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Culture

2023.11.24

「僕と結婚できます」新郎の正装 “紋付き袴”を着てみた。阿部顕嵐が語る「あらん限りの歴史愛」vol.8

阿部顕嵐(あべあらん)さんが、大好きな日本文化について語る連載。今回は「阿部顕嵐 独演会『風姿花伝』第二期公演」について話を聞く。昨年の独演会からパワーアップさせるべく、打ち合わせをしていた真っ最中に取材を行った。日本文化のジャンルで新しい挑戦をするコーナーや“和洋折衷”セトリ、「阿部顕嵐と結婚できる」グッズも開発中だという。そして、け、け…結婚!? くわしく話を聞いてきた。

尚、聞き手はオフィスの給湯室で抹茶をたてる現代ユニット「給湯流茶道(きゅうとうりゅうさどう)」。「給湯流」と表記させていただく。

男性の正装である紋付き羽織袴(もんつきはおりはかま)を、着てみたかった

給湯流茶道(以下、給湯流):「阿部顕嵐 独演会『風姿花伝』第二期公演」公式サイトのビジュアルは、扇で顔のほとんどが隠れています。これはどんな意図があるのでしょうか?

▲「阿部顕嵐 独演会『風姿花伝』第二期公演」ビジュアル

阿部顕嵐(以下、阿部):世阿弥『風姿花伝』に出てくる「秘すれば花」(※1)がコンセプトです。

室町時代の能楽師、世阿弥が書いた秘伝書『風姿花伝』の有名なフレーズ。役者は、観客に全てを見せてはいけない。舞台の事前準備や稽古、からくりなどの情報を隠す。すると舞台本番、観客に予想外の感動を与えることができる。そうすると舞台に「花」が咲くのだ! この教えが今回の独演会キービジュアルに込められている。

阿部:ちなみにファンクラブに入っている方には、扇をはずした姿を専用サイトでお見せしています。

給湯流:なんと。今すぐファンクラブに入らねば! この写真、眉毛と瞳しか見えませんが……撮影時にはどんな衣装を着ていたのでしょうか? 

阿部:紋付羽織袴(もんつきはおりはかま)です。僕と結婚できます(笑)。

給湯流:け、結婚!?  なるほど、結婚式で新郎が着る正礼装、という意味ですね。

阿部:別に結婚がコンセプトではないのですが(笑)。僕が紋付羽織袴を着てみたかったのです。去年の独演会『風姿花伝』のビジュアルは、着流しでした。今年は去年より正装にしてみたかった。

給湯流:なるほど。でもファンの方は、脳内で阿部さんと結婚妄想できますね。うれしい(笑)!

※1:室町時代に活躍した能楽師・世阿弥が弟子に向けて書いた「風姿花伝」。役者がどうやったら長く人気を保てるか、秘伝が書かれている。その中の有名なフレーズの1つが「秘すれば花なり、秘せずば花なるべからず」だ。秘密にすれば花となり、秘密にしないと花にはならないという意味。もう少し知りたい方は、「風姿花伝」を現役・能楽師がアイドルオタクのために、わかりやすく解説してくれた記事もお読みください。https://intojapanwaraku.com/rock/culture-rock/153338/

幕末、武士の勤務服だった紋付羽織袴

今では、結婚式で新郎が着る正装でもある紋付羽織袴。

▲ハットをかぶった男性が着ているのが紋付羽織袴。明治時代はハットやブーツを合わせて和洋折衷で着こなしていたようだ。/広重『東京名所之内上野公園地桜花盛之景』,野田茂政,明治13. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1307311 (参照 2023-11-16)

羽織や袴は、江戸時代にはすでに着られていた長い歴史がある。さらに羽織には家紋が入っている。当時、相手の家紋を把握することが、礼儀だった。ちなみに家紋のルーツは平安時代にさかのぼるという。とても長い歴史があるのだ。

江戸時代、裃(かみしも)という格上の正装もあった。しかし幕末には紋付羽織袴はメジャーになり、武士の正式な勤務服となる。紋付羽織袴は、人々の間で正装だと考えられるようになったのだ。

▲男性の写真が「裃」/The “kamishimo” (the ancient ceremonial dress), anonymous, c. 1886 – in or before 1896/アムステルダム国立美術館

