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2023.04.28

そのセンスに世界が驚いた! 今も評価される尾形光琳のデザイン性とは?【カリスマ絵師10人に学ぶ日本美術超入門】vol.5

シリーズ「カリスマ絵師10人に学ぶ日本美術超入門」。今回は尾形光琳(おがたこうりん)を、作品画像とともにご紹介します。

そのほか9人の絵師はこちらからご覧ください。

300年後も評価されるデザイン性

大きな水流を中央に配し、その左右の金地には紅白の花をつけた梅の老木と若木。国宝『紅白梅図屛風(こうはくばいずびょうぶ)』(MOA美術館)は、晩年の光琳が到達した絵画表現の極致。あまりにも有名な作品です。光琳の国宝絵画にはもうひとつ、比較的早い時期に描かれた、金地にカキツバタだけを繰り返している『燕子花図屛風(かきつばたずびょうぶ)』(根津美術館)があります。それから時を経て、新たに橋を描き加えたのが、下の『八橋図(やつはしず)屛風』。
いずれも、自然の景観を題材にしながら、異空間をつくり上げている画面が日本美術のイメージとかけ離れています。それでいて、ひとつの絵として見事にまとまっているところが、本作の名画たるゆえんです。そのポイントは、写実的とは対極にあるようなモチーフの描き方にあります。光琳はあらゆるモチーフをデザイン化する天才的なセンスを持ち、宗達に画面構成をならいながら、独自の画風を確立。後に光琳文様と称されたモチーフは、その後の琳派の絵師が受け継ぎ、現在もさまざまな用途に使われ、琳派を有名にしていきました。

『八橋図屏風』 尾形光琳 紙本金地着色 6曲1双 江戸時代・18世紀 各縦163.7・横352.4cm メトロポリタン美術館 ©The Metropolitan Museum of Art.Purchase, Louisa Eldridge McBurney Gift, 1953 『伊勢物語』を題材にした燕子花のモチーフをくり返し、ジグザグに配した画面をつくった若き日の作品に橋を渡し、さらにクリエイティブな画面を創出。

これってアール・ヌーヴォー?

19世紀末から20世紀初めにフランスを中心にヨーロッパで流行した「アール・ヌーヴォー」は、植物の文様や流れるような曲線を特徴とした美術運動で、それがやがて「ジャポニスム」へとつながっていきました。
どうしてそのような傾向が生まれたのかというと、要因はなんと琳派の絵画にあったのです。欧米では当時、シーボルトが持ち帰った酒井抱一の『光琳百図』や、宗達や光琳らを日本の真の印象主義と称したフェノロサによって琳派が紹介されており、光琳文様の自然表現はクリムトやミュシャなどの画家に大きな影響を与え、西洋絵画に新しい風を吹き込みました。
光琳の斬新なデザイン性は日本のみならず、世界の芸術家を驚かせるほどのセンスだったのです。

『波濤図屛風(はとうずびょうぶ)』 尾形光琳 紙本金地着色 2曲1双 江戸時代・18世紀 各縦150.5・横168.9cm メトロポリタン美術館 ©The Metropolitan Museum of Art, Fletcher Fund, 1926 この波の表現もまた、アール・ヌーヴォー的。

琳派の〝琳〟は光琳の琳

現在、琳派とは一般にも通じる言葉になっていますが、実は後につけられたもの。明治時代には、宗達、光琳、尾形乾山(けんざん)、渡辺始興(しこう)、酒井抱一(ほういつ)、鈴木其一(きいつ)、池田孤邨(こそん)らが「光琳派」と称され、大正時代に宗達の再評価が進むと「宗達光琳派」と呼ばれるようになり、「光悦派」という呼称も見られました。
それが「琳派』に統一されたのは、昭和47(1972)年の東京国立博物館創立百年記念特別展「琳派」から。平成16(2004)年の東京国立近代美術館「琳派RIMPA」展では菱田春草(ひしだしゅんそう)、横山大観(たいかん)などの日本画や、クリムトやウォーホルの作品なども琳派的なものとして紹介。光琳の〝琳〟は美しい玉を意味し、琳派は画派の作品傾向まで表した名称だったのです。

『流水に菊図 Chrysanthemums by a Stream』 尾形光琳 紙本金地着色 6曲1双 江戸時代・18世紀 各縦163.2・横369.9cm クリーブランド美術館 ©The Cleveland Museum of Art, Gift of the Hanna Fund 1958.206

カリスマ絵師05 尾形光琳プロフィール

おがた こうりん
万治元(1658)年~享保元(1716)年。京の呉服商「雁金屋(かりがねや)」の次男として生まれ、放蕩三昧(ほうとうざんまい)で財産を使いはたし、借金をしながらも、宗達などに学んだ画法を継承。新たに展開させて絵師として名を成す。その卓越したセンスは弟乾山(けんざん)と共作の陶芸や工芸、きものまで、幅広いジャンルに発揮された。

※本記事は雑誌『和樂(2018年4・5月号)』の転載です。

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和樂web編集部

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