Gourmet
2019.11.06

うどん生産量全国2位は埼玉!ときがわの古民家で手打ちうどん体験レポート

この記事を書いた人

「鶴は千年、亀は万年。鶴さんや亀さんのように長生きがしたければ、つるつる飲まずによーくかめかめ」
いただきますの前にこんなおまじないを唱えたことがある人、手をあげて~。もしかして、埼玉の方ですか?

埼玉は全国2位のうどん県

その昔、江戸の台所と呼ばれた武州・埼玉県。県の西側には秩父連山がそびえ、東側には利根川からの農業用水に恵まれた広い穀倉地帯が広がっていました。
埼玉では古くから麦の栽培が盛んで、実はうどんの生産量が香川についで全国2位。うどん県の首位獲得を狙っていると近頃ちょっとした話題にもなりました。

ハレの日は朝まんじゅうに昼うどん

実際、埼玉では「朝まんじゅうに昼うどん」という言葉があるほどうどんがよく食べられていたそうです。といっても、これは夏祭りやお盆のごちそうメニュー。ふだんは農家では朝しかごはんを炊かず、昼はその残りを食べ、農作業のあとの夕食は自家製の小麦粉でパパッとうどんをこねて食べるのが定番だったといいます。

手打ちうどんは嫁入りの必須スキルだった

そのためかつては「手打ちうどんができなくては嫁の貰い手がない」といわれたそう。今でもご年配の奥様からは「嫁入道具としてうどんを打つ台やこね鉢を持たされたのよ」という声が聞かれます。つまり埼玉ではお家で小麦粉から作った手打ちうどんこそがソウルフード。

いただきますの前の「つるつる飲まずによーくかめかめ」は、埼玉だけに伝わる言葉というわけではありませんが、うどんを食べる前にはなんともぴったり。子どもの食事を見守る大人の愛情まで感じられそうな教訓ですよね。

さて、前置きが長くなってしまいましたが、今回はそんな埼玉のソウルたっぷりの「手打ちうどん」体験ができるスポットをご紹介。場所は東京から1時間ちょっとで到着、埼玉県の真ん中あたりに位置する「ときがわ町」です。

「ときがわ」ってどんなところ?

埼玉県中部にあるときがわ町は約70%を山林が占め、自然ゆたかな里山文化を体験できる町。町の名前でもある都幾川では、初夏には蛍が舞い、夏は渓流での水遊びが人気。冬には天然のスケートリンクが登場します。
樹齢何百年もの巨木めぐりができたり、紫陽花、菖蒲、ツツジなど四季折々の花々が楽しめたり。

蛍を眺めながらコーヒーが飲めるお店や、天然氷に自家製シロップがおいしいかき氷屋さん、手作りウィンナーのホットドッグが人気のパン屋さんなどもあり、見どころをあげたらきりがないほど。
訪れてみると秩父よりも都心に近く、川越ほど混雑していないのも魅力です。「東京の近くで本格的な田舎暮らしができる」と移住してくる人がいるのも納得! なんだかほっとくつろげる町なのです。

埼玉ときがわでいざ!手打ちうどん体験

ときがわ町には、地元の方々が作るおいしいうどんが食べられて、手打ちうどん体験もできる施設が3ヶ所あります。食事のみでもOKですが、時間がとれるならぜひうどん打ちにもトライしてみて。
地元の方が手取り足取り教えてくれるので、はじめてでもかなりおいしいうどんが打てます。大人はもちろん、幼稚園くらいのお子さんから楽しめますよ。

子どもといっしょに、ときがわ町の「いこいの里大附」でうどん打ちを体験しました。

つるっとコシのあるうどんが完成!

