Craftsmanship

2026.07.03

【101年目の民藝】「人と道具が共に働くなかに宿る美しさ」工藝風向店主・髙木さんに伺う民藝の悦びとは

「民藝」という言葉が生まれて100年の節目として、展覧会やイベントで盛り上がった2025年。101年目となる今、民藝はどこへ向かっているのでしょうか。新しい“何か”を探しに、民藝の現場を訪ねてきました。まずは、福岡の工芸店「工藝風向(こうげいふうこう)」の店主、髙木崇雄さんのお話から。

「101年目の民藝は“みんなのもの”。そして、“土地ごとに染み込んだリズム”から生まれるもの」(髙木崇雄さん)

2025年は「民藝」という言葉が生まれて100年として盛り上がりましたが、実は、民藝というムーブメントのマニフェスト「日本民藝美術館設立趣意書」が配布されたのは1926年4月1日付。今年で100年です。
さらに、日本民藝館設立90年、河井寛次郎(かわいかんじろう)没後60年など、今年も民藝の節目の年と言えます。
そんな中“101年目の民藝だと思うもの”とのお題に、3組の方を取り上げました。

まずは、沖縄の「木漆工(もくしっこう)とけし」の渡慶次愛(とけしあい)さん・弘幸(ひろゆき)さん。
それぞれ、輪島で漆と木地を学んだ彼らは、単に「琉球漆器」という言葉に寄りかからず、本来は沖縄で育たない「漆」という植物の樹液を用いることの意義を問い直しています。
沖縄で育ったクスやセンダン、デイゴ、ガジュマルといった木と向き合い、漆によって木が活きるものには漆を、木だけで働けるものはそのまま使い、使い込むほどに新鮮さを感じさせる器を手がけています。
風土に無理なく根ざした彼らの仕事ぶりこそ、民藝が含む「土着のモダニズム」を体現していると感じます。

「木漆工とけし」の、お月様のような丸葉皿は、漆に金箔を施したもの。「丸葉皿 金9寸」62,700円。上に置いた虎の箔絵が愛らしい漆の豆皿は、木漆工とけし+豊永盛人による「箔絵豆皿」 参考品。

それから、ユニークな琉球張り子(りゅうきゅうはりこ)を手がける沖縄の豊永盛人(とよながもりと)さん。
古典を拝んでいるばかりでは「未来の古典」はつくれない、今の時代の力も弱さも素直に受け止めながら、新しい悦びをみんなでつくりたいと、古典も新作も制作。
歴史に学びつつ歴史に依存しない態度はこれからの民藝にも必要です。

思わずクスッ。沖縄に古くから伝わる琉球玩具「琉球張り子」。車輪付きで、ヒレも動きます。愛嬌たっぷり、ユーモラスなこちらは玩具ロードワークス・豊永盛人作。「琉球張り子 鯉乗り童子(大)」11,000円。

そして、僕の食卓に欠かすことのできない岡山・石川昌浩(いしかわまさひろ)さんの硝子(がらす)。
彼は「ふつうであること」、「ひとりで生み出す仕事ではないこと」を大切にしています。
仕事場の住所は非公開、信頼する数軒の店にしか卸さず、自分だけが評価されても意味がないと、周囲のみんなを巻き込んだ企画展を試みています。
だれでもできるはずの仕事をやりながら、みんなでだれにもできない仕事をつくっているんです。

左/吸い込まれそうな美しいブルーの猪口は、岡山在住の吹き硝子工・石川昌浩さん作。石川硝子工藝舎「猪口(青)」2,750円。
右/おなじく石川硝子工藝舎 石川昌浩の「網目コップ(小)」2,970円。

民藝は、日々暮らす人々が長い時間をかけて育んだ、土地ごとに染み込んだリズムから生まれるもの。
だからこそ“みんな”が共有できる美しさを湛えているのです。

101年目の民藝とはきっと、人と道具が共に働くなかに宿る美しさや、あたりまえだと思っている暮らしをしっかりと見つめ直すことで発見できる、日々に潜む「悦び」そのものではないでしょうか。(髙木さん談)

「人と道具が共に働くなかに宿る美しさ。それが民藝かな」(髙木)

左/豊永盛人作、新約聖書に登場する3人「琉球張り子 東方の三賢者」8,800円。
右/同じく、メキシコでは台所の守護聖人とされる「琉球張り子 聖パスカリート」2,970円。

左/木漆工とけし+豊永盛人「腎臓に鹿紋様漆絵椀」参考品。
右/木漆工とけし「塗込拭漆4.2寸椀」16,500円。

山形・一景舎(いっけいしゃ)の「胡桃(くるみ) 掛け花入れ(細編・表)」17,050円。

髙木崇雄さんprofile

たかき・たかお 1974年生まれ。2004年福岡に工芸店「工藝風向」を開店。日本民藝協会常任理事。『民藝』編集長。一般社団法人工藝文化振興会代表理事。著書に『わかりやすい民藝』。

●工藝風向 DATA

住所:福岡県福岡市中央区赤坂2-6-27
営業時間:11時〜18時30分
休み:木曜
公式サイト:https://foucault.tumblr.com/

※本記事は雑誌『和樂(2026年6・7月号)』の転載です。
※掲載している価格は、すべて税込価格です。
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和樂web編集部


撮影/鈴木静華 構成/田中美保、鈴木智恵(和樂)
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