えっ関西随一の淡水魚水族館は教会?!花園教会が500匹以上展示している理由

えっ関西随一の淡水魚水族館は教会?!花園教会が500匹以上展示している理由

「京都に珍しい水族館がある」そう、人づてで聞いた。
なんでも、教会なのに水族館があるのだとか。飼えない魚を引き取っているという。「やっぱり、教会なんだねえ」「住宅地に水族館があるんだって」。さらに、2018年は「国連の生物多様性アクション2018に入賞」という話題性も備わった。メディアでの露出も多くなり、その紹介の仕方も概ね「珍しい」や「すごい」が多数。前評判は、ざっとこんな感じだ。

その噂だけを頼りに、今回、取材を申し込んだ。知られざる水族館の全貌と水族館開設までの経緯を伝えられればと考えていたが、やはり、今回も裏切られた。もちろん、よい意味でだ。

本当にスゴいのは、水族館の運営でも、国連の生物多様性アクションの入賞でもない。水族館をきっかけに、自然と子どもたちが育ち、夢を持つ。いつしか水族館から人の輪が広がっていくということだ。今回は、そんな花園教会のスゴさに迫りたい。

花園教会ってどんなところ?

京都駅からJR山陰本線で5つ目の駅の「花園」。下りて10分ほど歩いたところに、花園キリスト教会(京都市右京区)がある。

住宅街の一角にある花園キリスト教会

住宅街の一角にある白い建物。看板がないと分からないほど。その1階の部分が、今回の取材先である「花園教会水族館」だ。

花園教会の1階にある水族館

「ここは環境省と農林水産省から認定を受けている水族館です」
花園教会水族館を運営している牧師の篠澤俊一郎(しのざわしゅんいちろう)氏が話してくれた。

牧師の篠澤俊一郎氏

もともと、趣味で教会の玄関に水槽を置いたことがきっかけなのだとか。生きている魚を見たことがないと呟いた少年に、心底驚いたという。子どもの世界観を広げたいと、少しずつ水槽を増やし、珍しい魚を仕入れて飼い始めた。東日本大震災時の影響で魚を手放す人も多く、引き取りながら種類が増えていったそうだ。そうして結果的に、水族館として開放し、子どもがお金がなくても一人で通えるよう、無料の一般公開を2014年12月から始めたという。

入り口にある「CHURCH AQUARIUM」の看板

現在、180種類500匹以上が水族展示され、関西随一の淡水魚水族館なのだという。じつは、うち99%が外国産の生き物である「外来種」という風変わりな水族館でもあるのだ。

珍しい動物とも触れ合える?

さて、花園教会の水族館のみどころの一つが動物と触れ合えること。水族館の人気者のゾウガメやトカゲ、魚など多くの生物を間近で見て感じることができる。

フトアゴヒゲトカゲを触ってみた

「ここまで人慣れするのは珍しい。小さい頃から飼っているので人慣れしてるんです」

じっとしているフトアゴヒゲトカゲ

確かに大人しい。篠澤氏が触っても嫌がらずにされるがままの状態だ。一見彫像のような見事なトカゲ。オーストラリア原産のフトアゴヒゲトカゲといい、日本で一世を風靡したエリマキトカゲの仲間でもある。通常は危険を察知すると顎を広げて威嚇するらしいが、篠澤氏曰く、何をしても怒らないほど慣れているのだという。

脱皮中で皮を取ってもらっている様子

「信頼関係です」
実際に、私も触らせてもらった。最初について出た言葉が「あっ。温かい」。目で見ていると冷たい置物のようだが、触ると皮膚が硬く、それでいて温かい。未知なるものへの恐怖はあったが、触ることで「生きている」ということが実感できる。

「世話をしたり、触れたりすることで、ちゃんと接していかないと信頼関係をもらえないよっていうことが分かる。こういうことを通して、子どもたちが、人間に対してもそうなんだと分かる。いろんなことにリンクしてくるんです」

