Craftsmanship

2023.04.28

魯山人のマルチな才能に迫る!Part2:豪放磊落、スタイリッシュ

魯山人の魅力 その二「豪放磊落(ごうほうらいらく)!」と、その三「スタイリッシュ!」を美しい写真とともにご紹介します!

▼シリーズ「魯山人の魅力」はこちらからどうぞ

魯山人の魅力 その二、豪放磊落!

信楽(しがらき)の壺は本来、紐状にした粘土を積み上げて成形する手びねり技法でつくられるものです。
それに対して魯山人は、自らが所蔵する信楽の古壺の型を石膏でとらせて、新たな壺をつくっていたといいます。
これは、陶芸における崇高なる精神性への冒瀆と受け取られても仕方がない、禁じ手です。
それでもなお魯山人は、型をとるだけでなく、口造りをちぎり取り、ヘラを入れたりして形を整え、釉(うわぐすり)も厳選して独自の作品に仕上げたのです。
そこには、美しいもので身の周りを飾りたいと願い、常識にとらわれない物づくりに励んだ魯山人の豪放磊落(ごうほうらいらく)な姿が見て取れます。
そして、そのつくり方を真似して成功した例が以後に見られないことが、魯山人のセンスがいかに傑出したものであったかを物語っています。

『信楽刻線文壺』 北大路魯山人 昭和33(1958)年 径28.7×高さ30.2㎝ 足立美術館 信楽の最良の土を用いた壺。魯山人は晩年になるに従って、土の魅力が直に表れるやきものを好んだ。型を用いてつくられたにもかかわらず、古い作のように見えるのは、口造りの削り落とし方が絶妙だから。刻まれた文字に厚くかけられた灰釉を魯山人は、古伊賀のビードロ釉に似ていることから伊賀釉と呼んでいた。

反対側はコレ!

薄文(すすきもん)が刻まれた反対側。通常見えない部分だが、正面にもなり得る、美しい存在感がある。

魯山人の魅力 その三、スタイリッシュ!

 
近代の陶芸家のなかでも魯山人は、比較的早い時期から桃山時代の陶芸の魅力に目を向けていました。
魯山人は桃山陶磁の伝統的な美に惹かれ、積極的に取り入れるようになり、織部や志野、黄瀬戸などを模した作品を数多くつくっています。
その多彩な作品群にあって、独自の美を放っているのが、土の板に脚をつけて端を反そらせ、織部の深く美しい緑の釉を用いた長皿です。
長板鉢と呼ばれるこの器は、魯山人が厨房の俎板(まないた)から着想し、オリジナルデザインとして完成させたもの。
スタイリッシュな形や色はもとより、食を介したもてなしの席において、目立ちすぎず地味すぎない存在感をたたえていて、さまざまな用途に対応できるという素晴しい長所を兼ね備えています。

『織部釉長板鉢』 北大路魯山人 昭和15(1940)年ごろ 縦25.2×横48.5×高7.8㎝ 足立美術館 織部には美濃の土という常識を打ち破り、粘りが強く加工しやすい信楽土を使用。魯山人の革新性がここにある! 平らに仕上げるべき表面を、あえて波形に削った魯山人。その上にかかった釉の濃淡の美しさといったら! 長さが50㎝近くもある大きな器だが、高さのある印象的な形の脚がついていることで、軽やかな印象に。

裏はコレ!

茶の湯の茶碗の高台のように、裏側にも見どころを設けたのは、魯山人以前の陶芸家にはなかったこと。

撮影/鍋島徳恭 構成/山本毅、吉川純(本誌)※本記事は雑誌『和樂(2020年4・5月号)』の転載です。

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山本 毅

昭和のころからファッション雑誌の編集に携わり、重ねたキャリアだけは相当なもの。長らく渋谷の隣駅(池尻大橋)近くに住んでいたが、諸事情により実家(福岡県飯塚市)に戻る。以後もライターの仕事に携わることができ、現在2拠点生活中。LCCの安さに毎回驚きながら、初めて住んでみた人形町・日本橋エリアでの生活が楽しくて仕方がない!
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