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2026.02.20

現代写真家、ロー・エスリッジが、パリのカンボン通り31番地へ。 コンセプチュアルな写真展が「シャネル・ネクサス・ホール」で開催

2月25日より、シャネル銀座ビルディング4階にある「シャネル・ネクサス・ホール」にて、写真展「FUGUE FOR 31 RUE CAMBON: ROE ETHRIDGE AT CHANEL ARCHIVES」が開催されます。これはアメリカ人写真家、ロー・エスリッジが、パリのカンボン通り31番地にあるガブリエル・シャネルのアパルトマンで撮り下ろしたカットを、ここ日本で初公開するという貴重な試み。プライベートコレクションにモダンな息吹を吹き込んだ、このクリエイションについてレポートします。

メゾンが受け継いできた〝芸術家支援〟というレガシー

CHANEL ブローチとイヤリング(製作ゴッサンス) 1960年代デザイン 復刻版 -パリ、パトリモアンヌ・シャネル蔵
©CHANEL/Roe Ethridge

その類まれなる才能でタイムレスなアイテムを生み出し続けた、ガブリエル・シャネル。彼女は時代を牽引したファッションデザイナーというだけでなく、作曲家のイーゴリ・ストラヴィンスキーや、ロシアバレエ団の創設者、セルゲイ・ディアギレフなど、新進気鋭の芸術家たちを手厚く支援するパトロンでもありました。そんなメゾンの伝統を受け継いで、現代の多様なカルチャーを紹介しているのが「シャネル・ネクサス・ホール」です。

この特別な場所にて行われるのが、アメリカを代表する現代写真家のひとり、ロー・エスリッジの写真展。気鋭のフォトグラファーとのコラボレーションは、どのような経緯で実現したのでしょうか。

現代写真家が、所蔵品をアート作品へと昇華

シャネルとロー・エスリッジは、10年以上にわたってさまざまな形で協働を行なってきました。お互いの信頼を深めるなか、シャネルは25年6月に創刊した『アーツ & カルチャー マガジン』のために、ある新たな依頼を行います。それこそが、ガブリエル・シャネルが大切にしていた所蔵品を探求するというプロジェクトでした。

そのためにローは、カンボン通り31番地にあるガブリエル・シャネルのアパルトマンへ。普段は閉ざされているクチュリエの扉の奥へと足を踏み入れます。メゾンのアーカイブ施設「パトリモワンヌ」に所蔵されているアイテムとともに、残されたプライベートコレクションを撮り下ろすことになったのです。

そのシューティングで行われたのは、シャネルの所蔵品に現代的な小道具を組み合わせるという画期的なアプローチ。ファインアートとコマーシャルフォトの間をボーダレスに行き交う写真家ならではの、モダンな作品が生み出されることになりました。

ジャック リプシッツ作 ココ シャネルの⽯膏像 1921年 CHANEL サングラス 2002/03年秋冬 プレタポルテ コレクション ‒ パリ、パトリモアンヌ・シャネル蔵
©CHANEL/Roe Ethridge

たとえばリトアニア生まれのキュビズム彫刻家、ジャック・リプシッツによるシャネルの石膏に、プレタポルテコレクションのサングラスを合わせてみたり。

エジプトの葬儀⽤マスク 2世紀 -ガブリエル シャネルのアパルトマン(カンボン通り31番地)蔵 CHANEL パールネックレスとカメリア 1990年代 – パリ、パトリモアンヌ・シャネル蔵
©CHANEL/Roe Ethridge

エジプトの葬儀用マスクに、赤いリボンのカチューシャやパールネックレス、ブランドのアイコンでもあるカメリアを纏わせたカットも。

クリスタルのフラワーブーケ(製作ゴッサンス) 20世紀 -ガブリエル シャネルのアパルトマン(カンボン通り31番地)蔵 CHANEL ⻨の穂のブローチ(製作ゴッサンス) 1960年代 CHANEL ペタンクボール 2010年春夏 プレタポルテ コレクション-パリ、パトリモアンヌ・シャネル蔵
©CHANEL/Roe Ethridge

シャネルは豊穣と幸運の象徴である麦の穂モチーフを愛していました。そのブローチをクリスタルのフラワーブーケにあしらっているのも印象的。作品一つひとつからメゾンへのオマージュが感じられます。

アーティスト同士の熱いフレンドシップを感じて

ジャン コクトーからガブリエル シャネルへの⼿紙 1951年 CHANEL ブローチ 1993年春夏 プレタポルテ コレクション ‒ パリ、パトリモアンヌ・シャネル蔵
©CHANEL/Roe Ethridge
©Adagp/Comité Cocteau, Paris, 2025

また、平面のドローイングやレターに、ある小物をリンクさせて、観る者の想像力を刺激する作品も。ジャン・コクトーがシャネル宛に送った手紙には、ハートモチーフのブローチに加えて、ジャン・コクトーが詩に詠んだことでも知られる貝殻がさりげなくあしらわれています。

セム作 ガブリエル シャネルとボーイ カペルのドローイング 1913年 -パリ、パトリモアンヌ・シャネル蔵
©CHANEL/Roe Ethridge

パールネックレスを絡ませた馬のオブジェには、著名な風刺画家・セムによる、シャネルと当時の恋人、ボーイ・カペルのドローイングが。元英国軍大尉でポロ選手としても活躍したカペルとシャネルの、美しくも悲しい恋に想いを馳せる人も少なくないでしょう。

ほかにも、ピエール・ルヴェルディによる『ミシアのための詩』の手稿、サルバドール・ダリとガラによるイラスト付きの献辞本、バレエ「三角帽子」のためのパブロ ピカソによるスケッチなども。シャネルの幅広い交友関係がわかる貴重な所蔵品に、現代写真家が新たな命を吹き込んでいるのです。

シャネルを通して見つめる、芸術の未来

ロー・エスリッジの作品は、「ニューヨーク近代美術館」「テート モダン」「ボストン現代美術館」などに収蔵されています。日常の風景や静物をモチーフにしながら、「現実と虚構」「親しみやすさと違和感」など、相反するものが交差する世界を表現し続けています。今回は、彼が大切にしてきた実験精神がいかんなく発揮されているのが印象的。遺品という被写体に新たな関係性やストーリーを生み出しているのです。

女性を解放へと導いたシャネルの先見的な思想。また当時の前衛的なアーティストたちと育んだ友情。それらを雄弁に物語る品々を、現代の才能豊かなフォトグラファーが独自の感性で撮り下ろした今回のプロジェクト。これぞ、メゾンが1世紀にわたって行なってきたアーティスト支援を、さらに発展へと導くメモリアルなエキシビションになることでしょう。

伝統あるブランドによる、創造の自由を謳うコンセプチュアルな写真展。文化の審美眼を磨きにぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

展覧会情報

展覧会名:FUGUE FOR 31 RUE CAMBON: ROE ETHRIDGE AT CHANEL ARCHIVES
会期:2026年2月25日(⽔)〜4月18日(⼟)
会場:シャネル・ネクサス・ホール(東京都中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F)
時間:11:00〜19:00(最終⼊場18:30)
入場無料、予約不要
公式ウェブサイト

タイトル画像
CHANEL N°5 1924年 -パリ、パトリモアンヌ・シャネル蔵
©CHANEL/Roe Ethridge

構成・文/本庄真穂

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和樂web編集部

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