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2019.12.21

「伊藤園お~いお茶新俳句大賞」いつから始まったの?審査員は?人気コンテストの裏側に迫る!

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誰もが一度は目にしたことがある「伊藤園お~いお茶新俳句大賞」は、平成が幕を開けた1989年に生まれました。2019年7月に発表された第30回では応募者約52万人、応募作品は約200万句を数え、今や国民的俳句コンテストに成長しました。令和を迎え、2019年11月3日から応募が始まった第31回では、日本語俳句の最終審査員に、テレビでもおなじみの俳人、夏井いつきさんが仲間入り。新しい部門として、写真と俳句をTwitterで投稿する「新俳句フォトの部」を創設して、SNSを利用する若い世代にも気軽に参加できるようにしました。新時代に向けた「新俳句大賞」の取り組みについて、伊藤園本社を取材。舞台裏の苦労やとっておきのエピソードなどもたっぷりとお届けします。

「お~いお茶」はCMフレーズから誕生

「新俳句大賞」は、「お~いお茶」のブランド名と同時に誕生しました。「お~いお茶」という響きは、呼び掛けられている感じがして、何とも個性的でインパクトのあるネーミングだと常々思ってきました。今回、「新俳句大賞」創設の歴史をひもとくと、一発逆転をかけた物語があったのです。
実は、「お~いお茶」には前身がありました。伊藤園が1985年に発売した「缶入り煎(せん)茶」です。

世界初の緑茶飲料として発売された「缶入り煎茶」(伊藤園提供)

昭和までは急須にお茶をいれるのがごく当たり前。通常、お茶は酸素と結びつくと褐色に変色したり、風味が落ちてしまいます。いれたてのお茶のおいしさを保ったまま、容器に密封するのは非常に難しいとされてきました。そんな中、伊藤園は10年がかりの研究で技術を確立、世界で初めて緑茶の飲料化に成功しました。
お茶を飲む日本の習慣を変えるきっかけとなった画期的な商品だったのに、発売から4年間は鳴かず飛ばず。当時は飲料といえば、炭酸や甘味のタイプが一般的で、消費者の間に浸透しなかったのです。「缶入り煎茶の『煎』という文字が読みにくいのでは」との声もあり、ブランド名を変えることにしました。
親しみやすいネーミングはないかと、試行錯誤の末、たどり着いたのが「お~いお茶」でした。元々は、1970年代から放送されていた伊藤園の茶葉(リーフ)のテレビCMで、剣劇で名を馳せた新国劇の名優島田正吾さん(1905~2004)が語りかけていたフレーズが由来です。1989年2月、「お~いお茶」に名前を改めて発売されると、爆発的にヒット。「缶入り煎茶」の発売翌年度と比較して前年比6倍の売り上げを記録しました。

理念を支えた俳人金子兜太さん

伊藤園は、「お~いお茶」に親しんでもらうのと同時に、お茶と同じ日本の伝統文化である俳句の裾野を広げたいと、「新俳句大賞」を企画しました。「俳句を読みながらお茶を飲むひとときをより楽しんでほしいという思いがありました」と伊藤園広報部広報室長の古川正昭さん。
「新俳句大賞」が創設された1989年は、松尾芭蕉の『奥の細道』300周年にあたり、87年に発売された俵万智さんの歌集『サラダ記念日』がベストセラーになるなど、俳句や短歌の短詩型文学がブームになっていました。カルチャー教室や生涯学習センターでも俳句講座が人気を集めていましたが、結社や団体などに所属していないと、自作の句を発表する機会になかなか恵まれない現状がありました。「新俳句大賞」が入賞作品を商品パッケージに掲載するのは、そういう背景もあったのですね。
コンテストの名称で俳句ではなく「新俳句」と銘打っているのは、なぜでしょう。募集要項によると、「テーマは自由。自分で感じたこと、思ったことを季語や定型にこだわることなく、五・七・五のリズムにのせて、のびのびと表現してください」とあります。伝統的な俳句は 、五・七・五の17音の定型で季題を詠み込むものとされていますが、「新俳句」はこうしたルールにとらわれず、字余りや字足らずでもOKです。ハードルを下げて誰でも参加できる企画となっています。
新俳句の理念を支えたのは、2018年2月に98歳で亡くなった俳人金子兜太(とうた)さんでした。

