寒いです。外に出たくありません。一日中ふとんかこたつで丸くなって、みかんかアイス食べていたいです。
そんな風に愚痴りたくなる、このところの寒さ。でも、厳しい寒さがあったからこそ生まれた、絶品和食材があるんだそう。
食いしん坊としては、これは見逃せない!
逆転人生みたいでぐっとくる、「あの食べ物」とは何でしょうか?
答えは、寒天!
それは寒天。
天草(てんぐさ)などの海藻を、釜茹での刑でドロドロにし、型にはめて冷ました「ところてん」が寒天の親です。
このところてんが食べ残され、さらに真冬の屋外にうち捨てられたことから、物語は動き始めます。
舞台は江戸初期の冬、京都伏見の宿・美濃屋太郎左衛門方。
参勤交代途中の大名一行がこの宿を利用した際、食べ残したところてん君を屋外に遺棄します。
夜の間に凍りつき、日が上ると溶け、やがてカラカラに干からびた、哀れなところてん。宿の主人がそれに気づき、拾い上げました。
と、なんということでしょう。自然という匠の技によって、ところてんは見事に生まれ変わっていたのです。
これが寒天誕生の物語です(詳細については諸説あり)。
万福寺の隠元和尚が「僧侶の食べ物としてこれに勝る清浄なものはない」と絶賛し、「寒天」と命名したと伝わります。現在では料理・和菓子の材料のみならず、医療用・工業用、また化粧品の材料などとしても重要な地位にある寒天。ごく身近な存在ですが、どん底から頂点まで駆け上がった、シンデレラ食材だったのですね。
そういえば、寒天って名前に「寒」の字が入っていました。今まであまり繋げて考えたことがなかったのですが、一説に「寒ざらし」された「ところてん」が語源なのだといいます。マイナスの経験がもたらした栄光の歴史が、その名前に残されていたのですね(氷点下だけに)。
凍り豆腐も製法は似ている
寒天と製法が似ているのが、凍り豆腐です。別名「高野豆腐(こうやどうふ)」「凍(し)み豆腐」「凝 (こごり) 豆腐」「一夜(いちや)豆腐」などとも言い、豆腐を四角く切って氷点下の屋外で凍らせ、解凍・乾燥させます。
高野山の僧が作ったとされることから「高野豆腐」と呼ばれますが、武田信玄や真田幸村 が携帯食として考案したという説、幸村が高野山に隠れていたときに考え出したという説もあります。
高たんぱくで消化もいい、おいしい保存食です。
主要参考文献:
・『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館
・『日本国語大辞典』小学館
・『デジタル大辞泉』小学館
・『国史大辞典』吉川弘文館