東京
出光美術館
江戸時代の美術-「軽み」の誕生
「絵はつまりたるがわろき」-画面にすべてを描きつくすのはよくなく、ゆとりや隙を感じさせるのがいい絵である。江戸時代初期、狩野派の地盤を固めた絵師・狩野探幽は、後水尾天皇にこう語ったとされています。絵画に限らず、松尾芭蕉の俳諧理論にも通じるこうした「軽み」の価値観を、出光美術館の名品で楽しむ展覧会。「つまらない」美意識に貫かれた作品を堪能。
会期:9月16日(土)~10月22日(日)
入館料(一般):1,200円
公式サイト:http://idemitsu-museum.or.jp/
永青文庫
秋季展 秘蔵!重要文化財-長谷雄草紙- 全巻公開-永青文庫の絵巻コレクション-
江戸時代に徳川将軍家の宝物として秘蔵されていた「長谷雄草紙」は、平安時代の漢学者・紀長谷雄(きのはせお)にまつわる怪奇な説話が題材の絵巻。鬼と長谷雄が双六勝負、勝った長谷雄は美女を得るが――というストーリーで、現代のアニメや漫画に通じる表現も楽しめます。ほかにも、奈良絵本と呼ばれる彩色入りの写本などのコレクションも公開!
会期:10月7日(土)~12月3日(日)
入館料(一般):1,000円
公式サイト:https://www.eiseibunko.com/
太田記念美術館
美人画 麗しきキモノ
江戸時代から昭和初期にかけての250年にわたって浮世絵に描かれた、キモノのおしゃれを一気見できる展覧会。鈴木春信、喜多川歌麿、月岡芳年、伊東深水ら、時代を代表する絵師たちの美人画の名品がずらりと並びます。豪華な衣装の花魁、柄や色味が若々しい町娘、小物使いで魅せる芸者や和装男子まで、それぞれに工夫を凝らしたおしゃれは、見ているだけで気分が上がります。
会期:9月1日(金)~10月22日(日)
入館料(一般):800円
公式サイト:http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/
サントリー美術館
激動の時代 幕末明治の絵師たち
極彩色の「五百羅漢図」を百幅描き上げた狩野一信。葛飾北斎に学んだ洋風画家の安田雷州(らいしゅう)。斬新な浮世絵で一大勢力を築いた歌川国芳と歌川派。血みどろ絵で知られる月岡芳年。あらゆる絵を描いて「画鬼」とまで称された河鍋暁斎。光と影を巧みに用いた光線画で一世を風靡した小林清親などなど、幕末から明治という激動の時代に異彩を放った絵師たちの、独創的な作品群を一挙公開。ほとばしるエネルギーに圧倒されます。会期中展示替えあり。
会期:10月11日(水)~12月3日(日)
入館料(一般):1,500円
公式サイト:https://www.suntory.co.jp/sma/
森美術館
森美術館開館20周年記念展 私たちのエコロジー 地球という惑星を生きるために
環境問題をするさまざまな課題について、多様な視点で考えることを提案する展覧会。世界16か国ほど、約35人のアーティストの作品が登場します。身近な環境にあるものを再利用した作品が多いのも特徴で、森美術館周辺の植物を調査・採取して押し花にする作品や、東京近郊の病院の廃材を素材とした絵画インスタレーションなども。作品だけでなく展覧会そのものも、可能な限りサステイナブルに。多くの気づきをくれるよい機会になりそうです。
会期:10月18日(水)~2024年3月31日(日)
入館料(一般):2,000円
公式サイト:https://www.mori.art.museum/jp/index.html
山種美術館
【特別展】日本画聖地巡礼 ―東山魁夷の京都、奥村土牛の鳴門―
速水御舟(はやみぎょしゅう)『名樹散椿(めいじゅちりつばき)』は京都・地蔵院の五色八重散椿、奥村土牛(おくむらとぎゅう)『鳴門』は鳴門海峡の渦潮、奥田元宋(おくだげんそう『奥入瀬(秋)』は青森県十和田市の奥入瀬渓流の紅葉、東山魁夷(ひがしやまかいい)の『年暮る』は京都ホテル(現・ホテルオークラ京都)から見た町家の光景――。近代日本画の名品に描かれた実在の場所を「聖地」と位置づけて、作品とともに現地の写真や地図、詳細な情報を紹介する「聖地巡礼」をイメージした展示が楽しい。北海道から沖縄まで、日本全国を名画で旅しましょう!
会期:9月30日(土)~11月26日(日)
入館料(一般):1,400円
公式サイト:https://www.yamatane-museum.jp/
アーティゾン美術館
ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山口晃 ここへきてやむに止まれぬサンサシオン
アーティゾン美術館の石橋財団コレクションと、現代美術家の共演による展覧会「ジャム・セッション」第4弾。東京メトロ日本橋駅のパブリックアートや、東京2020パラリンピック公式アートポスターなどを手がけた山口晃(やまぐちあきら)が登場します。今回、山口が〝セッション〞する石橋財団コレクションは雪舟『四季山水図』と、ポール・セザンヌ『サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール』、そして日本の近代絵画。「近代」「日本的コード」「日本の本来性」とは何か? を問います。近年の話題作の原画も初公開されます!
