「…人間より、複雑かもしれませんね」
そう言って相関図を指さすのは、すみだ水族館広報の恵土さん。昨年から始めた「すみだペンギン相関図2020」の前で、ペンギン情報の濃さに立ち尽くしました。
本命の彼女がいつつも、浮気相手に会った後に体を洗って証拠隠滅するペンギン。他のカップルの交尾を、影からそっと覗くペンギン。新人スタッフに手厳しいペンギン。
「すみだ水族館さん、毎日ペンギンワイドショー放送しませんか⁉︎」と、提案したくなるくらい濃密なペンギン関係に夢中になってしまいました。
「ペンギンをひとまとめに見るのではなく、一羽一羽の個性を知って、好きなペンギンに会いに来てほしい」
そんな思いから作成された、「すみだペンギン相関図2020」の魅力に迫りました!
ペンギンが好きすぎる日本人
水族館の人気者といえばペンギン。ぽってりとしたおなか、パタパタと羽を動かすしぐさ、ポテポテと歩いてポチャンとプールに入る動作。世界中の「カワイイ」を集めて作ったと言っても過言ではない、ペンギンという動物。実は、世界で飼育されているペンギンの25%以上が日本にいるそう!
常日頃からペンギンが大好きというわけではないけれど、すみだ水族館のペンギンには、わざわざ会いに行きたくなる何かが隠れています。夜に「すみだ水族館」へ足を運ぶと、ひとりでぼんやりとペンギンプールを眺める男性や、ガラス越しにペンギンと戯れる女性の姿がちらほら。わたし自身も、ぼーっとしたい夜に訪れるファンのひとり。
それにしても、なぜ「すみだ水族館」のペンギンに会いに行きたくなるのか、理由を分析しました。
・ペンギンとの距離が近いから
・なんだか知らないけど人懐っこいから
・ひとりで行っても孤独感を感じにくい環境づくりがされているから
なぜそう感じるのか、「すみだ水族館」へ足を運び、秘密を探りました!
ペンギンは実はクサイ?「すみだ水族館」展示のひみつ
「すみだ水族館」のペンギンプールは屋内開放型。幅24m、奥行き14mの巨大プールでのびのびと泳ぐペンギンの姿が楽しめます。
他の水族館よりもペンギンを間近で見ているような気がするのは、オープンな水槽だからでしょうか。
恵土さん「ペンギンのウンチって、実はすっごくにおうんです(笑)。なので、建設当初の計画では、『屋内で開放型のプールでペンギンを飼うなんて絶対ムリ!』って言われていて。飼育スタッフが常にペンギンの排泄物を掃除しているからこそ、においが抑えられるんですね」
また、お客さん側にペンギン側からの空気が流れていかないよう、館内の空気の流れをコントロールしているとのこと。ペンギンプールの岩の隙間などに、空気を吸い込む吸気口を作るなど、ハード面での工夫もされています。
においも気にせず、ペンギンを身近に感じながら快適に観察できる理由がここにありました。
そして、よりディープに観察したくなる企画が生まれた昨年。まるで人間模様を見ているかのような「すみだペンギン相関図2020」に迫ります!
応援したくなるほど一途な恋から、親分気取りの赤ちゃんペンギンまで!気になるエピソードBEST3
「夫は好きだが期待はしていない」
全国の主婦の皆さんが聞いたらドキッとするフレーズで紹介されるペンギンの「ツバキ」。ペンギンそれぞれに個性や特徴があって、紡ぎ出されるエピソードは、まるで新ドラマの登場人物相関図を見ているよう。
そんな相関図の中で、特に気になるエピソードを飼育スタッフの中島さんにお聞きしました。
イケてる鳴き声にうっとり。一途な「ラムネ」の恋
中島さんイチオシのエピソードは、ペンギンの女の子「ラムネ」の恋。
友達のいないラムネは、ある日突然恋に落ちます。イケてる声で人気者の男子「アケビ」の鳴き声がすると、ふだんは近づかない岩に向かい「アケビ」の側に寄り添います。なにをするわけでもなく、ただ横にいるだけ。
飼育スタッフもトリコにする、イケてるボイスの持ち主「アケビ」。
でも実は、「アケビ」には「フジ」という奥さんが…。マゼランペンギンは一度夫婦になると一生添い遂げる特徴があり、離婚率3%と言われているそう。(野生下でのデータとのこと)
中島さん「ずっと一途に頑張ってるので応援したくなっちゃいますね…でも結ばれる確率は低そう…」
ああ辛い…まだどうなるかわからないとはいえ、手の届かない人気者に恋をしてしまう切なさに胸がぎゅーっとなりますね…。
