光源氏の良きライバルとして『源氏物語』に登場する「頭中将(とうのちゅうじょう)」。現代の漫画やドラマでは、チャラくてセクシーなキャラクターとして描かれることが多いですが、実際はどんな人物だったのでしょう?
『源氏物語』作中で光源氏と人気を二分した頭中将。「光源氏派?頭中将派?」という難題は、『源氏物語』の時代から千年の時を越えた今でも議論が尽きません。光源氏に並ぶイケメン・頭中将の人物像に迫ります!
※本記事に掲載している画像は、全て筆者の勝手なイメージです。
頭中将のプロフィール
まずは簡単に頭中将のプロフィールをご紹介しましょう!
年齢:光源氏より5才ほど年上(詳細不明)
血筋:藤原氏。父は左大臣・母は桐壺帝の妹で、かなり高貴な血筋
仕事:エリート官僚
見た目:華やかなイケメン
特技:音楽(和琴)
子ども:十数人
光源氏との関係:いとこ・義理の兄
頭中将は、かなり高貴な血筋でスーパーエリート!そもそも「頭中将」というのは役職名で、本人の名前ではありません。彼が重要人物となるシーンで頭中将という役職に就いていたので、その呼び方が定着したと言われます。
物語が進むに従って頭中将はどんどん出世していき、最終的には「太政大臣(だじょうだいじん)」という、官位では最高位まで上りつめます。対する光源氏は「准太上天皇(じゅんだじょうてんのう)」という、天皇に並ぶ称号を得ています。どちらもハイパーエリート雲上人ですが、天皇に並ぶ立場ということで光源氏の方がランクが上です。
ちなみに光源氏と頭中将はいとこです。また、光源氏は頭中将の妹と結婚しているため、二人は義理の兄弟でもあります。
政治から追放された光源氏に、ただ一人会いに行った男
政敵の娘に手を出したことが引き金になって、光源氏が一時失脚し、須磨(神戸市須磨区)に移り住んだことがありました。この期間、今まで光源氏と仲良くしていた人やゴマをすっていた人たちは、保身のために光源氏と関わることを控えていたのです。
しかし頭中将だけは、遠く離れた須磨まで光源氏に会いに行きました。”チャラい”イメージの頭中将ですが、男同士の絆を大切にする強い意志と温かい心をもった男なのです。今は京都からアクセスの良い須磨ですが、平安時代当時は電車や車がないのでかなり遠く、その距離徒歩約17時間。どんなに光源氏が頭中将の来訪を喜んだかがわかります。
光源氏とおばあちゃんを取り合った!
頭中将と光源氏は、恋愛における良き(?)ライバル。光源氏はさまざまなタイプの女性と付き合っていましたが、恋人の一人「源典侍(げんのないしのすけ)」は、なんとおばあちゃん。光源氏がお年寄りと付き合っていると知った頭中将はライバル心に火が付き、彼もまた源典侍とお付き合いを始めたのです。
思いがけず二大イケメンとの二股を楽しめた源典侍は、めちゃくちゃラッキー!人生最後まで何があるかわかりません。将来そんなこともあるかもしれないと、私も楽しみにしておきます。
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娘に関しては負け続き
言い方は悪いですが、貴族にとって「娘」は政治における重要な道具でした。光源氏も頭中将も娘の教育に熱を上げ、入内(天皇や東宮の妃にすること)や有力者と結婚させています。
しかし、頭中将は娘に関しては光源氏に負けっぱなし。特に決定的なのが、冷泉帝の中宮の座を光源氏の養女が勝ち取ったこと。次の天皇の中宮も、光源氏の娘が選ばれました。
あなたは光源氏派?頭中将派?
恋に政治に光源氏へライバル心を燃やしつつも、危険を冒してまで須磨へ会いに行く熱い男。娘の初恋に激怒したり、愛する息子を亡くして取り乱したり……。子だくさんな頭中将は、子どもに関する悩みも尽きませんでした。そんな人間味あふれる姿も魅力的!
光源氏の絶対的なライバルとして生き生きと輝く頭中将。身分も娘たちの処遇も、色々と光源氏の”ワンランク下”にはなってしまいましたが、和琴の才能は光源氏より上だったようです。
私はやっぱり光源氏派かなぁ……。あっ、でも頭中将もいいなぁなんて、平安時代の女性になった気分で源氏物語を読んでみるのも面白いですよ!
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参考:日本古典文学全集『源氏物語』小学館