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2021.03.01

生涯平和を祈り続けた画家の軌跡を辿る。平山郁夫シルクロード美術館企画展「平山郁夫 祈りのかたち」【PR】

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八ヶ岳と富士山を眺望する標高1000メートルの高原に位置する、平山郁夫シルクロード美術館。日本画家・平山郁夫による絵画作品と、平山夫妻が40年近くにわたって収集してきた美術作品を、毎年2回に分けて企画展示しています。

2021年3月6日(土)から開催する企画展「平山郁夫 祈りのかたち」では、平山がシルクロードの旅で見聞した「宗教」や「信仰」をテーマにした作品や、生家が帰依した浄土宗に関わる大作などが展示されます。コロナ禍で先行きが不安定な今の時期、作品から多くのものが感じ取れそうです。

※アイキャッチ画像 平山郁夫 1979年 『法然偏依善導』(知恩院蔵)

日本画家・平山郁夫の生涯

平山郁夫は、昭和5(1930)年に広島県瀬戸田町(現・尾道市)に生まれました。16歳で東京美術学校(現・東京藝術大学)日本画科に入学し、前田青邨(まえだせいそん)に師事。卒業後は、名称変更した東京藝術大学で助手を務めながら、本格的に日本画家の道を歩み始めました。

ところが、順調な日々のなか、かつて学徒勤労動員先で被爆した後遺症が現れます。平山は、死の恐怖と戦いながら玄奘三蔵(げんじょうさんぞう・三蔵法師)をテーマにした『仏教伝来』(1959年・佐久市立近代美術館蔵)を描きあげて、院展に入選。この作品が画家としての転機となり、文部大臣賞を受賞するなど、数々の輝かしい功績を収めました。

後に東京藝術大学部長・学長を歴任し、文化勲章を受章。平成21(2009)年12月、79歳でこの世を去るまで、平和を願う作品を数多く残しました。

平山郁夫シルクロード美術館の貴重なコレクション

日本文化の源である縄文文化。その中心地の一つ、八ヶ岳エリアに平成16(2004)年、平山郁夫シルクロード美術館は開館しました。この美術館では、平山郁夫の絵画作品約300点とシルクロードの美術作品約10,000点を所蔵しています。

平山郁夫シルクロード美術館 外観

平山郁夫シルクロード美術館に所蔵されたシルクロードコレクションは、夫妻が半世紀近くかけて集めたもの。シルクロード沿道の様々な地域・時代の絵画、彫刻、工芸品など、広いジャンルに渡る世界屈指の美術作品は、必見です。コレクションから今は亡き画家の、長きにわたる取材旅行の軌跡が感じとれます。平山の代表作の一つ、砂漠を旅するラクダのキャラバンを描いた幻想的な「大シルクロード・シリーズ」(2005年~2007年)をはじめ、見応えのある作品の数々からも、その軌跡を辿ることができるでしょう。

平山郁夫と日本文化の源流を辿るシルクロードの旅

平山とシルクロードの出会いは、昭和41(1966)年まで遡ります。画家は、現在のトルコ共和国に入り、ビザンチン時代の石窟教会に残る壁画を模写しました。これが、シルクロードへ足を踏み入れた最初の出来事です。

昭和43(1968)年からは、日本文化の源流を求め、仏教伝来の道でもあるシルクロードの旅を始めます。長きにわたる画業の中で、ライフワークとなったシルクロード取材は150回を超えるほどの熱心さでした。標高4000メートルのヒマラヤ山脈の峠を2日かけて登るなど、過酷な旅もありましたが、思いが途切れることはありませんでした。

平山郁夫 2001年 『絲綢の路 パミール高原を行く』(平山郁夫美術館蔵)

