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2025.03.28

マルチタスクは煩悩の塊…禅語「喫茶喫飯」から日常を楽しむ工夫を考える。阿部顕嵐が語る「あらん限りの歴史愛」vol.23

さまざまな主演作品が決まり大活躍中の俳優・阿部顕嵐(あべ あらん)さん。20代の阿部さんが日本文化を自由に語るこの連載。今回は本人がプロデュースしたカレンダーの制作秘話を聞いた。

取材は2025年3月中旬に行った。 尚、聞き手はオフィスの給湯室で抹茶をたてる茶道ユニット「給湯流茶道(きゅうとうりゅうさどう)」。「給湯流」と表記させていただく。

グッズ名称に禅語をいれた理由は、ファンの人の生活にとけ込みたかったから

給湯流:2025年カレンダーのタイトルが「喫茶喫飯(きっさきっぱん)カレンダー」。喫茶喫飯……聞きなれない言葉ですが、どういう意味なのでしょうか?

阿部:その言葉、禅語なのです。

給湯流:禅語! すごいですね。お詳しいのですか?

阿部:いえいえ。毎年いっしょにカレンダーを作ってくれているスタッフのかたから名称の案をいただいて、いいなと思ってつけました。

喫茶喫飯…意訳すると「お茶を出されたときにはお茶を飲むことに集中し、ご飯を出されたならばご飯を食べることに集中しよう」という禅語。スマホを見ながらご飯を食べる、などの「ながら作業」をすると注意散漫になって、煩悩で心が乱れる原因になるというメッセージが込められている。今いただいている食物に集中し、味わいつくす事で心が豊かになるという教え。

ちなみに「喫茶喫飯」という禅語は鎌倉時代後期にできたらしい。曹洞宗の禅僧である瑩山紹瑾(けいざんじょうきん)が「私は仏法とは何かを悟りました」と師につたえ、師から「どのように悟ったのか言ってみなさい」と聞かれたときに答えた言葉だと伝わる。

給湯流:一つのことに集中しよう、といった意味ですね。ちなみに、阿部さんはお一人でご飯を召し上がるときは、どんな感じですか?

阿部:ご飯を食べながらスマホを見ないようにしています。まあ昔、母親に怒られたというのもあるのですけれど(笑)。食事中はご飯を食べることだけに集中しなさいと。だから、なるべく食べることへの集中を意識していますね。

給湯流:食事中もスマホを見てしまう人は多いと思うのですが、私も気を付けようと思います。

阿部:どうしてもセリフを覚えないといけないときは、セリフを覚えながら食べることもありますが(笑)。

給湯流:出演作品がどんどん決まり、お忙しいですものね。

阿部:何かをしながらスマホ視聴、動画のながら見といったことも僕は性格的にあまりできないですね。

給湯流:一つのことに、いつも集中しておられるのですね。

阿部:はい、一つのことしかできない。

給湯流:マルチタスクより、シングルタスクのほうが仕事も効率的に進むともききますし。素晴らしいと思います。

海外ロケではできない、日常に寄り添うカレンダー

給湯流:昨年のカレンダーは、ラスベガスでの撮影とお伺いしましたが、今回はがらっとイメージを変えたのですね。

阿部:そうなのです。去年は非日常をテーマにしていて、海外での撮影でした。でも今回は、ファンの方の日常に寄り添うカレンダーを作りたくて。だから、僕が普段食べているものを載せています。

給湯流:本当にお好きなメニューを載せているのですか?

阿部:そうですね。自分が普段食べているメニューを、制作スタッフさんにお渡しして、12か月分に配分してもらいました。たとえば、自分でよく作る生姜焼きが、カレンダーに載っています。ちなみに「おかんカレー」というメニューも載っているのですが、これはスタッフさんがつけてくれた名称です。僕は母のことを、おかんと呼んだことはないです(笑)。

レシピ通りにつくる料理は、レシピを超えられないからつまらない

給湯流:カレンダーには阿部さんがよく食べる料理が載っているということですが、レシピは載っていないのですか?

阿部:はい。食材だけ載せています。レシピ通りに作ると、レシピの味は越えられない。それではつまらないと思っています。料理して、たまに失敗することもありますけど。

給湯流:なるほど。料理は「こう作らなきゃいけない」と思いがちですが、もっと自由でいいと。

阿部:そう思います。だからこのカレンダーを見た人には、食材を参考にして自由にアレンジしてもらえたら嬉しいです。「喫茶喫飯カレンダー」を通じて、皆さんの日常にも小さな楽しみが増えたらいいなと思います。

給湯流:「レシピ通りにつくっても、レシピの味を超えられない」など、阿部さんらしい、自由な考え方がうかがえてとても面白かったです。ありがとうございました。

取材・文/給湯流茶道

阿部顕嵐 お知らせ

「喫茶喫飯カレンダー」二◯二五年四月始まり 二◯二六年三月終わり
2025年3月31日(月)発売

「心豊かになるカレンダー」をテーマに、日本の四季や旬な食材を使って、美味しいごはんを作りました。一緒に食卓を囲んでいる様な、共に暮らしている様なシチュエーション全12種類を載せています。
日々を彩るアイテムの1つとして、ぜひ楽しんで下さい。
くわしくはこちら

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阿部顕嵐

阿部顕嵐 (あべ あらん) 1997年8月30日生まれ、東京都出身。 俳優としての活動を中心に、映画、ドラマ、舞台と幅広い作品に参加。 主演ドラマ『oddboys』(テレビ東京)、『BLドラマの主演になりました』(テレビ朝日&TELASA)、主演映画『ツーアウトフルベース』、主演舞台『桃源暗鬼』、PARCO劇場開場50周年記念シリーズ『ラビット・ホール』(第31回読売演劇大賞・優秀作品賞受賞)『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stage 等の作品に多数出演。 JR東海「そうだ京都、行こう。」では今年含め2年連続夏のPRキャンペーンを担当。 2024年は9月19日(木)より放送スタートのMBS 毎日放送 ドラマフィル枠『スメルズライクグリーンスピリット』にて柳田役、11月には自身初のプロデュース舞台作品 東洋空想世界『blue egoist』を東京THEATER MILANO-Za、大阪オリックス劇場にて上演する。 また、「7ORDER」のボーカルとしての音楽活動や、自身のオリジナル作品の企画プロデュースなど、活動は多岐にわたる。
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