頭で教えるよりは感じてもらう、実践が一番だと篠澤氏が説明してくれた。

信頼関係構築中のグリーンイグアナ

一方で、まだ来て8か月のグリーンイグアナには注意の張り紙がされている。

張り紙での注意

グリーンイグアナ

珍しい品種で、現在外来種で問題となっているため、展示したのだとか。インターネットを見ても「どうやったら飼い方がラクか」というものが多いという。しかし、ラクに飼えば、やはり信頼関係は成り立たない。

「毎日声かけして、話して。『元気?』『おはよう』とか。そういうのを続けていると、1年後には感じが変わります」

尻尾の攻撃をやめて大人しく目を閉じている様子

まだ警戒心が強いという。確かに最初にゲージから取り出したときは、尻尾でピシピシと攻撃をしていたが、暫くすると目を閉じて大人しくなった。毎日餌をやって掃除していると、この人は餌をくれる、掃除をしてくれる人だと分かるのだとか。

「人間は、動物を知った気でいるけれど、じつは人間も分かっていないことが多いんですよね」
色々世話をし、触れているからこそ分かることなのだろう。

犬のように甘えるゾウガメ?

そして、この水族館で一番人気なのが、このゾウガメ。

ゾウガメ

飼い主が高齢で飼えなくなって2年前に引き取ったという。ゾウガメの寿命が平均で80年。現在40年が経過しているこのゾウガメは、チンゲンサイが大の好物。餌をやるときも、絶対に指を噛まないのだとか
「あくびもするし、おならもする。いびきもかく。おっさんみたいな感じ」と篠澤氏は笑う。

餌をねだっているゾウガメ

私が一番驚いたのが、このゾウガメの甘えた仕草だ。
愛情を与えたらこんな感じになるのだろうか。犬のようにかまってほしいと駄々をこねる。足を上げて、ちょいちょいと篠澤氏の足を触っているところをみて、パラレルワールドにいる気分になる。

じつは関西随一の淡水魚水族館

確かに一般の水族館と比べても、通路も人が一人通れるほど。パッと見るだけなら5分で終わるほどの広さだ。しかし、じつは関西で随一の淡水魚水族館であり、その展示の6割が引き取った生き物だという特徴がある。また、小さい水族館ながらも、多くの種類を展示しているのも珍しい。中には希少種もあるのだとか。

様々な水槽が置かれている館内

「つい最近、さかなくんが取材で来られて、こんな大きなデンキナマズは見たことがないって驚かれてました」

中にはサイズが大きいものもあって見応え十分だ。また、淡水のフグやエイなど種類が珍しいものも展示している。

引き取った淡水のフグ

購入した淡水のエイ

一般には凶暴というイメージが強いピラニアもいる。
「じつは、ピラニアといっても40種類いるんです。もともとピラニアは大人しい。人間を襲うことはないが、アマゾンだと川が汚くて見えず、バチャバチャと音を立てると、溺れた動物と勘違いして襲われる」

こちらが、本能を刺激してしまうのだとか。歯はナイフになるほど鋭い。一方で同じピラニアでも、このダイヤモンドイエローピラニアは群れずに一匹狼型。餌も人工のものではなく、生きた金魚しか食べないのだという。

ダイヤモンドイエローピラニア

距離が近いからこそ、こうして生態の説明を受けられることも貴重な体験となる。

危険生物ってホントは何なの?

「最初はワニガメって聞いたんです」
飼えないから引き取ってほしいとの依頼で、実際に行くと「カミツキガメ」だったという。じつは、カミツキガメは危険な外来生物とされ、一般では飼えない。引き取らなければ殺処分となるが、30年以上飼われていてそれも忍びない。どうすればと悩み、環境省に問い合わせをすると、「水族館であれば飼育が可能」との返答があったという。客観的資料を揃え、最終的には水族館と認められたという経緯がある。現在は、こうして展示をしながら、生態系の問題などを考えてもらうのだそうだ。

