八岐大蛇(ヤマタノオロチ)は古事記や日本書紀に登場する怪物で、その名を聞いたことがある方も多いのでは? 今回はその伝説をご紹介します。
古事記や日本書紀に登場する八岐大蛇神話とは?
登場のきっかけはアマテラスとスサノオとの仲違い?
スサノオは黄泉(よみ)の国から脱出したイザナキが、穢れを浄めるために鼻を洗った時に生まれた神です。
スサノオは母(イザナミ)に会いたいと、母の故郷、根(ね)の国に行くことにします。
その前に挨拶をしようと姉の天照大神(アマテラスオオカミ)を訪ねますが、神々はスサノオが高天原(たかまがはら)に攻め込んで来たのかと勘違いし、高天原を治めるアマテラスは武装してスサノオを迎え撃ちます。
スサノオはその誤解を解こうとしますが、うまくいかず、結局追放されることとなりました。
ここで追放されたことが、その後のヤマタノオロチとスサノオ伝説のきっかけになります。
追放までいかなくとも、ちょっとした行き違いで気まずくなること、人間の世界でも時々ありますよね。そういった人間らしさが随所に垣間見えるのが、神話の面白いところです。
スサノオ、出雲国でクシナダヒメと出会う
姉、アマテラスとの不和により、スサノオは出雲国(現在の島根県)、斐伊川(ひいがわ)上流の鳥髪(とりかみ)という地に降りたちます。
そこで、泣いている老夫婦神アシナヅチとテナヅチと、少女(クシナダヒメ)に出会い、泣いている理由を尋ねると、アシナヅチは、
「娘が8人いたのに、ヤマタノオロチが毎年来て娘たちを食らってしまいました。またヤマタノオロチが来るころで、最後に残った娘、クシナダヒメが食らわれることを怖れて泣いているのです」
娘を食らうヤマタノオロチは8つの頭と目をもつ怪物
スサノオにその姿を問われたアシナヅチは、
「その目は赤かがち(ほおづき)のようで、ひとつの身体に頭が8つ、尾が8つあります。その身体にはコケやヒノキやスギが生え、その長さは8つの谷、8つの山に渡り、その腹を見ると、一面がいつも血にまみれてただれています」
と答えます。
血まみれの大蛇…、想像しただけでも恐ろしい…。
ちなみにヤマタノオロチに8という数字が出てきますが、これは、多数の意味で使われているそうです。
酒で酔わせて退治!
スサノオは、ヤマタノオロチを退治をしたらクシナダヒメと結婚することを老夫婦に求めて了承を得、老夫婦に醸(かも)した強い酒を造るよう命じます。
その後、スサノオはクシナダヒメを櫛に変えて自分の髪にさし、垣に8つの入口と桟敷(さじき)を設け、その上に酒樽を置きます。
そして、老夫婦が準備した酒を桶に入れて待っていると、山鳴りとともに、ヤマタノオロチが現れました。
良い香りの酒につられ、ヤマタノオロチは8つの桶それぞれに頭を突っ込んで飲み、酔って眠ってしまいます。
スサノオはここぞとばかりに飛びかかり、ヤマタノオロチを切り散らしました…!
英雄スサノオ誕生の瞬間です!
尾から出てきた! 天叢雲剣
倒れたヤマタノオロチの尾を切ると見事な太刀が出てきて、スサノオはそれをアマテラスに献上します。
それが、天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)、またの名を草薙(くさなぎ)の剣といわれる三種の神器のひとつで、天皇のもつ武力の象徴とされています。
ヤマタノオロチを倒した剣ではなく、中から出てきた剣のほうが評価されたのは、ちょっと不思議ですが、それも神話ゆえのことでしょうか。
ヒーローのその後
スサノオは出雲に須賀宮(すがのみや。現、須我神社)を建て、クシナダヒメと結婚します。
その時に「八雲たつ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣つくる その八重垣を」という歌を詠んだとされ、それが和歌の起源とされています。
以後、多くのこどもが誕生し、その子孫には因幡の白兎で有名な大国主神(オオクニヌシノカミ)もいます。
ヤマタノオロチは川の象徴!?
クシナダヒメは、古事記では櫛名田比売、日本書紀では奇稲田姫と記され、水田を象徴する女神とされています。
一方、これを食べようとしたヤマタノオロチは、蛇などを水神として祀る場所が多くあることから、古くから氾濫を繰り返していた斐伊川を象徴しているのではないかという説があります。
それを総合して考えると、氾濫を起こしていた川(ヤマタノオロチ)が水田(クシナダヒメ)を飲み込もうとするが、スサノオにより治水され、平和になったという話になるのですね。
ちなみに現在、地方版図柄入りナンバープレート「出雲」がヤマタノオロチのデザインで提出されていて、審査中。2020年から交付開始とのことで、どんなナンバープレートになるか楽しみです!
スサノオが暮らした!? 須我神社
住所:島根県雲南市大東町須賀260
参拝時間:8:30〜17:00
公式ホームページ
参考:「古事記」 新潮日本古典集成、「日本神話辞典」 大和書房