地獄とはどんな場所?落ちたらどうなるの?仏教の地獄を徹底解説

地獄とはどんな場所?落ちたらどうなるの?仏教の地獄を徹底解説

目次

「悪いことをすると死んだあと地獄に落ちる」と言いますが、仏教における地獄は、ほとんどの人が落ちる可能性のある世界だって知っていましたか? しかも、地獄はまるでテーマパークのように、いくつものエリアに分かれているんです…! 地獄に落ちる基準や待ち受ける苦難の数々。今回は、死ぬ前に知っておきたい「地獄の世界」をガイドします。

地獄とは何か

「地獄(じごく)」とは、この世での悪業によって導かれる死後の世界(=あの世)のこと。仏教において「地獄」は「奈落(ならく)」と同じ意味で、その語源はサンスクリット語の「ナラカ(naraka)」の訳。那落迦 (ならか) や奈落 (ならく) と音写されたことに由来しています。

ゾッとする? よく見ると怖〜い、地獄や恐怖の場面を描写した国宝「地獄草紙」国宝 一巻 紙本着色 26.5×454.7cm 12世紀・平安時代 奈良国立博物館 写真:奈良国立博物館(撮影/佐々木香輔)

日本(仏教)で伝えられている地獄とは?

輪廻転生と六道

日本の仏教における「死後の世界」のイメージの多くは、恵心院に隠遁していた源信が念仏をすすめるために書いたとされている「往生要集(おうじょうようしゅう)」(985年成立)が手本とされています。

そのベースには、仏教の教え「輪廻転生(りんねてんしょう)」があります。輪廻転生とは、生まれ変わりを繰り返すこと。仏教において、この苦の世界から抜け出すには、仏の教えを守り、善行に励まなくてはなりません。人間は、これ以上の転生がないという精神的にも肉体的にも浄化された解脱(げだつ)に達し、仏となるまで、永遠にこの世とあの世を生き続けるとされています。

その生まれ変わる世界は、現世での行いをもとに6つの行き先に分かれていて、これを「六道(ろくどう)」と呼びます。地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間(=いわゆる人間界)・天上(=いわゆる天国)。この六道のひとつが「地獄」なのです。

ゾッとする? よく見ると怖〜い、地獄や恐怖の場面を描写した国宝「六道絵」閻魔王庁図・阿鼻地獄図・等活地獄図・人道不浄相図 十五幅のうち 国宝 絹本着色 各155.5×68.0cm 13世紀・鎌倉時代 聖衆来迎寺

餓鬼道・畜生道・阿修羅道とは?

六道において、下位にあたる世界が地獄の他に以下の3つとされています。

餓鬼道(がきどう)

さまざまな鬼に生まれ変わる世界。この世界では、鬼として生きることで、地獄よりもじわじわと苦しまされます。

畜生道(ちくしょうどう)

この世で目的を達することができないまま非業の死を遂げた者や恨みを訴えようとして死んだ者が落ちる世界。
犬や豚、鶏など3〜4億種類の動物のいずれかに生まれ変わるとされています。

修羅道(しゅらどう)

須弥山(須弥山)の北、巨海の底にあるとされる世界。
常に雷鳴が轟き、戦が絶えない場所で絶えず負傷し非業の死を遂げ、また生まれ変わり、戦を続けては血を流し続けなくてはなりません。

地獄の歩き方

さて話を戻して地獄について解説していきましょう。「地獄」はこの世で悪いことをした人が落ちる世界のこと。では、その「悪いこと」とは、何を指すのでしょうか?

地獄に落ちる5つの理由 〜恐怖の審査基準〜

地獄に落ちる基準の「悪」とは、現世の法律の上での「悪」ではなく、仏教の根本的な5つの戒律を破ることをいいます。その「五戒(ごかい)」は以下の5つです。

1.「不殺生」=生き物を殺さない
2.「不妄言」=嘘をつかない
3.「不倫盗」=盗みをしない
4.「不邪婬」=享楽に溺れない
5.「不飲酒」=酒を飲まない

どれか1つを破ってもアウト(ちなみに「不殺生」は虫はもちろん鶏肉や豚肉を食べることもNG)。つまり…世の中の人のほとんどが地獄に落ちる基準の「罪」を犯しており、ほとんどの人が地獄へ行く可能性があるのです!

