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2025.08.15

姫路城の幽霊伝説、世界を驚かせた信徒発見、消えた国宝…【びっくり! 国宝事件簿 その2】

びっくり!国宝事件簿の後編は、安土桃山(あづちももやま)時代以後の国宝に関する、「びっくり!」な事件簿。天下人・秀吉にあてた手紙から、お城の謎や教会の奇跡、被災した屛風など、国宝の意外な背景に迫ります!

国宝事件簿6
欧州から来た国宝の手紙の悲劇とは?

→豊臣秀吉へのお願いはかなわず…

ヨーロッパの文書で国宝の『ポルトガル国印度副王信書(こくいんどふくおうしんしょ)』(妙法院所蔵)。
重要文書に用いる羊皮紙(ようひし)に文章が書かれ、周りが鮮やかな色彩の細密画で飾られた手紙です。
豊臣秀吉へあてた手紙の内容は、天下統一を祝い、宣教師たちの活動の保護を願ったもの。
この手紙は「天正遣欧使節(てんしょうけんおうしせつ)」を発案した宣教師ヴァリニャーノがインドのゴアを訪れた際に、ポルトガル国印度副王から託され、豊臣秀吉へ届けられました。
しかし、秀吉はキリスト教の禁止を解かず、願いはかなわなかったのです。

1588年4月付で豊臣秀吉あてに書かれた『ポルトガル国印度副王信書』には、キリスト教徒の切なる願いが綴られていたが…。

国宝事件簿7
国宝建造物で起こった、世界を驚かせた奇跡とは!?

→「大浦天主堂」の〝信徒発見〟にローマ教皇もびっくり!!

フランス人のフューレ神父らが設計し、プティジャン神父の応援により幕末の元治元(1864)年に竣工した「大浦天主堂(おおうらてんしゅどう)」は、現存する日本最古の教会。
また、国宝に指定されている唯一の教会です。
当時、禁教令によってキリスト教は禁じられていました。
それが、竣工翌年、長崎市浦上地区の村民がプティジャン神父を訪ねてきて、ひそかにカトリックの信仰を守り続けてきたことを告白したのです。
これが、ローマ教皇を感激させた「信徒発見」。
キリスト教史における奇跡のひとつとして、世界にこのニュースが発信されました

国宝事件簿8
あの美しい姫路城に幽霊が出るって!?

→城内に『播州皿屋敷』のお菊さんの井戸がある!

夜な夜な井戸から幽霊が現れ、「1枚2枚…」と皿を数える、というと『番町皿屋敷(ばんちょうさらやしき)』が有名ですが、姫路城(ひめじじょう)には同様の伝説『播州(ばんしゅう)皿屋敷』が残ります。
室町時代のお家乗っ取り事件で、重臣が召使として潜入させたスパイがお菊という女性。
その後、お菊は首謀者側に殺され井戸に捨てられます。
そのきっかけが、10枚ぞろいの家宝の皿を、お菊がなくしたと濡れ衣を着せられたこと。
お菊の亡霊が現れたという井戸は、今も姫路城にあるのです。
こんな話が語り継がれるのも、姫路城の美しさゆえでしょうか。

国宝事件簿9
焼失してしまっても国宝のまま?

→『花下遊楽図屛風』がその代表例!

京都で始まった狩野派(かのうは)は、徳川幕府の成立とともに幕府御用絵師となり、江戸へ進出。
その先駆けが、天才と称された狩野永徳(えいとく)の末弟・長信(ながのぶ)でした。
代表作『花下遊楽図屛風』は、右隻中央部の3・4扇(せん)が大正12(1923)年、関東大震災の際に残念ながら焼失。
それでも、国宝であることに変わりはありませんでした。
幸いにも、明治時代に撮影した白黒のガラス乾板写真が残っていたため、近年、デジタル技術による復元が成功。
その高精細複製品では、もともとの美しい色彩が再現されています。

これが噂の屛風。『花下遊楽図屛風(かかゆうらくずびょうぶ)』 狩野長信 江戸時代・17世紀 東京国立博物館 出典:ColBase (https://colbase.nich.go.jp)

国宝事件簿10
松本城は傾いているって本当?

→本当です。理由は農民の呪いという説が…

城には、さまざまな伝説が残っています。
黒い外壁で知られる長野県の松本城も同様。そのひとつをご紹介します。
江戸時代前半、重税に苦しんでいた農民は、庄屋の多田加助(ただかすけ)を中心に約1万人もが松本城に集結。
この一揆で28人も処刑されたのですが、加助は磔(はりつけ)にされ、最期に天守を睨んで絶叫。
その瞬間、城が傾いたというのです。
実際に松本城では、20世紀初頭に天守の傾きを直す工事が行われていますが、これは恨みとは関係なく、天守台の中の支持柱が腐食したため。
伝説も明治時代に語られるようになったものです。

16世紀末、石川数正(いしかわかずまさ)、康長(やすなが)親子が主に整備した松本城は、黒漆を用いた外壁が特徴的。今も10もの伝説が語り継がれている。

シリーズ第一回はこちら
なぜ鎌倉の大仏は外にいるの? 25円の五重塔&幻の茶碗も! 【びっくり! 国宝事件簿 その1】

イラスト/田渕周平 構成/山本 毅、後藤淳美(本誌)
※本記事は雑誌『和樂(2025年6・7月号)』の再編集による転載です。

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和樂web編集部

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