やかなイメージが強いカーネーション。その印象が華やかであればあるほど、第2章のテーマである「儚さ」を鮮明に映し出す。モダンに連なるデザインは、琳派の絵画を想起させる。先端のサファイアはその上のダイヤモンドから外すことができるトランスフォーマブルな仕様。付属のシンプルなネックレスにつけて、ペンダントとして楽しむことができる。ネックレス[サファイア計55.71ct(センター36.44ct)×ダイヤモンド計38.09ct×WG]参考価格¥558,800,000(ショーメ)
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撮影/武田正彦 コーディネート/鈴木春恵
※文中のWGはホワイトゴールド、YGはイエローゴールドを表します。
※本記事は『和樂』2025年10・11月号 付録の転載です。
※価格表記はすべて税込価格です。