死後の裁き 〜地獄の審査フロー〜

そもそも現世で犯した罪は、どのように裁かれるのでしょうか。実は死んだ後に、さまざまな審査が約50日にも渡って行われるのです。

《死後7日目》
人間は亡くなると、死者の魂となり、まずは不動明王(泰広王)の前で書類審査を受けます。
書類審査では、生前の罪を全て記録した「獄録」というものをもとにして調査されるので、逃れようがありません。

《死後14日目》
死者の魂は釈迦(初江王)の裁きを受けます。
ここには、あの有名な「三途の川(さんずのかわ)」が流れており、すべての魂はここを通らなくてはなりません。渡るところは「三水の瀬」「江深の淵」「奪衣婆の橋(だつえばのはし)」の3箇所があります。「奪衣婆の橋」には大きな木があり、その下に奪衣婆と懸衣翁(けんえおう)という鬼がいて、ここを通る死者たちの着物を奪い、木の枝にかけ、そのしなり具合によって罪の重さを測ると言われています。

《死後21日目》
文殊菩薩(宋帝王)の裁きを受けます。
文殊菩薩は、猫や蛇を使って現世での邪淫の有無を調べるのですが、邪淫のある者は猫によって乳首を噛みちぎられ蛇に首を締め上げられてしまいます。

《死後28日目》
普賢菩薩(五官王)の審判を受けます。
ここでは、精巧にできた秤(はかり)に死者をひとりずつ乗せて、現世での嘘の罪を裁かれます。重罪は地獄へ落とされ、中罪は餓鬼道へ落とされ、軽い者でも畜生道に落とされます。

《死後35日目》
あの有名な閻魔大王(えんまだいおう)の登場です。
閻魔大王が死者を大きな鏡の前に立たせると、生前のあらゆる悪業が映し出されます。これを見ながら、閻魔大王は罪を裁くのですが、嘘つきはこの際に釘抜きで舌を抜かれてしまいます。
ちなみに、この裁きの日に親族や縁者が追善供養をするとその善行も鏡に映し出され、功徳の深さによって、人間界や天上界に送られることもあります。

《死後42日目》
弥勒菩薩(変生王)の裁きを受けます。

《死後49日目》
薬師如来(泰山王)の裁きを受けます。ここには6つの鳥居があり罪によって導かれるのですが、その先が六道のいずれかに通じています。ここで、来世に生まれ変わる世界の判決が下されるのです。

待ち構える8つの地獄

ここまでのハードな審査を経て、地獄行きが決定すると、さらにその罪の重さや内容によって地獄の中での行き先が決まります。地獄はひとつの世界ではなく、まるでテーマパークのようにエリアが分かれています(残念なことに楽しいアトラクションはひとつもありませんが…)。そして各エリアには「これでもか!」と言うほど恐ろしい光景と苦しみが待ち構えています。

地獄の世界は階層構造になっています。今回は上から下へと順に紹介していきます。

1.等活地獄(とうかつじごく)

地獄の世界の中で、一番浅い場所に位置するエリア。殺生をすると、ここに落ちます。この地獄に落ちると、死者同士で鉄の爪で相手を引き裂き、骨になるまで戦います。ちなみにこの「等活地獄」は、さらに細かく7つの場所に分かれています。

屍泥処(しでいじょ)」 熱い糞尿の湖に虫が這いつくばり、食いつかれ、皮を破り肉を食われる場所。
刀輪処(とうりんじょ)」 高い鉄壁の中が猛火に包まれていて、大雨のように熱鉄が降っている場所。
おう熱処」 豆を炒るように鉄の甕(かめ)で熱さられる場所。
多苦処」 縄で縛られ、杖で打たれ、険しい岩山から落とされる場所。
あん冥処」 大嵐の吹き荒れる場所。
不喜処」 大火災が昼夜燃え、炎の口をもつ鳥や犬や狐に食われる場所。
極苦処」 鉄の棒で全身を貫かれる場所。

