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Fashion&きもの

2025.02.28

反骨精神とロック、ミケーレ時代GUCCIのコートがお気に入り。阿部顕嵐が語る「あらん限りの歴史愛」vol.22

テレビドラマや舞台などでひっぱりだこの阿部顕嵐(あべ あらん)さん。20代の阿部さんが、好きな日本文化を自由に感じる、この連載。今回は取材当日の阿部さんの私服を『Oggi』『Precious』『MEN’S Precious』の編集長を歴任してきた、鈴木深(すずき ふかし) 和樂web編集長と対談してもらった。

レディース古着とTOD’Sフルブローグの靴、“ヤバい”組み合わせ

鈴木:そのパンツ、シルエットがすごく面白いですね。

阿部:知り合いの古着屋さんで見つけたウイメンズのパンツです。

鈴木:なんとウイメンズ!ですか。サイズ感は問題なかったのでしょうか? しかも裾のダブル幅がかなり広めですね。7センチくらいあるんじゃないかな。

阿部:裾のダブル幅はかなり太めです。そしていわれてみるとこの古着、僕がズルッと長めに履けるわけだから、以前このパンツを履いていた女性は、かなり脚が長い人なのかもしれませんね(笑)

鈴木:そのパンツにフルブローグの靴を合わせるのは、大胆すぎてヤバいです。普通の人は、そういうコーディネートは思いつかないです。

阿部:ウイメンズのワイドパンツを引きずるくらいのレングスでズルッと履いて、そこにあえてクラシカルな靴をあわせるのがかっこいいかな、と思って。今日履いているのはTOD’Sのウイングチップです。TOD’Sの靴は、ガッチリ見えても革がすごく軽くて履きやすい。長時間履いていてもラクなのですごく好きです。

ミケーレ時代のGUCCIはロック!

鈴木:そして…なんといってもこのモードなコート! いったいどこのブランドですか?

阿部:これは少し前のGUCCIで、ミラノで手に入れました。

鈴木:後ろのデザインが、すごく面白いですよね。たっぷりと深めのインのタックが左右に2本ずつあって、かなりのボリューム感で下に広がる。しかもサイドベンツになっていて、歩くと大きく揺れるシルエットはドラマチックです。誰時代のGUCCIですか?

阿部:ミケーレです。

鈴木:アレッサンドロ・ミケーレでしたか。とてもメッセージ性の強い、印象的なデザインを多く残した人ですよね。
ミケーレのつくる一点一点の服はもちろん、彼がディレクションする広告ビジュアルもとにかくユニークでドラマティック! 歴代のGUCCIの中でも、ひときわキャラの強いクリエイティブディレクターでした。

アレッサンドロ・ミケーレは、2015年から2022年まで、GUCCIのクリエイティブディレクターを務めた人物。1972年ローマで生まれ、ローマのファッションアカデミーを卒業している。

幼いころから、芸術好きの父に連れられローマでさまざまな美術館に通っていたという。ミケーレはGUCCIのファッションショー会場に、ローマのカピトリーノ美術館を選んだ年もあった。ちなみにカピトリーノ美術館は1734年に一般公開が始まったとても歴史がある施設。日本の明治政府が派遣した「岩倉使節団」も訪れた美術館だ。

そんなローマを愛するミケーレは当時のGUCCIの戦略とも合致し、とても個性的なデザインを生み出した。ジェンダーをテーマにしたコレクションではなんと、花を咲かせた卵巣と子宮の刺繍をほどこしたドレスを発表。すべての男性も自分の女性的な部分を知り、向き合うべきだといったメッセージもこめていたそう。阿部さんが愛用するミケーレのコートも、背面がどことなく中性的だ。ちなみに、アンティークや古いものからインスピレーションを得て活動している日本人アーティスト・ヒグチユウコとミケーレがコラボした年もあった。

10代の頃から好きだったフレンチブルー

鈴木:鮮やかなフレンチブルーですね。この色に惹かれた理由は?

阿部:10代の頃からフレンチブルーの鮮やかさが好きでした。母親もフレンチブルーの服を持っていたので、借りたこともあったくらいです。今でもウイメンズの服を着ることにまったく違和感はないですね。この袖の短さ(女性用の7部丈)も気に入っているポイント。冬だけに限らず長く着たいので、半袖のインナーの上に羽織って春でも着ているくらいです。

鈴木:色もディテールもロックですね。もともとミケーレは相当なロック野郎ですが、彼がデザインするウィメンズのアイテムを男が着ることで、さらに反骨感が増しますね。

阿部:ミケーレの反骨精神にはとても惹きつけられます。なぜって、彼のつくる服は自由だからです。
今日の僕のコーディネートも、「古着」と「今のモード」のミックス、「メンズ」と「ウイメンズ」のミックス、このメチャクチャな「ロックスタイル」にあえての「オーセンティックな靴」をミックス…と、やりたい放題に楽しんでます。

鈴木:古いルールとか最新のトレンドとか、そんなものにしばられない顕嵐さんの着こなしスタイルは素敵です。やはりファッションは楽しまないとね。
今日も、まさしく楽しいファッショントークを、ありがとうございました。

参考文献:長沢伸也「グッチの戦略」
写真/篠原宏明
インタビュー・文/給湯流茶道

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阿部顕嵐

阿部顕嵐 (あべ あらん) 1997年8月30日生まれ、東京都出身。 俳優としての活動を中心に、映画、ドラマ、舞台と幅広い作品に参加。 主演ドラマ『oddboys』(テレビ東京)、『BLドラマの主演になりました』(テレビ朝日&TELASA)、主演映画『ツーアウトフルベース』、主演舞台『桃源暗鬼』、PARCO劇場開場50周年記念シリーズ『ラビット・ホール』(第31回読売演劇大賞・優秀作品賞受賞)『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stage 等の作品に多数出演。 JR東海「そうだ京都、行こう。」では今年含め2年連続夏のPRキャンペーンを担当。 2024年は9月19日(木)より放送スタートのMBS 毎日放送 ドラマフィル枠『スメルズライクグリーンスピリット』にて柳田役、11月には自身初のプロデュース舞台作品 東洋空想世界『blue egoist』を東京THEATER MILANO-Za、大阪オリックス劇場にて上演する。 また、「7ORDER」のボーカルとしての音楽活動や、自身のオリジナル作品の企画プロデュースなど、活動は多岐にわたる。
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黒田直美

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