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大人だけが知っている!「静寂の京都」

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Culture

2024.08.02

伝統を“ふらっと”楽しむ。野村万之丞が帝国ホテルのシャンパンバーで語る、新しい狂言のかたち【狂言プリンス「笑い」の教室】 vol.4

300年続く野村万蔵家で活躍する狂言師・野村万之丞(のむらまんのじょう)さん。【狂言プリンス「笑い」の教室】は、27歳の狂言師が等身大の言葉で、狂言の面白さを語る連載だ。 尚、聞き手はオフィスの給湯室で抹茶をたてる現代茶道ユニット「給湯流茶道(きゅうとうりゅうさどう)」。「給湯流」と表記させていただく。

公演後のお酒は、本当においしい

取材日は2024年7月。連日の猛暑を吹き飛ばすべく、暑気払いをしながら話をしてもらうことになった。訪れたのは、帝国ホテル 東京のシャンパンバー The Rendez-Vous AWA。バーの支配人でソムリエ・李哲三さんにおすすめのシャンパンを教えてもらう。

給湯流茶道(以下、給湯流):野村さんは普段、シャンパンを飲むことはありますか?

野村万之丞(以下、野村):あまりないですね。最近はハイボールを飲むことが多いかな。公演が終わったあとに飲むお酒は本当においしいです。逆に、お休みの日にビールなどを飲んでも全然おいしくない(笑)。

給湯流:そうなのですか。公演前はずっと集中や緊張をされているでしょうから、オフの日もお酒どころではないのかもしれませんね。

野村:シャンパンのことは何もわからないので、ぜひ教えてください。

李哲三(以下、李):シャンパンほど一杯で人を幸せにできるお酒はないと思っていますので、ぜひ野村さんにも楽しんでいただきたいです。

給湯流:毎日暑い中、次の公演にむけて稽古をがんばっておられる野村さんへ、幸せな一杯をお願いします。

李:こちらをぜひ、どうぞ。白ブドウだけで作ったタイプのシャンパンで、今の暑い夏の時期にぴったりです。スキッと爽快で抜けるようなミネラル感もありますよ。

野村:では、そちらをいただきます。

ふらっと立ち寄って楽しめる、そんな伝統芸能の形も探りたい

李:シャンパンとご一緒に、パテもいかがですか?

野村:パテ、濃厚です! おいしいなあ。すっきりしているシャンパンと合いますね。

給湯流:フィンガーフードとして、なぜパテを選んでくださったのですか?

李:パテはフランスの伝統料理なのですが、日本ではコース料理などでしかなかなか召し上がる機会がありません。しかしこちらのバーでは一品メニューとしてご注文いただけますので、気軽にパテも楽しめます。そこがバーの利点でもありますね。

野村:なるほど。

李:帝国ホテルの周りは劇場がたくさんありますから、観劇前に立ち寄って気軽にシャンパンを飲んでいただく、そんな場所をめざしていますね。

野村:いいですね。今、僕たちが企画している「ふらっと狂言会」とコンセプトが似ているかもしれません。狂言は伝統芸能ですが、難しそうと身構えずに若い人でもふらっと立ち寄れるような雰囲気の公演を目指しています。

「ふらっと狂言会」について聞いた回はこちら

給湯流:狂言も帝国ホテルも長い歴史がある。そこに敢えて、ふらっと楽しめる要素をつくると、新しい価値がうまれますね。

お酒のトラブルがテーマの狂言は、人間味があって好き

給湯流:狂言はお酒にまつわる演目が多いとききます。お酒が出てくる演目で、野村さんがとくに好きなものはありますか?

野村:とても有名で海外でもたびたび公演があるのですが、「棒縛(ぼうしばり)」が好きですね。主人の留守中にお酒を盗み飲んでしまう二人の家来がいます。そこで主人は一人は棒に、もう一人は後ろ手に、縄で家来をしばりつけて外出する……という内容です。

給湯流:お酒を盗む家来もひどいですが、ご主人様もすごい(笑)。

野村:家来はお酒を飲みたい一心で、縛られた制限の中でも悪知恵を働かせます。本当は家来が悪いはずなのですが、頑張って工夫する姿を見ていると、いつの間にか応援してしまう。「あとちょっとで飲めるぞ、頑張れ!」という気持ちになるのが、おもしろいですね。

給湯流:家来からにじみ出る、生きる力に心を動かされる!

野村:これはコロナ禍によく言っていたことなのですが……。リアルな公演に制限がかかったから、オンライン公演など新しいやり方を見出した。人間は制限がかかると、その中で工夫していく力があると、当時思いました。

給湯流:芸能の力は本当に強いですね。これからしばらく、猛暑という強烈な“制限”がかかりますが、この夏もご活躍を期待しています。今日はありがとうございました。

取材協力/帝国ホテル
撮影/今井裕治
取材・文/給湯流茶道

シャンパンバー The Rendez-Vous AWA

「THE RENDEZ-VOUS AWA」は館内外の集いの前に待ち合わせするスタート地点、および集いの後や観劇、お買い物後の余韻を味わっていただくゴール地点として、2024年3月にオープンした気軽にお立ち寄りいただける新スポットです。シャンパンをメインに、その時季のおすすめや希少価値の高い銘柄を豊富にご用意。

帝国ホテル 東京 本館1階
公式サイト

野村万之丞 お知らせ

主催公演

萬狂言 大阪公演
2024年9月14日(土)14:30開演
大槻能楽堂

ふらっと狂言会 in京都
2024年9月15日(日)13:30開演
河村能舞台

ふらっと狂言会♭4
2024年10月20日(日)11:00開演
国立能楽堂

萬狂言 秋公演
2024年10月20日(日)14:30開演
国立能楽堂

※それぞれの詳細・お申込みは公式サイトよりお願いいたします
萬狂言 公式サイト

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野村万之丞

野村万之丞 (のむら まんのじょう)1996年11月28日生まれ、東京都出身。本名、虎之介。祖父は初世野村萬(人間国宝・文化勲章受章)、父は九世野村万蔵(万蔵家九代目当主)。3歳の時「靱猿」で初舞台を踏む。修業の節目となる大曲や秘曲のうち「奈須与市語」「三番叟」「釣狐」「金岡」をすでに披く。2021年より一般の方が狂言を習える「風之会」を開設。狂言以外にも、専門学校舞台芸術学院、桜美林大学、日本体育大学の講師を務め、2018年NHK大河ドラマ「西郷どん」では明治天皇役で出演するなど、幅広く活動。
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マイクも無い時代、客に笑いを届けた狂言師のスピリットを学ぶ。阿部顕嵐が語る「あらん限りの歴史愛」vol.4

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