盆栽について学んだ前回の記事はこちら
木の“死んだ部分”から、侘び寂びを表現…盆栽の奥深さを巨匠・小林國雄さんに聞いてみた。
壮大な海や山の風景に見立てる。水石の独特な文化
阿部: 僕は昔から、ラピスラズリなど外国の石が好きです。ラピスラズリのアクセサリーをつけたりしています。

小林: それは「美石(びせき)」と呼ばれるものです。宝石としての美しさがありますね。色も、青や赤などカラフル。でも、水石の世界で好まれるのは黒です。
阿部: 黒ですか。
小林: 千利休も黒い茶碗を好んだという言い伝えがありますよね。水石も侘び寂びの感覚を大事にしています。

阿部: この水石は、どのように見て楽しめばよいでしょうか?
小林: 水石は、自然石をただ見るだけではありません。形、色、質に注目しながら、そこに想像力を働かせて、山に見立てたり、海の広がりを感じたりして楽しむものです。たとえばこの石は、「遠山石(とおやまいし)」と呼ばれます。左の部分が岬に見えて、右奥に霞んだ遠山が浮かんでいるように見えるでしょう?
阿部: 本当だ、想像すると風景が広がってきます。そして不等辺三角形のような形もいいですね。
小林:水石を鉢に置くにあたって、その配置を左右対称にしないことが重要です。どちらかに寄せたりして余白を楽しむのが水石の魅力です。

阿部:なるほど。
小林: ほかにも「姿石(すがたいし)」と呼ばれるもので、牛や観音様に見立てる石もあります。
阿部:削ったり磨いたりして、形を調整することもありますか?
小林:それはしないですね。人の手が加わってしまうと価値が下がる。自然がつくり出した姿を大切にします。
水石は、“育てる”のに最低でも50年はかかる? 「養石」と呼ばれる独特の技術
阿部: この水石、どれくらい前のものなのですか?

小林: こちらはもう50年以上「養った」石です。「養石」といって、石を屋外に置いて雨風や太陽にさらし、時間をかけて味わいを深めていくのです。
阿部: すごい…。石を育てるという感覚があるのですね。どうやって石を仕入れるのですか?
小林: 川で拾うのですよ。ほかにも、頻繁にオークションをやっているのでそこで探します。

阿部:川で拾った直後は、石はどのような状態なのでしょう?
小林:石と石がぶつかり、磨かれたりして光っている場合もあります。そこから最低でも50年は養石しないと、床の間に飾れるようなものにはなりませんね。
阿部:50年…長い!
小林:石を拾ってきたら、まず愛でる。どんな風に見立てればいいか、いろいろな角度から見てください。そして手で撫でることも大切です。
阿部:撫でると育つ……生き物みたいですね。
小林:手で撫でることで手油がしみ込んで、さらに味が出てきます。川に落ちていた石が、年月を重ねて芸術作品になるのですよ。面白いでしょう?
阿部:素敵です。
信長も政宗も水石を所持していた! 来歴で価値が変わる水石のおもしろさ
小林:誰が持っていたかという「由緒」も、水石にとって大切な価値のひとつです。

阿部:そうなのですね。
小林: はい、織田信長や伊達政宗がもっていたという水石もあるのですよ。
阿部:信長も石をもっていたのですか。知らなかった。
小林:天皇陛下が所蔵されていたものもありますよ。

阿部: ただの石じゃなくて、水石は歴史を背負った存在なのですね。
小林: そうです。かつては神として祀られていたこともありました。寺で長く所持している水石もあります。水石に風景や時間、物語を感じること。そこに、日本文化の奥深さがあります。阿部さんも、ぜひ水石を育ててみてください。
阿部:ありがとうございます。盆栽から始めるか、水石から始めるか、迷っています(笑)。
対談が終わり小林さんがお仕事に戻られた後も、BONSAI美術館で販売されている盆栽を長時間鑑賞した阿部さん。小林さんのお弟子さんからもじっくり話を聞き、盆栽を購入されたそうです。阿部家で盆栽はどのような成長をとげるのか? いつかぜひお披露目いただきたいですね。
写真/篠原宏明
インタビュー・文/給湯流茶道
春花園BONSAI美術館
小林國雄さんの仕事場、兼、美術館。小林さんのたくさんの作品がみられ、その場で盆栽を購入もできる。年間の来場者は約5万人。なんと、その9割は海外からのかただという。屋内には水石もたくさん置かれています。ぜひ訪れてみてください!
https://kunio-kobayashi.com/museum.html
阿部顕嵐 お知らせ
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