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Craft
2019.12.03

錆びた包丁を復活させるには?新品の切れ味に戻す方法を解説!

この記事を書いた人

和包丁は手入れが難しい、と言われている。

確かに、和包丁は錆びやすい。しかし、錆びたら錆びたでまた研ぎ直せばいい。実は和包丁はレストアが容易な代物で、道具さえあれば大した時間をかけずとも実用可能のレベルに戻すことができる。

突き詰めて考えたら、これほど自然環境に優しい設計の道具はない。

ボロボロになっても捨てずに自分で直す。それを可能にしている構造上の工夫が、和包丁からは見て取れるのだ。

1000円のジャンク包丁を復活させる!

インターネットというものは便利なもので、こちらが外出しなくともあらゆるものを買うことができる。

今回はヤフオクで1000円の出刃包丁を購入。もちろんこれは錆包丁で、刃もボロボロ。だが幸いなことに、ブレード本体の歪みは見当たらない。ちなみに柄はないから、別個に用意してつけてやる必要がある。この鉄屑寸前の包丁を、どうにかして使えるようにしたい。

まずは錆落とし。とりあえずサンドペーパーで表面を磨く。その作業をできるだけ念入りにやったあと、貝印のコンビ砥石で磨き上げる。この手順ではブレード表面は綺麗になるものの、刃の欠けは修正できない。

刃こぼれを起こした包丁を120番の砥石でどうにかすることは不可能ではないが、だいぶ時間がかかる。実のところ、筆者は他にも執筆の仕事を抱えているから包丁ばかりに気を取られているわけにもいかない。

そこで用意したのが、粗目の鉄工ヤスリ。これで刃こぼれを消してしまう。下の画像は、鉄工ヤスリをかけた直後の包丁。この段階で、刃は完全に取れている。素手で触れても怪我することはない。本番はここからだ。

砥石で刃をつける

先述の貝印コンビ砥石の実力は、これ以降から発揮される。

すっかり刃が落ちた状態の包丁だが、これをコンビ砥石の400番の面できっちり研削。ドロドロと粘性のある研ぎ汁が出てくる。研ぎの角度に気をつけながら、ゆっくりと長くスパンを取ってひたすら作業を続ける。さすが貝印だ! というのが筆者の感想。30分ほど頑張って作業をしたあとに包丁を見ると、先ほどとは全く違う姿になっている。上から作業前、鉄工ヤスリをかけた直後、貝印の砥石で研いだ直後の包丁である。もちろん、砥石での作業後の包丁には刃がついている。新聞紙を切れるようになった。が、この時点では何となく「ひっかかり」がある。スムーズに紙が切れているというわけではなく、ところどころでつっかえが発生しているのだ。

先ほどのコンビ砥石は400番と1000番の両面で、荒砥ぎには最高の製品だ。が、これだけではやや物足りない。そこで筆者のお気に入りである3000番&8000番の両面砥石を投入。この砥石は肥後守を研いだ時も使ったが、筆者は荒砥ぎよりも仕上げに時間をかける。片面をある程度研いだら、指でカエリを確認して反対の面を研ぐ。手順は前回の肥後守と同じだ。

今回はディスクグラインダーを使わず短時間で仕上げたので、ブレード表面の黒ずみは完全に落とし切れていない。まあ、もし支障が出るようならまた研ぎ直せばいい。下手に完璧を目指すと、あれが足りないこれが足りないとなって心労ばかりが積もってしまう。

和包丁=ナロータング

先述の通り、この出刃包丁は柄のない状態で筆者の自宅に届いた。

柄はAmazonで売られている。和包丁は基本的にナロータングで、これはブレードの取っ手部分をハンドル材に上から差し込むタイプのものだ。固定のためのピンを使っていない点がミソである。

洋包丁の場合はフルタングやコンシールドタングが多く、これは構造上ピンか接着剤(もしくは両方)でしっかり固定しなければならない。すると、レストアの際にそれを交換する技術が必要になる。はっきり言って、フルタングのハンドル材の交換は一般家庭ではほぼ不可能だ。和包丁のナロータングをバーナーであぶり、ハンドル材内部に焼き付ける方法が一般的ではある。が、ここでは火は使わず、ハンドル材の穴にパテを入れて固定する。あまり広い家ではないからバーナーを使いたくないというのもあるが、そもそもタングを挿入する穴が大きかった。

これで出刃包丁のレストア作業は終了である。

トマトで試し切り

試し切りといえば、やはりトマトだ。

トマトの極薄スライスができるか否かで、そのナイフの切れ味を判断することができる。400番、1000番、3000番、8000番と砥石にかけているのだから、トマトのスライスくらいできなければ困る、というのが筆者の正直な思惑。幸いなことに、試し切りは見事成功。これで往年の切れ味をこの包丁は取り戻すことができた。和包丁のレストアは、意外なほどに呆気ない。それは結局、和包丁の構造のシンプルさに起因する。使い捨てではなく、長年に渡って何度も修理することを前提にした設計だということがよく分かる。

道具さえ揃えば半日でできる作業だから、読者の皆様もぜひ挑戦してはいかがだろうか。

書いた人

ノンフィクションライター、グラップリング選手、刀剣評論家。各メディアでテクノロジー、ガジェット、ライフハック、ナイフ評論、スタートアップビジネス等の記事を手がける。