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北斎AtoZ
D=【ダンス】踊りの指南書は、まるでパラパラ漫画
北斎の作品のなかでも、意外なものとしてご紹介したいのが『踊獨稽古(おどりひとりげいこ)』。
文化・文政時代にお座敷や芝居小屋ではやっていた曲の振り付けをひとりでこっそり稽古したいひとのための、振り付けの指南書です。
『踊獨稽古』の最初は「登り夜舟」
収録されているのは、「登り夜舟」「生野暮薄鈍(きやぼうすどん)」「悪玉踊り」「団十郎冷水売(だんじゅうろうひやみずうり)」の4曲。
作画と編集は北斎がひとりで行っていて、歌舞伎舞踊の振り付けを担当していた藤間新三郎(ふじましんざぶろう)が補正するという念の入ったつくりになっています。
続く「生野暮薄鈍」って、いったいどんな曲?
踊りの所作(しょさ)を忠実に描いた一連の絵は、パラパラ漫画で見てみたいほど正確でキュート。今や日本を代表する文化であるアニメーションの原型を見る思いです。
振り付けの図説の合間には、踊り方のコツや小道具の使い方などが書き加えられています。
その内容が受けたのか、天保6(1835)年には『おとり獨稽古』の外題で再版されています。
絵を見るだけでも面白い「悪玉踊り」
北斎というと、無趣味で絵にしか興味がなかったことが知られていますが、これほど丁寧な指南書が描けるぐらい、歌舞伎舞踊にも精通していたとは・・・。
思いもよらなかった側面に驚かされます。