ご近所トラブルまで!のぞきが好きな夫とヤンキー夫婦がケンカ
…これは昼ドラでしょうか?いいえ、ペンギン界での出来事です。
気が強い、「ポテチ & リンゴ」夫妻の家をのぞきにきた「マロン」がボコボコにされる事件も…。完全に覗く側がダメだけど、ほっこりイメージのペンギンが急にヤンキーものの漫画の登場人物に見えてくるのはわたしだけではないはず。穏やかな子もいれば、気の強い子だっています。
「親代わりのはずだったのに。」ペンギンから子分だと思われる飼育スタッフ
2019年5月5日に誕生した「おはぎ」は、飼育スタッフの中島さんらが卵から一生懸命成長を見守ってきた子。たくさんの愛情を注ぎすぎたのか、最近では「おう、やってくれ」という態度で、身の回りのお世話をする子分だと思われているそう。
取材時には飼育スタッフに撫でてもらって嬉しそうなおはぎの姿が。背中から、愛の深さが伺えますね。
ちなみに、開館当時からペンギンを見守る、広報・恵土さんイチオシは、「きりこ」。
ごはんの時間でもきちんと順番待ちする品の良さから、スタッフからは王子とも呼ばれているそう。が、そんな「きりこ」も、飼育スタッフがプールに入る時は、まず一番に挨拶されないとキレるそうです…!礼儀に厳しい…!
ペンギン愛が深すぎる!「すみだペンギン相関図2020」が生まれた理由
濃密なペンギン関係のトリコになってしまう、ペンギン相関図が生まれた理由は、常にペンギン一羽一羽を観察して、しっかり健康管理をしていこうという飼育スタッフたちの思いから生まれました。
すみだ水族館では、ペンギンにごはんをあげるのは毎日必ず一羽一羽に手渡し。
ごはんの時間を観察すると、アジを片手に「はなびが2匹食べたよー!」とスタッフ間で連携しながら食べた量もきちんとチェック。
細やかな観察から怪我や病気の早期発見にもつながるため、それぞれの健康管理にも気を配ります。そんな風に毎日ペンギンたちを観察していたら、こんなに詳しくわかっちゃった!というのが「すみだペンギン相関図2020」誕生のエピソードです。
中島さん「ペンギンたちの飼育をする上で大切にしているのは、その子を知ることですね。本当にみんな違うので。ごはんのあげかたひとつでも、みんな食べ方が違うんですよ。例えばごはんの時間でも、その子に合わせたごはんのあげ方を心がけています。近くまで来られる子もいれば、「この場所で欲しいんです!」っていう子もいたり。アジをどの向きからあげたほうがいいかとか、ペンギンそれぞれにこだわりがあります。」
いつも食べるごはんのメインはアジ。そのアジすらも、大きさで選り好みがあるそう。ごはんの時間を観察していると、ぎゅっと集まったペンギンたちに数秒で魚を渡しているように見えるのですが、その数秒でそれぞれの特徴と照らし合わせながらあげてるなんて…飼育スタッフの方々の神業が光ります。
ひとりでも楽しめる「すみだ水族館」
みんな同じように見えるペンギンですが、本当はそれぞれに個性が光り、人間と同じような関係性を知ると、より観察の楽しさが生まれます。恋をしてごはんが食べられなくなってしまう繊細な子もいれば、新人には人一倍キビシい、気の強い子まで。
人間味あふれる、というと語弊があるけれど、なんだか親近感が湧くのが不思議な魅力です。
「お気に入りの子を見つけて、年間パスポートを持って毎日会いにきてほしいですね」と話す恵土さん。飼育スタッフの中島さんも「気になる子がいたら、気軽にスタッフに話しかけてください。『あの子の名前は?』と聞いてもらえたら、たくさんエピソードをお話ししますよ!」
個人的には、夜ひとりで行くのもおすすめ!やわらかな青い灯りの下で、それぞれの「家」で休むペンギンカップルの仲睦まじい様子や、お客さんと楽しそうに遊ぶペンギンや、ぼんやり岩に佇む姿など、いつまで見ていても飽きません。そうして見ているうちに、日々のストレスもどこかへ飛ぶこと間違いなし。
今すぐ「すみだ水族館」へ、あなたの推しペンギンを見つけに行きませんか?
すみだ水族館
住所:東京都墨田区押上一丁目1番2号 東京スカイツリータウン・ソラマチ5F・6F
営業時間:9:00-21:00
電話:03-5619-1821
公式webサイト:https://www.sumida-aquarium.com