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Gourmet
2019.09.06

横浜のソウルフード!崎陽軒のシウマイ弁当と鉄道の知られざる関係

この記事を書いた人

崎陽軒のシウマイは、横浜文化圏に住まう者のソウルフードである。

日常的に崎陽軒の弁当を食べているというわけではないし、シウマイが夕餉の食卓に高確率で出てくるということでもない。が、1年のうちのちょっとした節目に必ず崎陽軒のシウマイが出てくるのだ。

筆者の本籍は静岡県静岡市であるが、それは両親が里帰り出産を選んだからだ。0歳から18歳までは神奈川県相模原市に住んでいた。父親が八王子刑務所に勤める安月給の公務員で、そのため自宅はJR橋本駅と相模原駅の中間にある公営団地だった。

両親の里帰りは年2回、盆と正月である。新横浜駅から新幹線に乗って静岡市へ行った。その車内では必ず崎陽軒のシウマイ弁当を食べた。

ソウルフードとは、つまりそういうものだと三十路を迎えてしばらく経った今でも思う。

シウマイ弁当を食らう

現在の筆者は静岡市在住だ。

静岡市内にも、崎陽軒の店舗はある。今回は初心を振り返るつもりで、崎陽軒のシウマイ弁当に関する記事を書きたい。

なお、このシウマイ弁当のことを「シューマイ弁当」と表記してしまう人もいるが、固有名詞の記載はそれを考案した人や企業に準じなければならない。崎陽軒はあくまでも「シウマイ弁当」としている。「iPhone」を「IPhone」と書くテクノロジーライターは存在しないが、要はそれと同じだ。

さて、今回は野外でシウマイ弁当を食べよう。このパッケージの紐を解く瞬間が何とも言えない。子供の頃の筆者も、この瞬間に胸を躍らせていた。新幹線に揺られながらの道程、このシウマイ弁当はまさに親友だった。6つの俵を連結させたような米飯は、少し固くて粘り気がある。多少の粒が蓋の裏側にこびりついてしまうほどだ。中央には青い梅干しが乗っかっている。が、この弁当の主役は何と言っても5つのシウマイ。これに醤油をつけて食べる。たまに紅ショウガやタケノコの煮物に手を出しつつ、シウマイと米飯が均等のペースで減るようにしてやる。玉子焼きとマグロの照り焼きは、終盤のお楽しみだ。

「和式進化」を遂げた日本の鉄道

崎陽軒はもともと、定年退職を迎えた横浜駅長が駅構内で始めたビジネスである。

日本の鉄道史の発端は、決して平穏な雰囲気のものではなかった。江戸幕府を倒した明治新政府は「富国強兵」と「脱亜入欧」を掲げ、日本の近代化を急ピッチで進めた。それには国土に鉄道路線を敷かなければならないが、当時の明治新政府には資金もなければ技術者もいない。そのあたりは鉄道先進国イギリスから工面する必要がある。

ところが、何も考えずに外資を呼び込むと鉄道の営業権そのものを欧米列強に持って行かれてしまう危険性があった。これは現代の新興国でも叫ばれている問題だ。

つまり、日本における鉄道史の発端とはネゴシエーション能力に優れた外交官を語ることでもある。彼らがいなければ、日本の鉄道は外国勢力から文字通り搾取されていた可能性もある。

ともかく、日本の国土に敷かれた鉄道は例によって「和式進化」を遂げた。そのひとつが駅弁である。

日本は山がちの国で、同じ東海道に沿った地域でもそれぞれ気候の特色がある。気候の差異とは即ち、地域物産の差異だ。小田原、静岡、浜松等の各地域の弁当業者はそれぞれの特産品を用いた商品を売り出していたが、横浜の崎陽軒にはそれがなかった。そこで崎陽軒は中華街の点心職人を呼んで、弁当向けのメニューを作らせたのだ。
これがシウマイ弁当の始まりである。

シウマイ弁当だけじゃない!

ここまでシウマイ弁当を強調してみたが、崎陽軒は「食後のデザート」も製造している。

そのひとつが、あんずゼリー。潤いがあり、すっきりした味わいだ。ゼリーの中にあんずの果肉が入っている。また、出先へのお土産になるような商品も崎陽軒は販売している。筆者のお勧めは『横濱かりぃ』というレトルトカレーだ。価格は一般的なレトルト食品より割高だが、お土産にするには丁度いい尺のものではないか。実際、筆者も迷ったら横濱かりぃを選択している。

こうして見ると、崎陽軒は常に鉄道と共にある企業だということが分かる。そしてこれらは、紛れもなく日本文化の一部である。常に我々日本人と共にあり、これからも守り通していくべきかけがえのない財産と言えよう。

【参考】
崎陽軒公式サイト

書いた人

ノンフィクションライター、グラップリング選手、刀剣評論家。各メディアでテクノロジー、ガジェット、ライフハック、ナイフ評論、スタートアップビジネス等の記事を手がける。