国宝指定の屏風は18件!
中国に端を発し、風よけや視線をさえぎる調度品として利用されてきた屛風。飛鳥時代の日本にもたらされた後は、そこに唐画ややまと絵、水墨画などが描かれるようになり、鑑賞の対象になりました。
屛風の注目度が高まったのは桃山から江戸時代にかけてのこと。城郭や寺院の大広間には屛風が不可欠となり、狩野派や長谷川等伯、琳派などが競って手がけ、屛風絵は芸術ジャンルのひとつになりました。
国宝に指定された18件(※2015年当時)の屛風の中でも、独創的かつ圧倒的な美しさで知られる名画といえば、江戸時代中期に写生による独自の画法を確立し、京都画壇で圧倒的な人気を誇った円山応挙の円熟期の傑作「雪松図屛風」と、作者未詳ながら優れた技巧とたくさんの謎を秘めた「風俗図(彦根屛風)」。
この代表的な2作品を比べてみましょう。
円山応挙「雪松図屛風」
写生と装飾を融合した応挙畢生の屛風。金泥地に、応挙が編み出した付け立て技法で松の幹の丸さを出し、木肌や葉は墨の濃淡で描写しています。雪は描き残した和紙の白さを生かし、冬の情景をしっとりと表現。
円山応挙「雪松図屛風(ゆきまつずびょうぶ)」(左隻)六曲一双 紙本墨画淡彩 各156.1×362.1㎝ 江戸時代(1781~1789年) 三井記念美術館 国宝
「風俗図(彦根屛風)」
江戸初期の京都の遊里を描いた風俗画の傑作。実は中国から伝わった伝統的な画題「琴棋書画図」の見立てと伝えられ、作者未詳ながら名うての絵師が手がけたと目されています。
「風俗図(彦根屛風)」六曲一隻 紙本金地着色 94.0×271.0㎝ 江戸時代初期 彦根城博物館 国宝
この2作品を所蔵する美術館で、立てられた状態の屛風を観ると、色合いの美しさや計算し尽くされた構図や遠近法の冴えに目を奪われてしまうことでしょう。