…こんな感じで、以降も残忍な描写が続きます。

2.黒縄地獄(こくじょうじごく)

殺生、盗みをすると落ちるエリア。鬼たちによって熱鉄に臥せられ、熱鉄の縄で筋をつけられ、熱鉄の斧でその縄目の通りに切り裂かれる恐ろしい地獄。そのほかにも熱鉄の山に登らされて、落ちた下にある大釜で煮られることも。体が元に戻っては同じことが繰り返され、これが1000年も続くのです。

3.衆合地獄(しゅごうじごく)

この地獄も、子どもをいじめた者が落ちる場所や、浮気をした者が落ちる地獄など、さまざまなエリアに分かれています。
例えば、ある場所では、鬼に山の間に追い込まれ、両方の山が近づいてきて押しつぶされてしまいます。またある場所では、鉄の臼と杵で突き砕かれ、鬼やそこに集まってきた熱鉄のライオンや狼に食べられます。そして、また別の林では木の上で誘惑する美女をめがけて木を登ってしまうと葉っぱが刃物に変わり、体を引き裂かれてしまいます。

4.叫喚地獄(きょうかんじごく)

殺生、盗み、邪淫、飲酒をした者が落ちる地獄。金色の頭で目から火を出し手足が大きく、風のようなスピードで走る獄卒に追い回されます。大鍋の中に入れられて何度も煮られては、その皮から骨の髄まで食べられてしまいます。

5.大叫喚地獄(だいきょうかんじごく)

殺生、盗み、邪淫、飲酒、妄言をした者が落ちる地獄。熱鉄の鋭い針で、口も舌も何度も刺し貫かれ、抜かれてはまた生えてきます。これがなんと8000年も続くのです…。

6.灼熱地獄(しゃくねつじごく)

殺生、盗み、邪淫、飲酒、妄言、邪見(仏教の教えとは相容れない考えを説き、また実践する)をした者が落ちる地獄。頭から足まで大きな熱鉄の棒で打たれたり突かれたりして肉団子のようになり、鉄鍋で何度も炙られるのが、6000年も続く地獄です。

7.大焦熱地獄(だいしょうねつじごく)

殺生、盗み、邪淫、飲酒、妄言、邪見、犯持戒人(尼僧・童女などへの強姦)をした者が落ちる地獄。炎の刀で体の皮が剥ぎとられ、沸騰した熱鉄を体に注がれてしまいます。

8.阿鼻地獄(あびじごく)

真っ逆さまに落ち続けて2000年もかかるとされる、地獄の世界で最も深いエリア。父母殺害など特に罪の重い者が落ちる場所です。ここでは、18人の獄卒、巨大な城、刀の林、銅の犬、8本角の牛に取り囲まれ、鉄の瓦が豪雨のように降り注ぎ体を砕かれ、飢餓のために自分の体を焼いて食べる羽目になったり、巨大な鳥につかまえられて石の山に落とされたり、炎の歯を持った犬に噛み殺されたりと、幾重もの刑罰が繰り返されます。

トリミング2
「北野天神縁起絵巻」紙本着色 9巻 52×842~1211㎝ 鎌倉時代・承久元(1219)年 北野天満宮

地獄に比べるとあっさり? 浄土のイメージ

ここまで読むと地獄の鬼気迫るイメージに「絶対に行きたくない!」と心底願わずにいられなくなってしまいますが、対して『往生要集』における浄土のイメージは、非常に穏やかなものです。七宝でつくられた塔を香木がとりかこみ、常に音楽が奏でられ、光に満ち溢れ、暑くも寒くもなく喜びにひたれる世界。迫力ある地獄の描写に比べると少しあっさりとした印象です。

