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国宝『瓢鮎図』の謎解きでわかった!禅は面白い!! 

この絵のテーマは?

室町幕府の4代将軍・足利義持(あしかがよしもち)はある時、「丸くすべすべした瓢箪(ひょうたん)で、ぬるぬるした鮎(なまず)を抑え捕ることができるか」という公案(禅問答)を考え、そのテーマとなる絵を画僧(絵を描く禅僧)の如拙に命じました。

それを受けて如拙が、公案にふさわしい画題として描いたのがこの作品の下の部分の絵です。

国宝『瓢鮎図』の謎解きでわかった!禅は面白い!! 

上の部分は何が書かれてるの?

将軍義持の公案に答えたのは京都五山 ―別格の南禅寺(なんぜんじ)、天龍寺(てんりゅうじ)、相国寺(しょうこくじ)、建仁寺(けんにんじ)、東福寺(とうふくじ)、万寿寺(まんじゅじ)― を代表する高名な禅僧31人。作品の上の部分に書かれていていう漢文が公案の答えで、これを賛と呼びます。

三段にわたって漢詩で書かれた賛の最初に、「序」として答えを書いたのは相国寺、天龍寺、南禅寺の住持を務めた高僧・大岳周崇(だいがくしゅうすう)。ほかにも、いずれ劣らぬ知識人が見識やテクニックを競い合うかのようにした答えが並んでいます。

当時一流の画僧が手がけた絵と、京都五山の英知が結集した賛。室町時代の粋を集めた『瓢鮎図』は絵にも賛にも見どころがいくつもあります。できるだけわかりやすくご紹介するために、今回は【絵】編、次回は【賛】編と2回に分けます。

禅問答のきっかけとなった絵に隠された謎……。
『瓢鮎図』を絵で楽しみましょう

国宝『瓢鮎図』の謎解きでわかった!禅は面白い!! 

作者の如拙は室町時代の応永年間(1394~1428年)に相国寺を中心に活躍した画僧です。かの有名な水墨画の名手・雪舟(せっゅう)の師匠の画僧・周文(しゅうぶん)に絵を教えたのが、だれあろうこの如拙。如拙は日本の水墨画のパイオニアであり、後の狩野(かのう)派や長谷川等伯(とうはく)から漢画の祖とも称えられた偉大なる画僧だったのです。

『瓢鮎図』の絵の見どころはこの7つ!

1 山水図に人物の戯画を描き入れた最初の絵

墨の濃淡を駆使して表された、霧や靄(もや)にかすんだ遠くの山々。如拙がだれに絵を学んだのか明らかになっていないが、これだけの技法に通じていたのは驚くべきこと。さすがは漢画、水墨画の祖です。しかし、山水図は本来、人物が目立つように描かれることはありません。この絵は室町時代初期の山水画に変革を与え、発展させた記念碑的作品でした。

2 将軍の命で禅僧31人が禅問答をした記録

禅の公案は高僧と弟子の間で行われる私的なものですが、室町幕府4代将軍足利義持は知恵者として知られた高僧名僧を集め、『瓢鮎図』をテーマにして禅問答を決行。この絵は当時の権力者の知的レベルの高さを示すものでもあります。当初は衝立(ついたて)に仕立てて座右(ざゆう)に置いていたとされるが、現在は掛幅(かけふく)に改装されています。

3 中央に公案のテーマを端的に表現

この絵の主題は、瓢箪を持った男とナマズ。しかも、滑りやすいことを強調するように、ナマズはもとより、竹や水流、岸辺などを曲線で描き、男との対比を際立たせています。もしも、男とナマズがいなければ単なる美しい山水画ですが、戯画的な男とナマズの違和感が、この絵に特別な緊張感を与えています。

19 国宝 瓢鮎図(男)19 国宝 瓢鮎図(ナマズ)

4 あっ、瓢箪が落ちる!

丹念に筆を運んだことがよくわかる背景に比して、男とナマズの描き方はかなりぞんざいに見えます。瓢箪を手に持っているはずなのに、これでは宙に浮いた瓢箪を上から抑えているようにしか見えません。それも公案の意図たったのでしょうか……。

5 この男はいったい何者?

身なりがよろしくないように見えますが、髪をまとめて布で結わえているのは当時の絵草紙(えぞうし)などに見られる庶民の姿そのもの。衣服に描かれたいくつもの線は破れているのではなくシワ。以上から、この人物は当時の一般的な男の代表だと思われます。

6 笹竹や水流まで詳細に描写

「丸くすべすべした瓢箪で、ぬるぬるした鮎を……」というテーマに合わせて、湿気が多くて滑りやすそうな水辺を場面に選び、表面がつるつるした笹竹を描いたところに、如拙の工夫が光ります。男とナマズを除くと、笹竹や水流の表現などの細部まで丹念に描かれているのは、将軍から直々に依頼された絵だったからでしょうか。

7 この絵が「ひょうたんなまず」の語源です

とらえどころのない、要領を得ない様子や、そのような人を表す「ひょうたんなまず」という言葉は、『瓢鮎図』の公案から生まれたものです。それは、この絵の存在がそれだけ広く知られていたことの証でもあります。ちなみに「鯰」ではなく「鮎」の字が使われているのは、当時ナマズを「鮎」と書いていたからです。

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