会期:9月9日(土)~11月19日(日)
入館料(一般):1,200円ほか
公式サイト:https://www.artizon.museum/
日本民藝館
村田コレクション受贈記念 西洋工芸の美
イギリス、スペイン、ドイツ、オランダなどの陶器、レーマー杯と呼ばれる森林ガラスやエナメルで彩られた愛らしい模様の瓶などのガラス製品、暖炉の周辺で使われる金工品など、主に13世紀から19世紀までの民衆が用いた西洋工芸品を紹介。たとえば日本で人気を博す英国古陶、スリップウェアは、器の表面をスリップと呼ばれる化粧土で装飾して焼き上げた陶器のことで、素朴さの意匠性が同居する、民藝の魅力にあふれています。西洋工芸品のコレクター、村田新蔵(むらたしんぞう)氏と洋子(ようこ)氏の蒐集品800点超が日本民藝館に寄贈されたことを記念して開催される展覧会。貴重な椅子の数々も見どころ!
会期:9月14日(木)~11月23日(木・祝)
入館料(一般):1,200円
公式サイト:https://mingeikan.or.jp/
府中市美術館
インド細密画
16世紀後半から19世紀半ばにかけてムガル帝国やラージプト諸国の宮廷で楽しまれたインドの細密画は、一辺20㎝ほどの小さな絵。「観る人と絵が一対一で対話をする」という考えから、あえて小さな画面に描かれているのだそうです。幻想的な神話世界、豪華な衣装の王の肖像、しなやかなポーズの女性たちが、美しい線と色で表現された、エキゾチックな世界に魅了されます。リアルな描写を追求した西洋絵画とも、濃淡や陰影を愛した日本絵画とも異なる、インド独特の造形と色彩の美をたっぷりと楽しめます。
会期:9月16日(土)~11月26日(日)
入館料(一般):900円
公式サイト:https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/index.html
茨城
笠間日動美術館
没後55年 藤田嗣治展
「乳白色の肌」の女性像、猫などの動物、愛らしさのなかに独特の雰囲気をもつ子供--。画家・藤田嗣治(ふじたつぐはる)の代表的なモチーフを、フランスに住んでいた時期を中心に紹介。笠間日動美術館創設者・長谷川仁との交流や、最後の妻が茨城県出身者だったなど、以外な縁を辿る作品・資料にも興味をそそられます。藤田がパリ郊外の小さな村に構えた「メゾン・アトリエ・フジタ」の写真資料も展示。
会期:9月30日(土)~12月17日(日)
入館料(一般):1,300円
公式サイト:http://www.nichido-museum.or.jp/
静岡
MOA美術館
7人の人間国宝展
重要無形文化財保持者、いわゆる「人間国宝」7人の作品を厳選して展示。竹工芸作家の藤沼昇(ふじぬまのぼる)による伝統的な束編を駆使したエレガントな花籠や、陶芸の色鍋島今右衛門窯当代である十四代今泉今右衛門の静謐な世界が凝縮した鉢、漆芸家・室瀬和美のモダンな合子など、伝統の技を真摯に磨きながら、革新的な創作に挑み続ける人間国宝たちの世界を、じっくりと楽しむことができます。
会期:9月1日(金) ~10月17日(火)
入館料(一般):1,600円
公式サイト:https://www.moaart.or.jp/
長野
軽井沢千住博美術館
~浅間山 Message from the earth~
新作 『浅間山』 が放つ地球のパワーに圧倒される!
