仏像の名称は、種類と役割を表している!
寺院に安置されている仏像はそれぞれに、思わず手を合わせたくなるような厳かさが感じられます。
ですが、ひと口に仏像と言っても、その姿形はさまざま。よほどの仏像マニアでもない限り、仏様の尊格(そんかく:種類)や違いまではわからないのではないでしょうか。
そもそも仏像は、仏教の開祖である釈迦(しゃか)が世を去って500年ほどたったころ、仏教をさらに多くの人に広めようとして、釈迦の姿を像にしたことに始まります。
その後、仏教がインドから中国、東南アジア、日本へと伝わっていく過程で、古代インド神話の神々をはじめとした各地の信仰がミックスされるようになり、仏様の種類も増加。そして、仏教における関係性によって仏像は「如来」「菩薩」「明王」「天」という序列がつけられるようになりました。
ここでは、それぞれの仏像の違いと、役割や見た目の特徴をわかりやすく解説。これを知っておけば、仏像鑑賞がより深く楽しめることは請け合いです!
仏像は「如来」「菩薩」「明王」「天」に大別される
如来
悟りを開いた者を表す〝如来(にょらい)〟を代表するのは「釈迦如来」で、坐像のほかに誕生像、涅槃(ねはん)像も登場。ほかに、極楽浄土を治める「阿弥陀(あみだ)如来」、密教(みっきょう)の中心仏「大日(だいにち)如来」、現世利益(げんぜりやく)の「薬師(やくし)如来」などがつくられました。
菩薩
如来に次ぐ尊格が、悟りを求める人々を救い助ける役割を担う〝菩薩(ぼさつ)〟です。最も有名な「観音(かんのん)菩薩」は人々の求めに応じて姿を変え、「如意輪(にょいりん)観音」や「馬頭(ばとう)観音」、「千手(せんじゅ)観音」「十一面(じゅういちめん)観音」とさまざまに変化(へんげ)。
また、「地蔵(じぞう)菩薩」や「虚空蔵(こくうぞう)菩薩」のように、より身近な存在の仏様として菩薩は広く親しまれるようになりました。
明王
そして、見るからに恐ろしい表情やポーズで独自の存在感を放っているのが、密教の大日如来の化身(けしん)として仏法を護(まも)る「不動明王(ふどうみょうおう)」をはじめとした〝明王〟です。
天
さらに、古代インド神話の神々から転じて仏教の守護神となったのが〝天(てん)〟の仏像で、興福寺(こうふくじ)の「阿修羅(あしゅら)」、安倍文殊院(あべもんじゅいん)の「善財童子(ぜんざいどうじ)像」、東寺(とうじ)の「帝釈天騎象(たいしゃくてんきぞう)像」など、人気の高い仏像がそろっています。
構成/山本 毅
※本記事は雑誌『和樂(2019年4・5月号)』の記事を再編集しました。