厳重に施錠されているカミツキガメ

ちなみにカミツキガメは、大人が歯を食いしばるほどの力で噛みつくので、厳重に施錠して管理している。子どもの指くらいは吹っ飛ぶほどの威力だという。

指先のちぎれた手袋

一般のカメは、裏返すと腹甲が長方形の形をしている。しかし、カミツキガメはご覧の通りのひし形。つまり、周りが全部筋肉で、走るのが早く力強いのだとか。爪は非常に鋭く、皮膚が避けるほど。これで魚や鳥を引き裂いて食べるのだ。また、湖岸に穴を掘って巣を作るので、モグラのような足をしている。この尻尾を支柱にして少しの高さの塀ならば乗り越えることができるのも驚きだ。

カミツキガメ

外来生物といっても、自ら日本に来たわけではない。映画「ガメラ」の流行で、そのミニチュアとして外国から連れてこられたのが、この「カミツキガメ」だ。小さい頃は噛んでも痛くないし、何しろ格好いい。本来ならば、フォルムが似ているワニガメの方が安全なのだが、当時はワニガメ1万円程度に対して、カミツキガメは2,000円程度。そのため、カミツキガメを飼う人が続出した。

もともとワニガメは、疑似餌を持っているので、勝手に生物が寄ってくる。しかし、カミツキガメには疑似餌がないため、自分で襲って食べに行くしかない。ただ、本来備わっている構造の違いなのだが、カミツキガメは凶暴だからといって、成長すると捨ててしまう人もいるという。

水族館で簡単な説明が行われている

世間では「外来種=悪」というイメージが出来上がっている。
「外来種って言われると、思考が停止してしまう。説明が肝心なんです。例えば、日本のワカメはオーストラリアやニュージーランドでは侵略的外来種と認定されています。現地の生態系に深刻な被害や水産業に被害が出る恐れがあるからです」

子どもたちには、どうして外来種と呼ばれるのか、何が問題となるのかをしっかりと説明する。「なぜ?」ということが大事だと篠澤氏は話す。

また、水族館の展示の中には、ヒアリの標本もある。

ヒアリ研究の第一人者が来られた時に、標本を置いてくれたという。ヒアリは、人間や農林水産業に被害を及ぼすから「侵略的外来種」として規制されている。ただ、一番の損失は経済的損失なのだとか。それさえも知らない人もいる。
「アメリカではヒアリが有名過ぎて、トランスフォーマーのキャラクターにさえなっている。日本では、ようやく認知度が高くなってきたところ。何が問題なのかを見極めてほしい」

ヒアリの標本

そうしていつかは、ここに来ている子どもたちから研究者が出てくれればと話してくれた。

「『悪』というと多分、研究しないと思う。どうしてそうなるのかと考えると、その謎が楽しみになる。将来、ここに来ている子どもたちから研究者が出るのが僕の夢です。可能性を信じることができたら、より翼を広げられるんじゃないかと」

「どうして?」という問いかけ

だから、このような問いかけを水族館の展示の中で行っているのだ。

自然に「人が育つ」花園教会の秘密

花園教会では、様々な取り組みが行われ、数多くの経験ができる。これが、自然と人が育つことに繋がっている。

毎日世話をすると、子どもたちの表情が変わるのだそうだ。生き物が好きになるし、自分から行動を起こそうとする。他にも、なかなかできない経験ができる。例えば、魚が死ぬと、皆でさばいて食べたり、標本にしたりするのだとか。

「毎日食べている魚も基本的に切り身しか見ていない。だから、本当は命があるということを分かってもらうために、さばきます。そうして命を頂くことを分かってもらうんです」

死んだ魚を標本にして飾っている

標本にする場合は、塩を振って水分を取り、内臓を取り出して乾かす。それを繰り返して、アクリルスプレーをかけて完成だ。大体1ヵ月かかるのだとか。学校でもできないような取り組みだ。

