日本文化の
入り口マガジン
11月28日(金)
自己侮蔑という男子の病気には、賢い女に愛されるのがもっとも確実な療法である(ニーチェ)
日本文化の入り口マガジン 和樂web
日本文化の入り口マガジン 和樂web
11月27日(金)

自己侮蔑という男子の病気には、賢い女に愛されるのがもっとも確実な療法である(ニーチェ)

読み物
Gourmet
2020.06.09

日本最古の料理本から「辿り着いた」絶滅寸前の万能調味料「煮貫」レシピ

この記事を書いた人

もし、この世からお醤油が無くなったら?もしこの世から、めんつゆが無くなったら?

いやいや、考えた事がなかったです、そんな事。しかし今、江戸時代までは日常的であった調味料が絶滅の危機に直面しているのです。

それは「垂れ味噌」と「煮貫(にぬき)」です。

「垂れ味噌」は八丁味噌と水を混ぜて漉したもの。江戸時代では、塩に次いで日常的に用いられた液体調味料でした。「煮貫」は垂れ味噌で鰹節を煮出し、うどんや蕎麦を食べる時のつゆの他、万能調味料として使われていました。

そうです、ちょうど今の「醤油」、「めんつゆ」に当たるものです。現在、この2つの調味料をご存知で普段にお使いの方はほとんどいらっしゃらないと思います。私もそうでした。

この2つの調味料に出会ったきっかけは、1冊の本でした。江戸時代に出版され、日本最古のレシピ本と言われている『料理物語』です。

そして、物は試しと作ったところ「煮貫」の魅力にはまってしまいました。布で漉したり工程が複雑だったのですが、何度も作るうちに現代の調理器具で作ったほうがはるかに簡単な事に気付き、このレシピが出来たのです。

元祖万能調味料!煮貫の作り方

(材料)
・八丁味噌 100g
・水    300cc
・花かつお 15g

調理時間:15分
1週間冷蔵庫で保存可能。

(作り方)
1. 八丁味噌100gを300ccの水に溶かします。
八丁味噌はとても固く簡単には水に溶けません。ちょっと無理そうだなと思ったら、ミキサーやハンドブレンダーで一気に溶かしてしまいましょう。室町〜江戸時代はこの作業を布で漉して行っていたそうです。


この状態が「垂れ味噌」です。現代でいう「醤油」の役割を果たしていました。

2. 鍋を弱火で火にかけます。沸騰直前になったら花かつおを入れます。

ふつふつと優しい弱火で5分煮出します。

3. 煮出した汁をざるで漉します。
洗い物を最小限にとどめたいのでまずは鰹節だけザルに入れ、軽く絞り保存容器に汁を流します。はねるので大きめの容器がオススメです。

絞った鰹節は耐熱皿に移しておきましょう。後ほどふりかけを作ります。

最後に鍋のつゆをザルで漉して煮貫の完成です!

残ったお鍋に、少しお湯を入れて、鍋肌に張り付いている味噌を溶かします。そうすると簡易的に赤出汁が作れます。洗い物も楽になり一石二鳥!


出汁を取った鰹節は耐熱皿に広げ、600wで2分電子レンジにかけ、ほぐしてまた2分、鰹節がカラっとするまで温めます。

絶品のふりかけになります。胡麻との相性も抜群です!

煮貫を使った展開料理


まずは、めんつゆとして使ってみましょう。そのままだと濃く感じる方は、少しお水で薄めてください。室町時代〜江戸時代は大根おろしを入れて味を調整していたそう!私は、原液に、大根おろし、生卵の黄身半分、万能葱を入れています。

初めて作った時は「赤出汁みたいな味なのかしら?」と思ったのですが、全然違いました!

お醤油に近くてもっと丸くてコクが深いです。独特の渋みもありますが、慣れるとむしろその渋みに魅了されます。これ、美味しいよね? と確認したくなる、知っているのに、初めての味なのです。

この煮貫でお蕎麦を食べた後に、いわゆる今のめんつゆを口にすると、いつもより「甘い!」と感じてびっくりしました。

ひやむぎでも美味しい!

お次は鳥の塩焼きにちょいかけを。一気に大人のおつまみになります。これ何!?と聞かれること間違いなし。辛子をつけてどうぞ。

オリーブオイルとトマトとバジルのサラダに。オイルの効果で風味が優しく感じられ、イタリアンな食材にも美味しく馴染みます。

ご飯にはふりかけも忘れずに!

八丁味噌と鰹出汁のおかげで、煮貫を薄めるだけで赤出汁も出来ます。

煮貫は少し珍味のような味わいがあります。烏賊の肝から生臭さを抜いたような味とコクです。八丁味噌と鰹節だけで、こんなお味を生み出したなんて……昔の人はすごい!

先日タケナカリーさんの大発酵カリーの記事でも書かれていましたが、八丁味噌の蔵はもう日本でカクキューさんとまるやさんの2つだけ。偶然にもタケナカリーさんはカクキューさんで、私はまるやさんでしたね。
八丁味噌自体が貴重なものになっているのに、煮貫が当たり前のようにスーパーに並ぶことは今後もないかもしれません。しかし、この調味料は家で作れるのです。お醤油を作るよりも簡単に出来ます。

滅んでしまうにはあまりに勿体無い、この美味しい煮貫を私はこれからも作り続けていこうと思います。実は知らない間に、ストンと歴史から消えていく味がたくさんあるかもしれません。

しかし、出会ったからにはその味を大切に、後世に伝えていきたいです。

(写真 今井 裕治)

書いた人

料理家。神戸市生まれ。3度の飯よりお肉好き!キャンプで塊肉を焼くのが一番のストレス解消法。 東京都世田谷区で料理教室を行っている。雑誌、web媒体、広告などでレシピ作成、スタイリングを担当。