明治時代は、紋付羽織袴は冷遇されていた? 皇室の行事に紋付羽織袴で参加するのが禁止になった例も 

みんなが愛用していた紋付羽織袴に危機が訪れる! 明治政府が西洋化を進め、正装は燕尾服だと決めてしまったのだ。

▲明治時代、燕尾服を着た男性たち/楊洲橋本直義『内国勧業博覧会開場御式の図』,山本利兵衛,明治10. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1302982 (参照 2023-11-16)

しかし、当時の燕尾服はとても高価で一般人が買えるものではなかった。1915年大正天皇即位の祝い行事(※2)に呼ばれた地方の人が、燕尾服を持っておらず泣く泣く欠席した事例が勃発。当時の首相・大隈重信も、古来礼服として親しまれた紋付羽織袴で出席してもいいのでは、と発言した。

他にもトラブルが多発。小学校教員や県庁の役人が紋付羽織袴で出勤していたが、洋服を着るようにとの命令があった。その際に洋服が高くて買えないと不満が出て、紋付袴羽織を正装にしようという世論が高まった。ついに1900年代になると、紋付袴羽織は正装に昇格。そして、現代では結婚式で新郎が着る衣装にもなっている、というわけだ。

※2:専門用語では、饗饌(きょうぜん)

紋付袴羽織のアクスタも登場! 進化する『風姿花伝』第二期公演

給湯流:『風姿花伝』第二期公演では、会場となる明治座周辺の街のオリジナルマップも配布されると伺いました。

阿部:明治座がある日本橋・浜町は、江戸時代の下町の風情と新しいお店などが混在するおもしろい街なのです。僕がオススメするエリアをマップにしました。とくに僕が好きなのは、甘酒横丁です。老舗のお店がたくさんある通りなのですよ。

給湯流:甘酒はお好きなのですか?

阿部:はい。昔から甘酒は飲んでいます。冷蔵庫に入れておいて朝、飲むことが多いですね。甘酒は体にいいし、ブドウ糖が入っているから朝の目覚めがよくなりますし。

給湯流:体調管理、しっかりされているのですね。公演の前後に、甘酒横丁に行ってみます。また、紋付袴羽織を着た阿部さんのグッズは出たりしますか?

阿部:はい。パンフレットやアクリルスタンドで登場します。また、去年は日本舞踊に初挑戦しましたが、今年は違う日本文化のあるものも、お披露目しようと思います。楽しみにしていてください。

パンフレットやアクスタは、ファンクラブから予約が可能。ぜひご検討ください!

インタビュー・本文/給湯流茶道  写真/篠原宏明  スタイリング/阿部顕嵐(私物)

参考文献/
大丸弘・髙橋晴子「日本人のすがたと暮らし」
小山直子「フロックコートと羽織袴」
山野愛子ジェーン「和装の花嫁と列席者の装いバイブル」

阿部顕嵐 お知らせ

テレビ朝日&TELASA 恋愛ドラマシリーズ『BLドラマの主演になりました』出演決定

クランクイン編 / 地上波 : 2024年1月1日(月・祝) 深夜 0:25~1:25放送
クランクアップ編 / TELASA : 2023年12月24日(日) 朝7:00~配信スタート

公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/bl_drama/

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阿部顕嵐

阿部顕嵐 (あべ あらん) 1997年8月30日生まれ、東京都出身。 俳優としての活動を中心に、映画、ドラマ、舞台と幅広い作品に参加。 主演ドラマ『oddboys』(テレビ東京)、『BLドラマの主演になりました』(テレビ朝日&TELASA)、主演映画『ツーアウトフルベース』、主演舞台『桃源暗鬼』、PARCO劇場開場50周年記念シリーズ『ラビット・ホール』(第31回読売演劇大賞・優秀作品賞受賞)『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stage 等の作品に多数出演。 JR東海「そうだ京都、行こう。」では今年含め2年連続夏のPRキャンペーンを担当。 2024年は9月19日(木)より放送スタートのMBS 毎日放送 ドラマフィル枠『スメルズライクグリーンスピリット』にて柳田役、11月には自身初のプロデュース舞台作品 東洋空想世界『blue egoist』を東京THEATER MILANO-Za、大阪オリックス劇場にて上演する。 また、「7ORDER」のボーカルとしての音楽活動や、自身のオリジナル作品の企画プロデュースなど、活動は多岐にわたる。
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