企画展「平山郁夫 祈りのかたち」作品に宿る平和への思い

シルクロードは東西の貿易の道であるとともに、それぞれの文化が交わる道でもありました。その道なき道には、文化の繁栄を支えた人びとの想いが深く刻まれています。平山は、そうした名もなき人の想いの積み重ねが歴史を形づくると考え、人間の痕跡を探し求めては、シルクロードをモチーフにした作品を繰り返し描き続けました。

シルクロードの旅の中で、平山が描いたものは多岐に渡りますが、その中でも神社仏閣やモスク、仏像など人々の祈りの対象となったものを精力的に作品にしています。

平山郁夫 2008年 『祈りの行進 聖地ルルド・フランス』(平山郁夫シルクロード美術館蔵)

今回の企画展「平山郁夫 祈りのかたち」で展示される『バーミアン大石仏を偲ぶ』には、平山の特別な気持ちが込められていました。昭和43(1968)年にバーミヤン遺跡を訪れますが、その後イスラム原理主義者の手で世界的な文化遺跡が破壊されてしまいます。初めて訪れた時のことを思い浮かべ、怒りと悲しみ、そして平和への祈りを込めて制作された作品です。

平山郁夫 2001年 『バーミアン大石仏を偲ぶ』(平山郁夫美術館蔵)

故郷の信仰から生まれた作品

2021年は平山郁夫の13回忌にあたることから、関連する作品の展示も見どころの一つです。平山郁夫シルクロード美術館初公開となる、知恩院蔵の『法然偏依善導』は、生家が帰依した浄土宗に関わる大作です。平安時代から鎌倉時代の僧である法然は、浄土宗の開祖として知られています。末法の世の救いは念仏であると説き、人々に心の平安をもたらしました。作品に向き合うと、穏やかな気持ちになれそうです。

平山郁夫 1979年 『法然偏依善導』(知恩院蔵)

さらに、多感な少年時代を育んだ瀬戸内海をモチーフにした作品も展示されています。『瀬戸田曼荼羅』は、太陽の光が輝く美しい瀬戸内海の描き方が印象的です。中央には海を背景に松に囲まれた向上寺三重塔が描かれていて、青い海とのコントラストが美しい作品です。

平山郁夫 1985年『瀬戸田曼荼羅』(平山郁夫美術館蔵)

平山の作品のほか、シルクロードの貴重な美術作品も注目です。今回の展示で初公開の仏陀立像は、3世紀から4世紀のもの。像を前にして、悠久のロマン溢れるシルクロードに思いを馳せてはいかがでしょうか。

仏陀立像 3-4世紀 (平山郁夫シルクロード美術館蔵)

企画展「平山郁夫 祈りのかたち」


期間:2021年3月6日(土)~6月22日(火)
主催:公益財団法人 平山郁夫シルクロード美術館
会場:平山郁夫シルクロード美術館

平山郁夫シルクロード美術館

平山郁夫の美術作品とシルクロードの美術作品コレクションの展示を中心に、展示室でのギャラリーコンサート、講演会、子ども向けワークショップ、屋上テラスでのフェスタなど各種イベントも行っています。

※新型コロナウイルス感染症対策等により、会期やイベントなどに変更が生じる場合がございます。最新情報は、公式Webサイト等をご覧ください。

住所:山梨県北社市長坂町小荒間2000ー6
開館時間:10時~17時(入館は16時半まで)
休館日:会期中無休
入場料:一般1200円 高大生800円 小中学生無料

「平山郁夫シルクロード美術館」公式Webサイト

三方ガラス張りのミュージアムカフェ「キャラバンサライ」からは、八ヶ岳と南アルプスの眺めを楽しむこができます(※12月上旬~翌GW前まで冬期休業)

書いた人

幼い頃より舞台芸術に親しみながら育つ。一時勘違いして舞台女優を目指すが、挫折。育児雑誌や外国人向け雑誌、古民家保存雑誌などに参加。能、狂言、文楽、歌舞伎、上方落語をこよなく愛す。ずっと浮世離れしていると言われ続けていて、多分一生直らないと諦めている。