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2026.06.11

私にとっての“ミランダ”たち【蘭乃はな 「花のみち」のその先で】第二回

みなさん、映画『プラダを着た悪魔2』はもうご覧になりましたか?ミランダとアンディが再会し、『RUNWAY』を守る絆に胸が熱くなりました。実は『プラダを着た悪魔』が公開された2006年は、私が宝塚歌劇団で初舞台を踏んだ年なのです。あれから20年、私にもいろいろなことがありました。今回は、私にとってのミランダたちについて書いてみたいと思います!

人生の師 私にとって最初の“ミランダ”

歌唱指導のA先生には2010年に初めてお会いして以来、声楽を教えていただいています。
声楽家としても音声学研究者としても第一人者である先生のレッスンは、発声方法・身体の使い方だけにとどまらず、先生の音楽観に触れ、私自身の音楽性を育んでくださる、という時間の積み重ねだったような気がします。

最初の5年は私も緊張していたのか、レッスン以外は「おはようございます、お願いいたします」「ありがとうございました」という会話のみでした。声帯という微細な筋肉を扱うにも関わらず、いったいなぜ5年もレッスン中に緊張していたのでしょう(笑)

そんなA先生から、2014年の宝塚を卒業する頃、忘れられない言葉をいただきました。
「あなたはね、もうできるんですよ。それを自分で思えるかどうかなんですよね」

私はその言葉の意味が飲み込めず「はい……?」と返すことが精一杯でした。

宝塚歌劇団では、入団後1年目、3年目、5年目に実技試験があり、科目別・総合の点数と順位が通知されます。歌が大の苦手だった私は、入団時には同期48人中46番という成績でした。しかし、先生のご指導のおかげで、最終学年となる5年目には8番まで順位を上げることができたのです。

その過程を間近で見守り、伴走してくださった先生は、私自身よりも先に私の力を信じてくださっていたのかもしれません。順位という結果が出てもなお自信を持てなかった私にとって、本当の課題は何なのか。先生は見抜いていたのだと思います。

自分を信じられるかどうか。

信頼し、愛情を示してくださっている先生からいただいたこの言葉は、今もなお私の人生の課題です。私にとっては最も厳しいと感じられる言葉をくださったA先生は、ミランダ第1号なのです。

弱音を受け止めてくれた人

現在、エージェントとしてお世話になっているBさんは、和製ミランダと言っても過言ではないほど仕事好き。物事の分析や見通しも鋭く、志高く厳しい人です。一方で、温かみがあり人間の弱さを知っている人でもあります。

Bさんにも、同じように印象的な言葉をいただいたことがありました。宝塚退団から10年後のある公演の初日寸前、最終稽古の終了後。

「今回の役は難しいし大変だけれど、蘭ちゃんならできる!」

しかし、舞台稽古で全然上手くいかなかった私は「“蘭ちゃんならできる”と思ってくれていても、私自身が、“私ならできる”と思えない!!」と大号泣。

子供のような発言に自分でも驚きましたが、不思議なことに、それを口に出した直後になぜだか気持ちをスッと切り替えられたのです。そして、「私ならできると思う。楽屋に戻って支度して、本番やります。ありがとうございます!」と言うことができました。

それまでずっと抱えていた弱音を吐かせてくれたこと、そしてそれを受け止めてくれたことに、心から感謝しました。本番直前に弱音を吐けたこと、この経験があるのとないのでは大きな違いがあったと今でも思っています。

稽古中に大号泣した作品『家政夫のミタゾノ THE STAGE レ・ミゼラ風呂』、ポスターの前で。

そのBさんが「退団後10年の節目に、セルフプロデュースで“蘭乃はなダンスコンサート”をやったらどうか」と提案してくださいました。Bさんと一緒ならできる気がして、今までの自分の想いや考えを、自分の大好きなダンスで……よし作ろう!と決め、1年かけて一から準備をしていきました。

初めて書く企画書や、キャスティング。音楽や振付など関わってくださるスタッフの方々との打ち合わせ……。これまで色々な作品に出演をさせていただきましたが、私の元にオファーが届くまでに準備することがこんなにも沢山あったのかと驚きました。きっとBさんは私がこれを学ぶことも計算していたのでしょう。

前田清実先生と目指した“その先”