古民家でいただく手打ちうどん【やすらぎの家】

やすらぎの家 写真:ときがわ町観光ガイドブック「ぶらっと、ときがわ」

「やすらぎの家」は100年以上前に建てられた古民家で、地元の方の手打ちうどんが食べられる農山村体験交流施設。2階はギャラリーになっています。
ここでは具材たっぷりの肉汁うどんやカレーうどんも食べられます。夏は冷や汁うどんが人気。

こちらは天ぷらつけうどん 写真:ときがわ町観光ガイドブック「ぶらっと、ときがわ」

やすらぎの家
住所:ときがわ町西平720‐1
営業時間:10:00-16:00(食事は11:00-14:00)
定休日:火曜
うどん打ち体験 1組2,000円(4・5人前 要予約)
*うどんのつゆは別料金です

郷土料理「ひもかわ」も食べてみて【くぬぎむら体験交流館】

くぬぎむら体験交流館 写真:ときがわ町観光ガイドブック「ぶらっと、ときがわ」

標高400mにある小学校の跡地を利用した山村体験施設「くぬぎむら体験交流館」。卒業生にとって、こうして学校が残るのはうれしいことですよね。
ここでは幅広の「ひもかわ」とよばれるうどん作りを体験できます。また、町の産業でもある木を使った椅子や竹とんぼ作りなどの工芸体験も行っています。

郷土料理ひもかわうどん 写真:ときがわ町観光ガイドブック「ぶらっと、ときがわ」

くぬぎむら体験交流館
住所:ときがわ町椚平179‐2
営業時間:10:00-15:00(食事は11:00-14:00)
定休日:水曜日
ひもかわ作り体験 1人1,800円(5人前より受付 3日前まで要予約)

うどんよりそば派の方もご安心【いこいの里大附】

いこいの里大附(そば道場) 写真:ときがわ町観光ガイドブック「ぶらっと、ときがわ」

「いこいの里大附」は、ときがわ産の木材で内装された広々としたフロアで、山里のそば粉を使ったそば打ち&うどん打ちが体験できる施設です。野菜や果物などの農産物売り場も充実しているので、食事をせずとも立ち寄ってみて。
そば打ち&うどん打ちのセットは天ぷら付きがおすすめ。揚げたてでさくっとおいしい農家のごちそうをいただくことができます。

こちらはそば打ちのようす 写真:ときがわ町観光ガイドブック「ぶらっと、ときがわ」

天ぷら付きそば 写真:ときがわ町観光ガイドブック「ぶらっと、ときがわ」

いこいの里大附(そば道場)
住所:ときがわ町大附425
営業時間:10:00‐14:00
定休日:木曜日
そば打ち体験 5,750円(1セット5人前・天ぷら付き)
うどん打ち体験 5,250円(1セット5人前・天ぷら付き)
*団体は要予約

バリエーション豊かなうどん文化は宝

ひもかわうどん、天ぷら付きのざるうどん、冷汁うどん…並べてみるとうどんにもいろいろな食べ方があることが分かります。実際こんな風に、埼玉では小麦粉を練ったうどん粉を地域によってもいろいろな形で食べていたのだそう。
忙しい農作業の合間にはゆるく練って汁に落とした「すいとん」や幅広の「お切りこみ」を、寒い夜には熱々の「にぼうと」を。夏の暑い日には水でしめたざるうどんを。夏祭りの日には天ぷらと一緒にごちそうとして…。
食べ方の豊かさこそが、うどんが武州の人々の生活に深く根付いていたことを雄弁に語ってくれます。

東京から1時間で行けるときがわで、「つるつる飲まずによーくかめかめ」そんなおばあちゃんの声が聞こえてきそうな手打ちうどんを体験してみませんか。

参考書籍:日本の食生活全集11 聞き書 埼玉の食事(社団法人 農山漁村文化協会)

書いた人

岩手生まれ、埼玉在住。書店アルバイト、足袋靴下メーカー営業事務、小学校の通知表ソフトのユーザー対応などを経て、Web編集&ライター業へ。趣味は茶の湯と少女マンガ、好きな言葉は「くう ねる あそぶ」。30代は子育てに身も心も捧げたが、40代はもう捧げきれないと自分自身へIターンを計画中。