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Craftsmanship

2026.10.28

息を呑む小ささと精巧な技。たばこと塩の博物館「新収蔵ミニチュア展 名人小林礫斎を支えた二人の中田」

ちょっと手元に定規を用意してみてほしい。あるいは、1円玉を思い浮かべてほしい。
1円玉の直径、つまり2cmのサイズに、何が収まるだろう。まさか、ここに楽々と載る小ささの極めて精巧な工芸作品が存在するなど、信じられるだろうか。

稀代のミニチュア名人・小林礫斎

「吹けば飛ぶような」という表現があるが、少し強い風でも吹こうものなら、本当にたちまち目の前から消えてしまいそうだ。

竹台子茶具揃 茶筅:0.87×2.68cm 茶筅、茶杓など小林礫斎作

どうやって扱ったらよいのか不安になるほどの小ささと繊細さ。茶筅は0.87×2.68cmと、横の長さは1センチにも満たないが、普通サイズですらうっかりするとすぐに折ってしまう「あの先端」が見事に再現されている。

上の画像のうち、茶筅や茶杓などを手掛けたのが、稀代のミニチュア名人と称された小林礫斎(こばやし れきさい)である。

礫斎(1884-1959)は牙彫(げぼり/げちょう。象牙など動物の牙を材料とした彫刻)を得意とする家に生まれた。元々はたばこ盆などの指物(さしもの)や、和装の装身具であった袋物の部材作りを生業としていたが、大正の終わり頃から日本人の生活様式が急速に西洋化し、和装から洋装へと移行するにつれて本来の仕事が減少、その高度な技術をミニチュア制作に転用して極めて高い評価と多くの顧客を得た。
その中に「二人の中田」、古美術商の中田藤之助(なかだ とうのすけ)と、茶人の家に生まれ切手収集でも名を馳せた中田實(なかだ みのる)がいたのだった。

「二人の中田」中田藤之助と中田實

現在「たばこと塩の博物館」で開催中の「新収蔵ミニチュア展 名人小林礫斎を支えた二人の中田」は、この中田藤之助と中田實のミニチュアコレクションがメインとなっている。
「二人の中田」とは、それぞれどんな人物だったのだろう?

中田藤之助

中田藤之助は明治半ば~昭和の初め頃まで箱根で古美術商を営んでいた人物だ。兄の松五郎とともに陶磁器や仏像、甲冑、調度品、印籠など多様な美術品を扱った「中田兄弟商会」は箱根の富士屋ホテル前という好立地に店を構え、古美術と陶磁器の名店として知られた。

昭和3(1928)年に店を畳んだ後、藤之助はミニチュア収集に夢中になる。小さな人形や陶磁器などの骨董品を収集し、それに合わせた箱をあつらえ、小林礫斎など当時一流の職人に茶道具や印籠・硯箱などを作らせた。現代の日本では極めて稀少な存在となってしまった、職人と文化を強力に支えるパトロン的存在である。

唐木提簞笥 1.37×1.5×1.27cm 作:矩曲 金具:村上定吉

「たばこと塩の博物館」新収蔵のコレクションはこの中田藤之助によるもので、素材も技術も逸品のコレクションは見どころ満載だ。

中田實

「もう一人の中田」中田實は、茶人の家に生まれ、切手収集でも名を馳せた文化人である。名人・礫斎の良き理解者であり、様々なミニチュア制作を依頼して「中田實コレクション」を築いた、こちらも貴重な文化の守護者だ。
象牙を用いた礫斎渾身の箪笥や人形・独楽・瓢箪など、中田實のコレクションは息を呑むように小さく精巧なものばかりである。

集第三号 箱:2.57×3.37cm 象牙三折人形、三味線駒、印籠、独楽 作:小林礫斎 巾着は實作

1990年に「たばこと塩の博物館」で初のミニチュア展が開催された後、同館に中田實コレクションが寄贈され、以降このコレクションの展覧会が重ねられてきた。

藤之助と實、それぞれのミニチュア愛好

藤之助と實は、それぞれの家系で養子縁組が繰り返されていたため血縁はないものの、従兄弟という関係性だった。ただ、二人の間に直接の交流があったかどうかは不明だという。
また、昭和の初め頃に礫斎のミニチュアに熱中したことと、ミニチュアに情熱を注いだことは共通しているが、収集方針は異なっていた。藤之助は「工芸」に、實は「最小」に重きを置いたようだ。

芥子人形 台座:12.03×32.5cm 紀州徳川家伝来

無論、どちらがより素晴らしい、というような話ではなく、それぞれがそれぞれの楽しみ方をした、ということだ。
きっと、ミニチュアにはその他の楽しみ方もあるのだろう。現在開催中のたばこと塩の博物館「新収蔵ミニチュア展」では、ぜひ思い思いにミニチュア展示を楽しんでいただきたい。

「たばこと塩の博物館」が約300点のミニチュアコレクションを新収蔵!

本は寂しがり屋だから仲間を呼ぶ、とか、ひとつの作品を手元に迎えたら同じジャンルのものが後から数十は来ると思え、とか冗談のように言われるが、どうもこれはある種の真実であるらしい。

「たばこと塩の博物館」では過去に5回、ミニチュア展を開催して好評を得てきた。その開催の度に、新たな関連情報が寄せられ、今回また約300点の「中田藤之助コレクション」が加わった。

現在開催中の展覧会では、新収蔵の中田藤之助コレクションを一堂にお披露目展示するとともに、以前からの収蔵品である實のコレクションの一部も紹介し、それぞれの魅力を伝えている。

藤之助と實の関係性とは、ミニチュアに向けるまなざしの共通点と違いとは、また、まさに「繊巧(せんこう)美術」と言うべきミニチュアの姿とは?ぜひそれらを実際に目の当たりにして楽しんでいただきたい。


展示室風景

展覧会 開催概要

名称:新収蔵ミニチュア展 名人小林礫斎を支えた二人の中田
会期:2026年9月26日(土)~12月20日(日)
主催:たばこと塩の博物館
会場:たばこと塩の博物館 2階特別展示室
所在地:東京都墨田区横川 1-16-3(とうきょうスカイツリー駅から徒歩10分)
入館料:大人・大学生:300円 / 小・中・高校生、満65歳以上の方:100円
開館時間:午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日:月曜日(ただし、11月23日は開館)、11月24日(火)
※やむをえず開館時間や休館日を変更する場合があります。最新の開館情報は、公式X(@tabashio_museum)や公式サイトでご確認ください。

お問い合わせ先:たばこと塩の博物館 03-3622-8801(代表)

記事内画像はすべて「たばこと塩の博物館」提供。禁転載
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和樂web編集部


文・構成/あきみず
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