世界中に存在する地獄のイメージ

さて、今回解説したような「地獄」のイメージは、実は仏教の教えによるもの。ベースとなった『往生要集』も原点はインドにあるとされています。そして、この地獄と同じように「苦痛を与えられる死後の世界」の概念は、ギリシャ神話や北欧神話をはじめ、キリスト教やユダヤ教、イスラム教など、日本だけでなく世界各国に存在しています。

例えばキリスト教で地獄とは、神の教えに背く、罪を犯して悔い改めない魂がさまよい、永遠の苦を受け救われない場所とされています。
また、イスラム教で地獄とは、この世の終末に復活して受ける審判により、不信仰者や不正を行った者が永劫の罰を受ける場所とされており、罪人であっても信仰心があればやがて天国に入れられるとされているのです。

最後に、日本の仏教以外で伝えられている「死後の世界」を3つ紹介します。

1.フィリピンの死の町「シュゲットー」

フィリピンのルソン島北部にある山村では、死後、悪い霊魂はシュゲットーという岩山にある死の町へ導かれるとされています。死者は、死の町の王様に串刺しにされ餌食になります。たとえ、それを逃れられても同じような死の町を10も通過しなくてはならず、死者たちは死後の世界で勇敢に戦い続けないと昇天できないとされています。この言い伝えから、この山村では死者を弔う際に遺体と共に武器を埋葬するといわれています。

2.エジプトの地下の国「ツアト」

古代エジプトに伝わる『死者の書』によると、選ばれた霊魂が、太陽神ラーの慈しみによって天国へと導かれます。その天国では、神々の仲間入りができるうえに、パンは腐らず、ビールを永遠に好きなだけ飲むことができる。さらには自由に旅できる特典付きで、自分の墓や地上も自由に往復できるし、日が落ちると宇宙を旅することもできたんだそう(古代エジプトの「天国」は他の国々で見られないほど優しい待遇が満載!)。しかし、この天国に全ての人が行けるわけではなく、多くの霊魂は地下の国「ツアト」…すなわち地獄に行かなくてはなりません。ツアトの谷底には、毒ガスが立ち上り、救いの船に乗ることができないと蛇や鰐の餌食になってしまいます。運良く救いの船に乗られると、今度はオシリスの法廷…つまり閻魔大王のような存在に、地上での罪を審判されると言われています。ここで合格すると、天国へ向かうことができるのです。

3.古代ローマのあの世の分かれ道「ミルタの森」

古代ローマでは、死者はまずアウエルヌスと呼ばれる湖の周囲にある森林を超えて、洞窟に入り、あの世の入り口にたどりつくとされています。そこにはヒドラという水蛇と、キマエラ(キメラ)という獅子・山羊・竜を合体させた妖怪が待ち受けています。それから逃れ黒い河を渡ると、ミルタの森に到着します。そこには2つの道があり、1つ目の道はタルタロスという黒いヒドラが50の口を開いて死者を飲み込もうと待ち受けており、その先にいる復讐の女神3人から審判を受けなくてはなりません。一方の道は常夏の緑が広がるエリユンオンに通じていて、そこに行けば、音楽や舞踏を楽しむことができるのです。

地獄の世界を覗くと、死が見えてくる

「地獄=恐ろしい世界=死は怖いもの」というイメージが強くありますが、死が誰にも等しく訪れる永い眠りであることは違いありません。恐ろしい死後の世界のイメージを今回は紹介しましたが、世界中にさまざまな「死後の世界」が言い伝えられています。死神や悪魔の登場するものもあれば、なかには、陽気な世界や日常の延長のようにあの世とこの世がほとんど同じく描かれている文化もあります。死にまつわる多様な文化と物語を学び知ることで、自分にとっての「死とは?」を考え直す機会になるはずです。

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参考:水木しげる「あの世の事典」、ブリタニカ国際大百科事典

※文中の作品写真は過去の和樂webを再編集したものです。

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