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2023.06.16

京都画壇のキング・オブ・キング、円山応挙【カリスマ絵師10人に学ぶ日本美術超入門】vol.7

シリーズ「カリスマ絵師10人に学ぶ日本美術超入門」。今回は円山応挙(まるやまおうきょ)を、代表作とともにご紹介します。

そのほか9人の絵師はこちらからご覧ください。

そうだったのか日本美術19
京都で人気ナンバーワン

現在の日本美術界では、若冲が圧倒的な人気ナンバーワンの座を譲りませんが、江戸のリアルタイムにさかのぼると、若冲は常に応挙の後塵(こうじん)を拝していました。

その事実を伝えてくれるのが、約10年ごとに発行されていた、京都の市井(しせい)の紳士録で現在の美術年鑑のような役割を果たした『平安人物志(へいあんじんぶつし)』。35歳のころに2位で初登場した円山応挙(まるやまおうきょ)は、43歳で1位を奪取。同時代の絵師には、若冲とともに、奇想で知られる曾我蕭白(そがしょうはく)、南画(なんが)・文人画の池大雅(いけのたいが)と与謝蕪村(よさぶそん)らがいたのですが、人気1位の座を安定してキープ。
みずからが売れっ子として活躍するだけでなく、たくさんの弟子を育てて円山派を率いるなど、京都画壇を盛り上げたことも応挙の功績のひとつです。

『朝顔狗子図杉戸(あさがおくしずすぎと)』 円山応挙 板絵着色 2枚 江戸時代・天明4(1784)年 各縦168.3・横81.4㎝ 東京国立博物館 出典:ColBase (https://colbase.nich.go.jp) 愛らしく無垢な子犬を、本物らしく見える構図や立体感でわかりやすく描いた、応挙ならではの魅力あふれる作品。

そうだったのか日本美術20
日本美術のベースは写生

京都画壇第一の絵師・応挙の生まれは丹波(たんば)の農家。大飢饉の翌年に、次男であったことから食い扶持(ぶち)減べらしのために近くの金剛寺へ小僧として預けられるという境遇でした。

その後、京都に奉公(ほうこう)に出た際に狩野派の絵を学ぶ機会を得て、作画に熱中。ヨーロッパ伝来ののぞき眼鏡の制作に携わりながら、西洋絵画や中国絵画を独学で習得。さらに、写生をくり返しながら、写実性を重視した独自の作画法を編み出したのです。

日本美術において写生は欠かせないものですが、応挙の場合は、見たままの姿をわかりやすく描いた点で他の絵師と一線を画しており、写生に構図のバランスや自由闊達にモチーフを配するテクニックが重なり、押しも押されもしない人気を得たのです。


『写生帖』より 円山応挙 紙本着色、折本 4帖 江戸時代・18世紀 甲帖縦31.8・横21.8㎝ 東京国立博物館 出典:ColBase (https://colbase.nich.go.jp) 応挙は自然観察を重視し、わかりやすく親しみやすい写生的表現で京都を中心に人気を博した。当時、博物学への関心の高まりとともに写生図が流行。応挙も多くの写生図を制作した。

そうだったのか日本美術21
写実×写実=非現実

西洋画のように写生したものをそのまま本画にすることを、日本美術では行いません。写生は資料としてため込んでおき、作画の際に必要な部分を引っ張り出して構成するために写生をするのです。

写生は写実的表現に欠かせないものですが、応挙の作品は、それだけにとどまりません。画面構成や配色などを考慮して、虚構を駆使。非現実的な風景にもかかわらず、こんなことがあるかもしれないと思わせる現実味を帯びているようにかんじさせるところが、応挙のすごいところ。綿密な描写と、画面構成の面白さを応挙は両立させているのです。

『柳に鷺図 Heron on a Willow Branch』 円山応挙 2曲1隻 江戸時代・18世紀 絹本金地着色 各縦69.4・横185.0㎝ ©The Cleveland Museum of Art,Bequest of Mrs. A. Dean Perry 1997.108

カリスマ絵師07 円山応挙プロフィール

まるやま おうきょ
享保18(1733)年~寛政7(1795)年。丹波国の農家に生まれ、17歳のころ京都で狩野派の石田幽汀(ゆうてい)に絵の基本を学ぶ。以後は写生を中心にして、様々な画法を学び、京都画壇の最高峰に立ち、多くの友人門人に慕われて円山派を確立。晩年は目を患いながらも作画を続ける。

※本記事は雑誌『和樂(2018年4・5月号)』の転載です。

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和樂web編集部

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