生まれて初めて「踊りながら、感情が腹の底から込み上げてきて涙が溢れる」という体験をしました。2009年、ジャズダンス・ミュージカル振付の巨匠・前田清実先生の振付を初めて受けた時のことです。その時以来、清実先生は私にとって特別な存在となりました。

そんな先生から、宝塚歌劇団を卒業する際にかけていただいた言葉があります。
「蘭ちゃん!とっても良くなってるよ!ここからがスタートだからね!!頑張るんだよ!!!」
当時の私は、「スタート???私、もうこの公演で卒業なんだけどな……。やっぱり清実先生はストイックで厳しいのだな」くらいにしか受け止められていませんでした。けれど、先生の言葉は本当だったのです。

卒業後「タカラジェンヌ」というアイデンティティを失った私は、人としての存在価値が全くないように思え、自身と向き合う葛藤の日々が始まりました。「私は一生分頑張った。もう頑張れない……」そう思う一方で、そんな無気力な自分を激しく責める自分も同時に存在し、当時の感情はぐちゃぐちゃでした。

そんな時、何度も頭に浮かんだのが、清実先生の「ここからがスタートだからね」という言葉でした。「ここからは、今の自分を受け入れて、少しずつでも挑戦していくしかないのだ」そう思わせてくださったのです。

それから10年後。セルフプロデュースのダンスコンサート『Precious』で、再び清実先生に振付をお願いしました。先生はふたつ返事で引き受けてくださり、本当に嬉しく思いました。

『Precious』稽古中のひとコマ。後列右が、前田清実先生。
前列左から/木野村温子さん、蘭乃はな、ブラウリオ・アルバレスさん
後列左から/振付助手 米島史子さん、振付 前田清実先生

ですが、リハーサルでは“清実節”が炸裂(笑)。
初めてソロシーンを踊った時には、「はい、全然ダメです!今日からスタート!頑張って!!」と厳しい言葉が。

その瞬間、私の心に火がつきました。

なぜなら、その言葉の奥にある先生の思いが伝わってきたからです。
先生には、「蘭乃がこの振付を踊る完成形」が見えている。でも、今の私はまだそこには遠く及ばない。そして、その場所にたどり着くために必要なのは、先生から与えられるアドバイスではなく、自分自身の努力なのだ、と。
同時に、「あなたならそこまで行ける」と信じてくださっていることも感じました。

振り返れば、これまで登場したふたりのミランダと同じです。形は違っても、その根底には「あなたならできる」というメッセージがありました。その言葉が、再び私の心を燃やしたのです。

本当にミランダみたいでしょう?でも、私はそれが嬉しかったのです。「あぁ、あんなにも頑張る気力がなかったのに、今また私はこうして心を燃やしている。再び清実先生と一緒に高みを目指せるんだ」。そう感じました。

そして最後に、先生はこう仰いました。「『Precious』をやりきったら、蘭ちゃんひと皮剥けるよ!」

“ミランダたち”の愛情と言葉に導かれ、10年以上の年月をかけ、応援してくださる方々の想いと共に、果たして蘭乃はなは「脱皮」することができたでしょうか。私はこれからも、私にとっての“ミランダたち”から大いに感銘を受け、影響され、存在に感謝しながら、自分の脚でマイペースに歩んでいくのだと思います。「花のみち」のその先で……。

出演情報

『呪怨 THE LIVE -再念-』

公演日程:2026/9/4(金)~9/13(日)
会場:こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ
〒151-0053 東京都渋谷区代々木2-12-10 こくみん共済 coop 会館1F

チケット料金(全席指定)
最凶シート:¥15,000(税込)
一般席(呪エリア・怨エリア):¥8,500(税込)

チケット発売:6月下旬より先行発売開始、7月下旬より一般発売開始
公式ウェブサイト: https://juonthelive.com
公式X: @juonthelive
主催:『呪怨 THE LIVE』製作委員会(Asagiri Entertainment、ぴあ、アール・ファクトリー)
お問い合わせ: juonthelive.info@rc-ponsam.com
(C)清水崇・東映ビデオ/『呪怨 THE LIVE』製作委員会

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蘭乃はな

俳優、元宝塚歌劇団花組トップ娘役。宝塚時代から数々のヒロインを演じ、退団後はミュージカル「エリザベート」に主演、芸能活動を開始する。2019年には日本舞踊花柳流の普通部(名取)試験に合格し、国立劇場の名披露目にて長唄「鷺娘」を披露。近年では映像作品や広告にも出演し、活動の場は多岐にわたる。
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