2019年10月12日からBunkamura ザ・ミュージアムで「建国300年 ヨーロッパの宝石箱 リヒテンシュタイン侯爵家の至宝展」が始まりました。世界で唯一、侯爵家=君主の家名が国名となっている、スイスとオーストリアにはさまれた小さな国・リヒテンシュタイン。「美しい美術品を集めることにこそお金を使うべき」という家訓を持つ一族が統治するこの国は300年の歴史の中で、数々の美術品を所蔵し、個人としては世界屈指の規模を誇っています。そのコレクションの華麗さは「宝石箱」とも例えられているのですよ。
今回の展覧会では選りすぐりの約130点を特別展示!ルーベンスやヤン・ブリューゲル(父)、クラーナハ(父)をはじめとした名画家による油彩画や、貴族の生活を感じさせる陶磁器など、宮廷の美を感じさせる優雅な作品たちは見逃し厳禁!ですよ。
リヒテンシュタイン侯爵家ってどんな人たち?
300年続く歴史ある君主の家なのはわかったけど、リヒテンシュタイン侯爵家って何をしているの?と思われるかもしれません。
ハプスブルグ家に仕えていた貴族は豊富な財源で領地を購入し、支配地を拡大。1608年(日本で言うと、江戸幕府が出来たあたり)に侯爵の地位をカール1世侯が獲得しました。
長い歴史の混沌の中で領地を失い、一時期は豊富なコレクションも一部手放すなど、侯爵家は波乱万丈の中を生き抜いてきました。そんな中、疲れを癒すために代々芸術を愛してきたリヒテンシュタイン侯爵家。その歴史は展覧会の入り口にある侯爵家の肖像画たちから見ることができます。
この美しいブロンドの少年は、リヒテンシュタイン侯フランツ1世。なんとこの時わずか8歳!既に肖像画が描かれているなんて、いかに芸術と密接だったのかよくわかりますね。第1章では貴族の生活がどんなものだったかを描いた絵画も飾られています。たっぷりしたレース、ビロードの服、つややかな馬……優雅な雰囲気にうっとりしてしまいますよ♪
永遠に咲き誇る!静物画や磁器……花園のような展覧会♡
今回の展覧会のキービジュアルにはヴァルトミュラーの静物画が使われてます。展覧会のキーワードのひとつが「花」。会場には油彩画や陶板画、磁器に至るまで、花の美しさがそこかしこに溢れています!
ヴァルトミュラー《磁器の花瓶の花、燭台、銀器》
黒という珍しい背景を持つこの静物画はピンクと白のバラがとても印象的です。磨き抜かれた銀器の光や、置かれたものが映り込む大理石のテーブルのツヤ、なめらなピンクのリボン。正確な描写と、各々の魅力を引き出す質感が見事です!実物は意外と小ぶりな絵ですが、その奥行きや華やかさには目をみはります。
ヨーゼフ・ガイア―《金地花文クラテル形大花瓶》
「クラテル」とは古代ギリシアで使われていた大型の甕(かめ)のこと。持ち手がついていて、ワインや水を混ぜるのに使われてたそうですよ。アイリスやスウィートピーが鮮やかに描かれていて、台座にも様式化された植物模様が。
品格があり、豪華な意匠が施されています。間近で見るときらびやか!花瓶というよりは、それ自体が装飾の意味があったのでしょうね。
優雅なティータイムに思いを馳せる!花の咲いた美しい陶磁器たち
リヒテンシュタインのコレクションには、ウィーンの磁器工房で作られた美しい磁器作品の数々も。ティーカップや大皿、コーヒーセットなど、実際に使っていたの?と驚く、豪華なものがたくさんあります。職人によって描かれた繊細な花の、永遠に咲き誇る美しさはまばゆいほどです。
貴族に愛でられた磁器の優美さをたっぷりと味わってくださいね。
ウィーン釜・デュ・バキエ時代《カップと受皿<トランブルーズ>》」
<トランブルーズ>とはホットショコラ(チョコレート)を飲むために考案されたカップ。受け皿に枠がつき、転がらないようになっています。貴族は、朝ゆったりとベッドで一杯のショコラを飲むという習慣があったようで、当時大変高価だったチョコレートをこぼさない工夫なんだとか。ただ、このカップは本体に穴が開いており、ショコラを入れると当然こぼれてしまいます。なので、別の用途があったのではないか、とされています。
白い器に花々のコントラストが美しい一品、飾られているだけでもきっと素敵だったことでしょう!
ウィーン窯《金地花文ティーセット》」
アントン・デーリンク、イグナーツ・ヴィルトマン作の豪華なティーセット。侯爵家のティータイムに使われていました。大きなポットに熱湯やコーヒーが入り、小さいポットには温められたミルクが入っていたのだとか。
12客のティーカップ、受け皿含め、すべて絵柄が違うという豪華さ!白、青、紫などで雪割草が描かれていて、カップを眺めることが既に「芸術鑑賞」だったと思わせます。
こんなティーカップでお茶をしてみたい、とうっとりしてしまいますよ!
和樂的にははずせない!?アジアとの美の融合
磁器の部屋には、有田窯、景徳鎮窯など、アジアから輸入された壷や香炉も多数飾られています。オリエンタルでありながら、どこかほかのコレクションとも馴染む美しさがありました。興味深いのは、輸入されたのちに、金属装飾が施されていること。
ヨーロッパ好みの華やかさに彩られたアジアの磁器は、確かにここでしか見られない貴重なものですよ!
もちろん、ヨーロッパの芸術を語るうえで欠かせない宗教画、神話画、歴史画もたっぷりと展示。独特な切り口で描かれたものも多く、リヒテンシュタイン侯爵家の目利き力を感じさせてくれます。
また、アルプスの雄大な山々や市井の生活を描いた風景画も多数展示。ヤン・ブリューゲル(父)などが筆を取っています。普段は都市部で仕事をしていた侯爵家の心の慰めになっていたのかもしれません。
音声ガイドは小泉孝太郎さん!なんと優雅なBGMつき
もちろん音声ガイドの貸し出しもあります。今回は小泉孝太郎さんがナビゲーター。元々美術館に行くのが好きだという小泉さんの愛情あふれるガイドと共に、展覧会をより一層楽しむことができますよ!
なんと今回のイヤホンガイドでは優雅なクラシック音楽も聴けてしまいます。リヒテンシュタイン侯爵家のサロンにいるような気分でうっとりするのも◎
ロマンティックなコレクションに酔いしれて!
どこをとっても美しいコレクション!色とりどりの花や磁器が、少女漫画の世界に迷い込んだような気分にさせてくれます。リヒテンシュタイン侯爵家がウィーンに持つ美しい宮殿「夏の離宮」に思いを馳せてみるのも一興かもしれません!
展覧会名:建国300年ヨーロッパの宝石箱リヒテンシュタイン 侯爵家の至宝展
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
会期:2019年10月12日(土)~2019年12月23日(月)
*10/15(火)、11/12(火)、12/3(火)のみ休館
開館時間10:00~18:00(入館は17:30まで)
※金・土は21:00まで(入館は20:30まで)
公式HP