「新俳句大賞」を支え続けた俳人の金子兜太さん(伊藤園提供)

季語や定型をめぐるさまざまな俳句観から、団体や結社などがひしめく俳句界。その中で、「新俳句」のコンセプトと近い現代俳句協会に、伊藤園はコンテスト創設の際、協力を求めたのでした。現代俳句協会の会長だった金子さんは、当時のことを次のように振り返っています。「初めて話を聞いた時、『面白い、協力しよう』という気になりました」
金子さんは第1回から最終審査員に就任。「新俳句大賞は、沢山の人々が俳句に触れ、俳句を詠む機会を創ってくれています。新俳句大賞の審査員が一番おもしろい」「生きているうちは審査委員をやり続けたい」と、第28回まで審査会に参加し続けました。
「俳句という一番馴染みやすい形式を通じて、今まで潜んでいてなかなか日常生活では出せなかった、一般の人の感覚を掘り起こした、俳句で表現できるようにした」と、新俳句大賞を高く評価。審査会などでは「作句が技術的なこと、言葉遊びに偏ると、本来、高校生が持っている新鮮、柔軟な感性、感覚が殺されてしまう危険があります。技術は二の次、まずは感性、感覚を磨くことを心掛けるべき」(以上、『第29回入選作品集』から引用)などと議論をリード、新俳句大賞の精神的支柱となってきました。
「『新俳句大賞は日本の俳句文化を支えていくものだ』と常々おっしゃって頂いて、感謝しかないです。先生の遺志を引き継いでいきたいです」と事務局を担当する伊藤園広告宣伝部の横山佳史さんは話しています。

「新俳句大賞」への応募を呼び掛ける事務局の横山さん

最終審査員に夏井いつきさん新登場

テレビ番組「プレバト!!」(TBS系、木曜午後7時放送)のコーナー「俳句の才能査定ランキング」で人気の俳人夏井いつきさんが、俳人の安西篤さん、黒田杏子(ももこ)さん、作家いとうせいこうさんらが務めてきた日本語俳句の最終審査員に、今回から新たに加わります。新風を吹き込むと期待される夏井さんにコメントを寄せて頂きました。

今回から日本語俳句の最終審査員に仲間入りする俳人の夏井いつきさん(伊藤園提供)

新俳句大賞に対しては、「俳句の種を蒔くということにおいて、こんなやり方もあるのだなあと、遠い親戚のような気持ちで眺めてました」。審査員を引き受けた理由は、「ライフワーク『俳句の種蒔き』運動の展開として、お役に立てるのならと思います。裾野を広げるということと、高みを目指すということは、相反することではありません。学ぶことの楽しさもまた、生涯教育という視点における、人生充実の要件ではないかと思います。審査員団の数少ない俳人枠として、新しい視点を提示することができたらと思います」と抱負を語っています。俳句界の現状と課題について伺うと、「私の活動は、むしろ『俳句界』の外を耕すことです。俳句界においては、俳人それぞれが、自分や自分の結社のことだけを考えるのではなく、大きな広い視点をもって、活動していくべきだろうとは思います。が、他人にとやかく言うつもりはありません。私は私なりに、やれることをやっていくのみです」