これまで軽井沢の自然に触発された数々の作品を発表してきた日本画家・千住博(せんじゅひろし)が、 新たなテーマに選んだのは「浅間山(あさまやま)」 。2022年11月に取材に訪れ、さまざまな地点からスケッチをするなかで受け取った大地からのメッセージが創作のヒントとなり、完成した新作 『浅間山』を公開します。ハート形に象(かたど)られた山頂火口は、一見穏やかな表情。しかし、その下にはマグマが眠っている―。溶岩流や森、滝、崖などのモチーフの作品も紹介。地球の、宇宙のパワーを感じます。
会期: 3月1日(水)~12月25日(月)
入館料(一般):1,500円
公式サイト:https://www.senju-museum.jp/
愛知
徳川美術館
秋季特別展 人間讃歌 ―江戸の風俗画―
顔棚の下でのんびり涼む男女の様子に心が解けてゆく久隅守景(くすみもりかげ)『納涼図』や、京の遊里の人々の姿を精緻に描いた『風俗図(彦根屛風)』など、江戸時代の多様な風俗画の名品が多数並ぶ必見の展覧会。現実の生活を生き、平和を謳歌する人たちに視線を注いだこれらの絵画は、人間讃歌という現代にも通じる普遍の魅力にあふれています。当時の暮らしを彷彿させる小袖や調度品なども一緒に展示。
会期: 9月24日(日)~11月5日(日)
入館料(一般):1,600円
公式サイト:https://www.tokugawa-art-museum.jp/
京都
細見美術館
開館25周年記念展I 愛(いと)し、恋し、江戸絵画 ―若冲・北斎・江戸琳派―
実業家・日本美術コレクター、細見古香庵(ほそみここうあん)に始まる細見家三代のコレクションを中心とする細見美術館。なかでも二代古香庵夫妻が二人三脚で蒐集したという名品揃いの江戸絵画を、たっぷりと紹介します。伊藤若冲のユニークな作品、葛飾北斎の豪華な肉筆美人画、酒井抱一(さかいほういつ)や鈴木其一(すずききいつ)らの洗練された江戸琳派の作品群などなど、先見の明をもって集めたふたりのお気に入りがずらり!
会期: 9月5日(火)~11月5日(日)
入館料(一般):1,400円
公式サイト:http://www.emuseum.or.jp/
相国寺承天閣美術館
企画展「若冲と応挙」I期
明徳3(1392)年に夢窓疎石(むそうそせき)を開山とし、室町幕府第3代将軍足利義満によって創建された臨済宗相国寺派の大本山、相国寺。その美術館には国宝5点、重要文化財145点を含む、多くの優れた文化財が収蔵されています。この秋は、伊藤若冲と円山応挙という、京都の二大人気絵師を、I期とII期にわけて特集。I期では、伊藤若冲が国宝『動植綵絵』(宮内庁三の丸尚蔵館蔵)とともに寄進した、贅を尽くした仏画『釈迦三尊像』は三幅そろって展示。円山応挙は重要文化財『七難七福図巻』全3巻を一挙公開します。『仁王経』に説かれた災いと福を臨場感たっぷりに描き出した応挙の傑作絵巻。下絵や画稿まで観ることができるのは、縁の深い相国寺承天閣美術館だからこそ。
会期: 9月10日(日)~11月12日(日)
入館料(一般):800円
公式サイト:https://www.shokoku-ji.jp/museum/
奈良
大和文華館
特別展 いぬねこ彩彩(さいさい) ―東アジアの犬と猫の絵画―
中国では、犬と猫は、子孫繁栄や長寿といった吉祥のモチーフ。特に南宋(なんそう)時代は、宮廷画家の毛益(もうえき)の作と伝わる『蜀葵遊猫図(しょっきゆうびょうず)・萱草遊狗図(かんぞうゆうくず)』に代表されるような、小品ながら細緻な描写による優れた作品が数多く制作されました。この展覧会では、中国、朝鮮半島、日本における多彩な犬図・猫図を紹介。中国の画家・八大山人(はちだいさんじん)による『猫児図』の、ふにゃふにゃっとした猫はおすすめです!
会期: 10月7日(土)~11月12日(日)
入館料(一般):950円
公式サイト:https://www.kintetsu-g-hd.co.jp/culture/yamato/
広島
ひろしま美術館
ミュシャ展 マルチ・アーティストの先駆者
19世紀末から20世紀初頭にかけてのアール・ヌーヴォーを代表する芸術家、アルフォンス・ミュシャの、デザイナー兼画家というマルチな活動ぶりを紹介。チェコ在住の個人コレクター、チマル博士のコレクションから数々の選りすぐりを展示します。初期の書籍や雑誌などの挿絵仕事から、ミュシャを一躍有名にした女優サラ・ベルナールの演劇ポスターをはじめとするポスターや装飾パネル、さらにはフランスの老舗菓子メーカーのビスケット缶のパッケージも! その才能に驚嘆するはず。
会期: 9月2日(土)~10月29日(日)
入館料(一般):1,500円
公式サイト:https://www.hiroshima-museum.jp/
大分
大分県立美術館
2023コレクション展III わたしが主役! OPAM秋の名品展
大分県出身やゆかりの作家を中心とした約5,000点にのぼるコレクションから名品を紹介。前半では「作品中の主役=画題」に注目し、花卉(かき)や鳥獣など多くの人に好まれた画題を、近世から近代までの日本絵画を中心に展示します。岸連山(きしれんざん)や田能村竹田(たのむらちくでん)らによる華やかな作品は見応え十分! 後半では西洋絵画の名品や、抽象画を描いた宇治山哲平(うじやまてっぺい)ら大分の近代洋画も展示。
会期: 9月7日(木)~11月12日(日)
入館料(一般):300円
公式サイト:https://www.opam.jp/
構成/剣持亜弥(HATSU)
※本記事は『和樂』10,11月号の転載です