そうして、様々な経験をするうちに、子どもたちが自分で考えて動くことを始めるという。こちらの水族館のキャラクターも子どもからの提案だ。

花園教会水族館公式キャラクター

国連の方でも了解を得て、現在は国連生物多様性キャラクター応援団として任命を受けている。もちろん、提案した子どものモチベーションも上がって、今ではデザイン学科で学んでいるのだとか。

こちらは、中学生の女の子がユーチューブを見ながら作った「恐竜」の折り紙。完成品を見て、それなら来館してくれた子どもに渡そうということになったという。

こどもが自分で考えて折った「恐竜」の折り紙

実際に、この水族館も当初から変わりつつある。ここに来て世話をする子どもたちが、自分で勉強して水族館をガイドするようになったのだ。自然と良い循環ができている。

「子どもたちが活躍できる場を作っている。夢が実現できるのなら利用してほしい」

そのためには、この花園教会水族館を維持していかなければならない。じつは、花園教会は、現在、クラウドファンディングに挑戦している。これまでにも2016年にクラウドファンディングで、313万円が集まった実績がある。この時は、駐車場を水族館仕様にして2016年10月30日にリニューアルオープンし、現在の状態にできたのだとか。今回の目標金額は272万7,000円。水族館の電気代をまかなうためだ。
それ以外にも、寄付を募っている。というのも、この水族館は入場無料で運営しているからだ。全国から、物品での寄付も多く、頂いたものは花園教会水族館のクイズやポイントカードの景品として、有難く使わせてもらっているそうだ。

全国から寄付された品

非常に明るく朗らかな人柄だが、じつは、自分自身のことを「20代前半は超ネガティブだった」と話す篠澤氏。実際に、心と体のバランスを崩して人間不信になったこともあるのだとか。しかし、海外でのボランティア、国際支援、東日本大震災復興など、これまでの様々な経験を通して、自分が思った世界とは違う世界があることを知ったという。そうして、「自分の世界は狭い」ということに気付いたのだそうだ。

「子どもって、違う学域にも行けないし、今の時代、レジャーにもお金を払わないといけない。けれど、お金が払えない子どもは、そんな経験ができないんです。そうなると、結果的に視野が狭くなる。日本でも相対的貧困はあります。そういう子どもたちに、色々な物をみせていきたいんです。様々な世界観や価値観を持てば、犯罪や非行も減るだろうし、引きこもりもなくなる。色々なところに繋がると思う」

いきいきと話す篠澤氏の表情が非常に印象的だった。自分が忘れている何かを思い出させてくれるそんな気がした。

確かに教会が運営する水族館は前代未聞だろう。非常にレアなケースだ。しかし、あくまで水族館は「きっかけ」にすぎない。どんな環境においても、一人でも多くの子どもが、視野を広げ、その可能性を信じて羽ばたけること。花園教会水族館はその実現に向けて動き出している。

「色々な経験をすることで、子どもの夢が広がるんです。例えば、ここで野菜を切っていて料理人になりたいとか、水族館で働きたい、デザイナーになりたいって、色々な夢が出てくるんです」

ちなみについ先日、花園教会水族館に国連の「生物多様性アクション2019に入賞」との嬉しい知らせが届いたという。二年連続入賞の快挙だ。2019年11月30日には、京エコロジーセンターで、出張展示も行う予定だ。

国連生物多様性アクション2018入賞の表彰状

ふと、水族館を取材して思った。生物の多様性は様々な種の生物だけではなく、人間自身にも当てはまるということを。同質を好む日本において、人の持つ個性を尊重し、ありのままを受け止めることは難しい。花園教会水族館が実践する、様々な環境、異なる価値観を持つ子どもを受け入れて、子ども自身を認める、それこそが本当の生物の多様性ではないだろうか。

基本情報

店舗名:花園教会水族館
住所:京都市右京区太秦安井辻ノ内町10-1
電話番号:075-812-1177
営業日:土・日 午後2時~5時
公式webサイト:https://www.kyotohanasui.com/
http://kyotohana.blog.shinobi.jp/Category/26/

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