パッケージに掲載されるのは2000句

夏井さんが最終審査員として加わる審査の流れについて、ご紹介しましょう。作品募集期間は11月3日から翌年2月末までの約4ヵ月間。第30回では、約200万句が寄せられました。一次審査で現代俳句協会の俳人によって約2万句に、二次審査では、さらに絞り込まれます。その後、落選作をジャーナリストや言語学者が俳人とは違う視点で再度審査する「敗者復活審査」を行い、最終審査員が個別に自宅でじっくりと検討する「在宅審査」をします。5月に最終審査会が開かれ、合議制で各賞が選ばれる仕組みです。一方、審査の進行と並行して二重投稿や既発表作品、類想類句、本人作品などを確認。この「作品検証」という作業には、審査とほぼ同じ3ヵ月間をかけた上で、商品パッケージに掲載される入賞2,000作品を7月7日に発表しています。
 商品パッケージには、文部科学大臣賞から佳作特別賞までが掲載されます。文部科学大臣賞、金子兜太賞、大賞の上位3賞は、原則1句ずつ載せるようにしています。ペットボトルの新パッケージが出回るのは8月下旬からで、最高位から順番に1年間かけて掲載していきます。「お~いお茶」ブランド飲料製品の累計販売本数は、発売30年で310億本(525㍉㍑入りペットボトル換算)を突破しているので、媒体としての力は計り知れません。
 「お~いお茶」ブランドの飲料商品は、レギュラーの緑茶、濃い茶、玄米茶、ほうじ茶のほかにも多種多様あって約100種類。自作の句が掲載されたパッケージがいつ販売されるのか、待ちわびる入賞者からの問い合わせも多くあり、伊藤園の事務局が回答しています。ちなみに歴代トップ賞の受賞者を一番多く輩出している都道府県は、愛知県の5人です。
 佳作特別賞以上の副賞には、自作だけが掲載された特別限定品「お~いお茶」(525㍉㍑入りペットボトル24本)1ケースをプレゼントしています。多くの入賞者が「知人や親戚にも配りたい」と有料で追加注文しています。20ケース頼んだ人もいたそうです。
 掲載作品の選び方にも、人知れず工夫をしています。特に外国人に人気の抹茶には英語俳句を載せたり、ホット対応のパッケージには「とびばこで はじめてとべた 冬うらら」と季節感を取り入れたりしています。

「新俳句フォトの部」新設のワケ

 第1回で約4万句だった応募句数は、第30回では50倍の約200万句にまで増えるなど、毎年右肩上がりで推移しています。

右肩上がりに増え続けている応募句数。9割以上が小中校生からの応募(伊藤園提供)

その中で「新俳句フォトの部」を創設するのは、どうしてでしょうか。第30回の場合、国内小中高2886校から団体応募があり、「小学生の部(幼児含む)」「中学生の部」「高校生の部」の応募が全体の91.7%を占めた一方、「一般A(40歳未満)」と「一般B(40歳以上)」の合計は7・0%でした。この一般からの応募を増やす狙いが、「新俳句フォトの部」にはあります。
 「スマホで写真を撮ったり、SNSを使うのが身近な若い世代により親しんでもらえるのでは」と事務局の横山さんは期待を寄せています。応募方法は、自分で撮影した写真と、それに合った俳句をTwitterで投稿するだけ。新しいスタイルだけに、従来の部門とは切り離し、独自の実施期間や審査方法を設けました。11月3日から翌年2月29日までの期間を3回に分けて募集。写真を写真家の鈴木心さん、俳句を俳人の神野紗希さんが審査した上で、日本語俳句の最終審査員も兼ねる写真家浅井愼平さんが総合的に見て各回の新俳句フォト賞(月間賞)を決める仕組みです。各回の審査は約2週間と、リアルタイム性が高いSNSに対応したスピード重視。「新俳句フォトの部」の入賞作は、写真を検証する難しさやパッケージのスペースの問題で、市販用のパッケージには掲載されませんが、月間賞受賞者には自作の句が載った「特別限定版」1ケースが贈られます。新俳句のどんな新しい世界が広がるのでしょう。あなたも一句、詠んでみませんか?

応募要項など詳細は、伊藤園お~いお茶俳句大賞ホームページでご確認ください。
伊藤園お~いお茶新俳句大賞ホームページ

書いた人

大阪生まれ、横浜育ち、名古屋を経て東京住まい。就職浪人ののち記者歴20年超。ロスジェネ世代ゆえの粘り強さとフットワークの軽さが身上。小4から新聞中毒。社会問題から舞台やアートなど全方位に興味があり。橋本治に私淑。国際演劇評論家協会(AICT)日本センター会員で『シアターアーツ』編集部員。