近年、日本のどこかで地震や豪雨災害が起きています。
いざというときの防災グッズはもはや必需品ですが、中でも進化し続ける非常食が改めて注目を浴びています。
ライフラインが断たれ、水やお湯がない場合でも菓子感覚でそのままポリポリ食べられる永谷園の「フリーズドライご飯」をご紹介します。
フリーズドライ技術の結晶「さけ茶づけ」
永谷園は1960年代からさまざまな食材のフリーズドライ化に取り組んでいる企業です。1970年には皆さんよくご存知の「さけ茶づけ」を発売しました。
そもそも鮭は骨が多いため加工に手間がかかり、しかも酸化して油焼けを起こしやすいことから、フリーズドライには向かない食材と言われています。しかし骨取り用機械を開発し、脂肪分を取り除きつつ旨みを残す技術を生みだし、商品化を実現したのです。
今やベストセラーであることは言うまでもありません。
開発のきっかけは東日本大震災
「フリーズドライご飯」を開発したのは、福島県いわき市に本社のあるサンフレックス永谷園です。フリーズドライ商品の生産拠点である同社は、東日本大震災の際、自らが被災者となりました。
そのときの経験と、食事の時間が少しでも楽しみとなり、励みになればとの思いから、“簡単に、早く、楽しく、美味しく”食べられるフリーズドライご飯を生み出したのです。
水やお湯がなくてもそのまま食べられる
現在、非常食のご飯はお湯で15分、水では60分かかるものが主流です。しかし、余震や断水が続く中、お湯を沸かす余裕はとてもありません。水を使うにしても非常食の出来上がりに1時間待つことは、精神的にも肉体的にもとても大変です。
食品メーカーだからこそ食の不便を解決すべきだと考えた同社は、フリーズドライご飯の開発に乗り出します。
同社はまず、出来上がるまでの時間にこだわりました。カップラーメンの3分に慣れていると、それ以上の待ち時間は想像以上に長く感じます。
そこで、完成時間をお湯で3分、水でも5分に設定。なおかつ、ライフラインが断たれた場合を想定し、水やお湯がなくても食べられるようにしました。あられのようにポリポリとした歯ごたえがあるため、そのままでも十分食べ応えがあります。
水の量次第で2つの食感を実現
お年寄りや子どもの体調に合うよう、お湯または水の量の加減次第で「ふつう」にも「やわらかめ」にも出来上がる工夫をしました。
もちろん、計量カップは不要です。パウチの内部にお湯または水の量を示すメモリを記載し、食感を選べるよう配慮しました。
仕方なく食べるのではなく、楽しく、満足のできる食事を
同社が何よりもこだわったのは味でした。災害時、食事は唯一の楽しみだと言います。被災した自分たちこそ、それは身を持って知っている。だからこそ、中途半端なものは世に出さない。何もなくてもご飯だけで満足できるものを作る――。
「仕方なく食べる」のではなく「普段も食べたくなる」美味しさにとことんこだわりました。
アレルゲンフリーだから、誰でも食べられる
そして、開発から4年、とうとうフリーズドライご飯が完成します。
食物アレルギー表示対象の27品目を使っていないため、誰でも食べることができます。また、スプーンもついているため、食器を準備する必要もありません。
アレルゲンフリーのフリーズドライご飯は現在5種類あります。
わかめ味
わかめが一緒に混ぜ込まれており、ほんのり塩味が効いています。幅広い世代に美味しく食べていただけます。
カレー味
カレーの味がしっかり染みているご飯です。香りで食欲もそそられ、一品で十分満足できる味わいです。
梅しそ味
さっぱりとしたしそ味なので、高齢の方にも美味しく味わっていただけます。
ピラフ味
コーンなどの野菜が入っており、彩り鮮やかです。あっさりとした味付けとなっています。
白飯
やっぱり白飯を食べたい!という方におすすめです。
定式幕は安心・安全の目印
ところで、永谷園の数ある商品で、おなじみの定式幕が使用されているのは、実は「お茶づけ」だけなんです。
しかし、災害時の不安な中で少しでも安心して食べ物を口にしていただきたいとの願いから、一目で永谷園の商品とわかるよう、フリーズドライご飯には特例で定式幕を採用しています。
フリーズドライご飯は2017年に日本食糧新聞社の「新技術・食品開発賞」を受賞しました。手間がかからず栄養価に優れ、しかも美味しい。まさに理想的な非常食となり、今や自治体の防災非常食にも選ばれています。
永谷園のフリーズドライご飯 概要
賞味期間:6年(72ヵ月)
内容量:75g~80g
1袋のカロリー:295~322kcal