Gourmet
2019.10.09

熊本のソウルフード・太平燕(タイピーエン)とは?ヘルシー中華の魅力と歴史、おすすめ店を紹介

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太平燕。太平燕。太平燕。太平燕。太平燕…。読めない漢字の羅列って、睡魔を誘う魔法の呪文みたいですね。この言葉の正体は、私が熊本に行ったら真っ先に食べたいもの、タイピーエン!今回熊本で太平燕デビューしてきました。そもそも太平燕って何?という方のために、太平燕のおいしさや魅力、さらにおすすめのお店もたっぷり紹介します!

え゛! タイピーエン? 太平燕との出会い


太平燕(タイピーエン)? 何それ?と思われた方も少なくないことでしょう。私もそうでした。熊本で太平燕を初めて知り、人生初の太平燕を味わった私。それも、私の相棒のうちゅうねこも連れた長距離車旅の道中で、立ち寄る目的地が見えても入り口が分からず、迷子状態で猫テレパシーに頼って着いた先で。

「え!ここ、目的地じゃないんじゃない? 再建中の熊本城は、すぐ目の前に見えるけど、ここに車停めても、何気に歩くと遠すぎじゃない?」と私。
しかし、すぐ近くには、お食事処があり、目に飛び込んできたのは、麺類っぽい写真と一緒にあった「熊本のソウルフード 太平燕」の文字。サクッと短時間で食べれそうだったこともあり、ちょっと立ち寄ってみたわけです。

入って間もなく「ご注文は?」と聞かれて、ハッ!と我に返る。
「太平燕」をいただく気満々で入店したものの、あれは、「おおひらつばめ」? なのだろうか…。読み仮名が付いていないってことは、誰もが読める読み方に違いない!
早口で「おおひらつばめ」と言ってみた私。「はい?」と聞き返された。
チーン!頭で鳴り響く仏具の輪の音。どうやら、「おおひらつばめ」ではなかったらしい。仕方なく、困った時の最後の手段で、「あれください」と窓側に貼られていたポスターの「太平燕」を指さす。
「タイピーエンですね。少々お待ちください。」
「え゛! タイピーエン? 」と私の心の叫び。
「太平燕」も体験学習型で身をもって学んだ忘れない漢字の1つとして、私の脳裏に深く刻まれた瞬間でした。

太平燕って、そもそも、何?


熊本では知らない人がいないほど有名な太平燕。地元の給食にもよく登場する地域に根差したソウルフードです。

太平燕は、熊本発祥の麺類系の中華料理。麺類と言っても、中華麺ではなく春雨が使用されており、野菜がたくさん入っているのも大きな特徴の1つ。白湯(ぱいたん)スープとなっているのが一般的で、具材は、エビやイカなどの海鮮素材、揚げゆで卵(もしくは、ゆで卵)、豚肉、きくらげ、竹の子などがたっぷり入っています。

中華風春雨スープと表現されることもある太平燕ですが、麺が春雨になった長崎ちゃんぽんの様なメニューと言えば、さらにイメージが湧きやすいでしょうか。

熊本にあるほとんどの中華料理店では、太平燕はレギュラーメニューとして扱われています。お店によって色々な特徴がある太平燕を味わえるので、熊本を訪れたら味比べをしながら食べ歩きをするのも楽しいかもしれませんね。

麺が春雨でヘルシー! 太平燕は女性にも春雨好きにもおすすめ


「おまたせしました! タイピーエンです!」苦心して注文したメニューが登場。
すごーい!春雨天国!
上の写真にあるように、美味しいスープをたっぷり含んだ春雨もたっぷり入っているので、春雨好きにもおすすめですよ。
私の人生で初めての太平燕は、目が覚める様な衝撃の美味しさ!
普段、中華料理などのオイリーな食事をあまり食べない私でも、あっという間に完食してしまいました。
こんなステキな体験をさせてくれた私の相棒のうちゅうねこに感謝!です。

麺よりもカロリーが低い春雨、たっぷりの野菜、さっぱりとした白湯スープの優しい味も嬉しいポイント。以外にもヘルシーな太平燕は、女性にもおすすめの熊本で外せないグルメです。

最近は、ヘルシーな中華料理として世間でもじわじわと注目を集めており、太平燕のレトルト商品も登場しているようです。

太平燕の歴史


熊本発祥の中華料理の太平燕の歴史をさかのぼっていくと、もともとは中国福建省にある福州の郷土料理であったとされています。福州の太平燕は、ワンタンスープの様なスープメニューの一種で、アヒルのゆで卵に加えて、扁肉燕(ビェンニュッイェン) と福州語で呼ばれているひき肉のような豚肉とサツマイモのデンプンを練り込んだ独自食感のワンタンの様なものが入っています。結婚式や旅立ちなどのおめでたい席で出される料理です。

熊本での太平燕の歴史は100年近くあり、その始まりは熊本に渡ってきた中国福建省からの華僑たちが作った福州の太平燕がベースとなっています。
当時、福州の太平燕を熊本で再現して作るには、アヒルの卵や扁肉燕が入手困難でした。これらの素材の代わりに鶏の卵や春雨を使用して作られていった歴史が、現在の熊本発祥の太平燕のルーツになっています。

その後、熊本で華僑によって開店された中華料理店で、熊本版にアレンジされた太平燕が出されると、その美味しさから人気に火が付き、熊本中にその名が広まりました。すると、日本人が経営する中華料理店でも次々と扱われるようになり、熊本の中華料理店ではレギュラーメニューとして定番化するまでに!
今では、地域に根差したソウルフードの確固たる地位を獲得しています。

