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Craft
2019.11.22

「短刀」が「Tanto」に!日本の刀剣が今、ナイフの世界基準になっている?!

この記事を書いた人

ナイフ用語における「ポイント」とは、切っ先部分を指す。

クリップポイント、ドロップポイント、ケーパーポイント、スピアポイント、ニードルポイント。形状はいろいろあるが、中にはタントーポイントと呼ばれるものもある。タントーとは、あの「短刀」だ。

日本語の「短刀」はあくまでも普通名詞に過ぎないが、国際単語としての「Tanto」はひとつの形式を指している。日本の刀剣が、意外な形で海外のナイフ製造分野に影響を与えているのだ。

「アウトドアナイフの宝庫」アメリカ

アメリカは、家内制手工業レベルのナイフ製造が盛んな国である。いわゆるカスタムナイフ分野だ。

もちろん、アメリカといってもそこは恐ろしく広い国で、州によって文化も法律も違う。西部開拓時代の文化が色濃く残っている州などは、今でも蹄鉄師が職業として成立している。その蹄鉄師が何かしらのきっかけで、カスタムナイフを鍛造する職人に商売替えすることも。蹄鉄とナイフは製造工程が類似しているのだ。

さらに、アメリカは世界最大の軍事大国でもある。

世界各地に軍を派遣しているアメリカは、同時にあらゆる状況に応じたナイフを製造する宿命が課せられている。故にアメリカのアウトドアナイフの豊富さは、日本やドイツのそれを上回る。また、世界各国の伝統的ナイフの形状を取り入れることにも躊躇しない。

日本の短刀も、アメリカのアウトドアナイフの一形状として組み込まれている。

老舗銃器メーカーの「短刀」

この記事を書くにあたり、筆者が入手したのがスミス・アンド・ウェッソン(以下S&W)の折り畳みナイフ『CK405』だ。カスタムナイフについて散々と先述したあとにメーカーナイフを紹介するのは大いに矛盾した行為かもしれないが、海の向こうからカスタムナイフを個人輸入する時間と費用は筆者にはなかった。ご容赦いただきたい。

S&Wはアメリカの老舗銃器メーカーとして、国際的にもよく知られている。坂本龍馬の銃もS&Wのものだった。日本の警察も、このメーカーの銃を採用している。

S&Wは2016年に『アメリカン・アウトドア・ブランズ』と社名を変更した。S&Wはブランド名として存続しているが、要はアメリカの銃器メーカーはアウトドア用品メーカーとしての側面も有しているということだ。S&Wに並ぶ老舗、コルトとウィンチェスターもアウトドアナイフを製造している。

さて、今回購入したCK405は、短刀形状のブレードを持っている。切っ先の上下からの立体的なグラインド、そしてエッジの曲がりが緩やかなアーチではなく、明確に角ばっている点がタントーポイントの特徴だ。この形状は、刺突に向いている。それでいながら、ブレードに厚みがある。CK405には、あの肥後守に劣らないくらいの堅牢さが垣間見える。

研ぎやすいブレード形状

急に角度が変わる切っ先部分は、切り出しナイフの用途にも十分に利用できる。CK405のブレード長は6cmに満たず、実際に持ってみても相当な小振り。だが、小型のタントーポイントナイフは木工や軽作業に最適なのではと筆者は感じてしまった。

その上、タントーポイントナイフは研ぎやすい。リカーブボウイナイフやククリナイフのような、半ばで大きなアーチを描いているナイフは研ぎの角度や部分的な研ぎ頻度に気を遣わざるを得ない。が、タントーポイントなら2パターンの直線的なエッジがあるだけ。

肥後守も初心者に優しいナイフだが、CK405はそれ以上のビギナーナイフかもしれない。

日本文化の賜物

今回の記事では、アメリカのメーカーの製品を取り上げた。

和樂Webは日本文化を取り上げるメディアなのに、一体どういう了見で向こうの銃器企業の製品など取り上げるんだ、という声もあるかもしれない。しかし、日本は世界的に見ても刃物産業が発展している国であり、それが海外の同種産業にも大きな影響を与えている。

その事実が存在する限り、S&Wのタントーポイントナイフも「日本文化の賜物」と言える。

書いた人

ノンフィクションライター、グラップリング選手、刀剣評論家。各メディアでテクノロジー、ガジェット、ライフハック、ナイフ評論、スタートアップビジネス等の記事を手がける。