太平燕デビューの方にもおすすめ!熊本の太平燕の発祥のお店

熊本版の太平燕の発祥となっているお店は、熊本市桜町の「中華園」という説が有力となっているようですが、このお店は、残念なことに2015年に閉店。
しかし、この他にも、移転して現在は熊本市上通町にある「紅蘭亭」や、熊本市新町にある「会楽園」が熊本版の太平燕の発祥のお店だとする説もあります。そこで、老舗として有名な絶品の太平燕を味わえるこの2店つの名店をご紹介します。

紅蘭亭


創業が1934年と長い歴史がある老舗の中華料理店「紅蘭亭」。中国から熊本に渡ってきた華僑によって開店されたお店です。

紅蘭亭の太平燕は、創業当時から守り抜かれている他店では味わえない老舗ならではの味。福建天然塩等のこだわりの厳選素材を使用している点も自慢の1つです。
また、太平燕に入れられるメイン野菜として、一般的な具材の白菜ではなく、たくさんのキャベツが使用されているのもポイント。キャベツの甘みも美味しさを加速させます。

具材には、エビやイカなどの魚介類に加え、素揚げしたゆで卵、きくらげ、豚肉。そして、金針菜(キンシンサイ)という、薬効成分もあり体に良いとされるユリ科ワスレグサ属の本萱草(ホンカンゾウ)の花のつぼみなども入っています。
鶏ガラがベースとなる白湯スープは、さっぱりとしながらも具材の旨味やコクがたっぷりつまった奥深い味わい。のどごしの良い春雨との相性も最高で、絶品の太平燕を満喫できます。

◆紅蘭亭 上通パビリオン店
住所:熊本県熊本市中央区上通町1-15
TEL:096-352-3812
営業時間:11:00〜21:30
定休日:年末年始を除き、年中無休
公式サイト:紅蘭亭

会楽園


1933年創業の「会楽園」。前述の紅蘭亭と並び、熊本でも有名な老舗の中華料理の名店で、こちらも華僑によって創業されたお店です。
現在は、3代目が創業当時からの太平燕の味を守り続けています。

会楽園の太平燕は、野菜でメインに使われている具材が細目にカットされた白菜となっています。この白菜の甘みが白湯スープによくなじみ、優しい味わいの中にも、様々な具材の旨味が凝縮されている美味しさを堪能できます。具材には、エビやイカなどの魚介類、揚げゆで卵、きくらげ、タケノコ等が入っています。

そして、このお店の太平燕で最も注目したいのが春雨。サツマイモやジャガイモのでんぷんから作ったこのお店特製のものとなっています。一般的な太平燕の春雨よりも太いので、絶品スープの味がよくしみ込んだモチモチでプルンとした食感も楽しめます。

あっという間に完食してしまうほど美味しい、この名店の味を再現したレトルト品も販売されており、通販でも購入できます。

◆会楽園
住所:熊本県熊本市中央区新町2-7-11 プレシール新町 1F
TEL:096-352-2844
営業時間:11:30〜14:30、17:30〜20:30
定休日:月曜日、第2 ・第4火曜日

東京で太平燕を味わうならココ!

数は少ないですが、東京にも美味しい太平燕を味わえるお店があります。熊本までなかなか行けない…という方は、これからご紹介する2つのお店でも味わえます。

中国酒家 獏


「中国酒家 獏」は、都内で美味しい太平燕を味わえるお店として、TVなどのメディアでも紹介されたことがあるほどの有名店。シェフが熊本出身なので、本場熊本の味を堪能できます。中国酒家 獏では、元祖の太平燕を忠実に再現しているので、まだ、太平燕を味わったことがない方にもおすすめ。

こちらの太平燕のスープは、鶏ガラだけではなく豚骨のスープを少々加えた白湯スープとなっており、たくさんの野菜に加えて、具材には、定番の揚げゆで卵、魚介類、豚肉、かもぼこなどが入っています。モチモチ食感の太めの春雨も好評です。

◆中国酒家 獏
住所:東京都港区芝公園1-7-7
TEL:03-3431-8988
営業時間:11:30〜14:00、17:00〜24:00
定休日: 日曜日

熊本バル うせがたん


熊本の郷土料理をベースとし、洋風のおしゃれな要素をふんだんに詰め込んだ創作料理を自慢の地酒などと一緒におしゃれに楽しめる「熊本バル うせがたん」。

このお店で味わえる太平燕は、元祖の太平燕の白湯スープとは異なり、茶色系のスープの個性派。鶏ガラではなく、なんと、馬刺しの名産地でも有名な熊本らしく、馬骨でとった出汁がベースとなっています。
さらに、たっぷり野菜に加えて、定番海鮮素材のエビやイカの他にも貝類もふんだんに使用されており、魚介類から出る濃厚な出汁の美味しさもしっかり堪能できます。また、春雨が太いのでクセになりそうなモチモチ食感もこのお店の太平燕の自慢のひとつです。

熊本バル うせがたんは、熊本直送の馬刺し関連のメニューも美味しいと好評なので、太平燕と一緒に味わうのもおすすめ。

◆熊本バル うせがたん
住所:東京都渋谷区神泉町10-17 コルベール 神泉 2F
TEL:03-6416-3825
営業時間:17:30〜25:00(ただし、土曜日は17:00から、日曜日は23:30まで)
定休日: 年末年始を除き年中無休

書いた人

猫と旅が大好きな、音楽家、創作家、渡り鳥、遊牧民。7年前、ノラの子猫に出会い、人生初、猫のいる生活がスタート。以来、自分の人生価値観が大きく変わる。愛猫を連れ、車旅を楽しむも、天才的な方向音痴っぷりを毎度発揮。愛猫のテレパシーと自分の直感だけを頼りに今日も前へ進む。