日本文化の
入り口マガジン
11月24日(火)
茶と和解せよ 信楽の看板
日本文化の入り口マガジン 和樂web
日本文化の入り口マガジン 和樂web
11月24日(火)

茶と和解せよ 信楽の看板

読み物
Gourmet
2019.10.24

家康の愛した「赤味噌(豆味噌)」って?実は戦国武将と共に進化した味噌の世界

この記事を書いた人

はじめに

主に、愛知、三重、岐阜の東海三県で生産される「赤味噌(豆味噌)」。
赤味噌(豆味噌)文化圏においては、味噌汁はもちろん、どて煮、味噌カツ、味噌煮込みうどん等の名物料理の他にも、おでん、素麺、鍋料理など、とにかく何にでも、赤味噌(豆味噌)を使います。おでんといっても、出汁で煮込んだおでんに味噌を付けて食べるのではなく、赤味噌(豆味噌)で、煮込むのです。
私は高校生まで愛知県で過ごしました。東京に住む今でも、自宅の冷蔵庫には、パックの赤味噌(豆味噌)に加え、使い勝手の良いチューブタイプの赤味噌(豆味噌)がマヨネーズとケチャップと一緒に入っています。

赤味噌(豆味噌)は、大豆・塩・水のみを主原材料とし、長い熟成期間を経て作られることから、味噌の中でも特に栄養価が高く、深いコクがあります。また、他の味噌と異なり、煮込んでも美味しいという特徴から、赤味噌(豆味噌)料理は独自の進化を遂げました。
今回は、東海三県住民のソウルフードである赤味噌(豆味噌)について、見てみたいと思います。

味噌の種類

赤味噌(豆味噌)について語る前に、まずは、味噌の分類について確認したいと思います。
味噌は日本の伝統的な食品として、以前は多くの家庭で作られていました。自宅で作った味噌から「手前みそ」という言葉も生まれました。現在は、自宅で作ることは珍しくなりましたが、その土地の風土に合った数多くの種類の味噌が作られています。日本全国で、千種類以上にものぼるとされています。
それらの味噌は、「原材料」と「色」により大きく分類できます。

原材料による分類

原材料による分類では、「米味噌」、「麦味噌」、「豆味噌」があり、その他、これら2種類、もしくは3種類混合したものを、「調合味噌」と呼びます。
・「米味噌」…大豆・塩・水の他、米を原料にした米麹を加えて作られます。全国各地で生産され、国内で生産される味噌の約8割が米味噌です。
・「麦味噌」…大豆・塩・水の他、麦を原料とした麦麹を加えて作られます。九州、四国、中国地方が主な産地です。「田舎味噌」とも呼ばれます。
・「豆味噌」…大豆・塩・水のみを主原材料として作られます。東海三県(愛知、三重、岐阜)が主な産地です。

色による分類

また、見た目の色を基本にして、「赤味噌」、「淡色味噌」、「白味噌」の3種類に分類できます。色は、原材料の違いや醸造の期間など、さまざまな条件によって変わってきます。
例えば、「赤味噌」というと、東海三県では「豆味噌」を指しますが、「米味噌」でも、「仙台味噌」や「江戸味噌」などの熟成期間が長い味噌は赤くなり、「赤味噌」に分類されます。米味噌においては、一般的に赤味噌は熟成期間が長く、保存のために塩分濃度は高くなり、白味噌は熟成期間が短く、塩分濃度は低くなります。

八丁味噌とは?

東海三県で作られる赤味噌(豆味噌)の中で、製造にかける時間や手間、味わいも別格なのが「八丁味噌」です。明治34年に宮内庁御用達になるなど(宮内庁御用達の制度は昭和29年に廃止)、確かな品質と歴史を誇ります。また、耐暑耐寒性が認められ、南極観測の携行食品にもなりました。
「八丁味噌」という名称は、もともと、徳川家康の生誕の地である岡崎城から八丁(約870m)西にある八丁村(現在の八帖町)で作られたことに由来します。
なお、現在、農林水産省のGI(地理的表示)保護制度における「八丁味噌」の登録を巡り、生産地や製造方法などを論点に議論がされています。

戦国武将と味噌

味噌作りが劇的に進展したのは、戦国時代だといわれています。味噌は、日常の栄養補給に加えて、長期保存ができて携行にも便利なことから、戦場食としても重宝されました。各地で味噌作りが発達し、味噌作りは戦国武将にとって大切な経済政策の1つでもありました。
愛知県の誇る戦国武将である、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康は、やはり赤味噌(豆味噌)を愛好していました。
中でも、特に拘りが強かったのが、徳川家康です。「長寿こそ勝ち残りの源である」とのモットーの下、「健康オタク」とも評される家康は、食にも精通していました。75歳という当時としては異例の長寿を全うした秘訣は、麦飯と、具だくさんの八丁味噌の味噌汁だとされています。後に、江戸に本拠を構えてからも、三河(愛知県)から、慣れ親しんだ八丁味噌を取り寄せていました。その影響もあり、八丁味噌は徳川将軍家代々の愛用食となりました。

他にも、武田信玄は、海の無い信濃の国で塩を備蓄するため、味噌作りを奨励しました。これが、現在、全国の味噌生産量の約4割を占める「信州味噌」のルーツとなりました。また、煮てすりつぶした大豆に麹を加えて団子にし、進軍している間に発酵して味噌となる「陣立(じんだて)味噌」という戦場食を考え出しました。

伊達政宗は、軍用の味噌を製造する場として、仙台城下に「御塩噌蔵(おえんそぐら)」を設けました。これは、日本で最初のみそ工場となり、「仙台味噌」が作られました。仙台味噌は、豊臣秀吉の朝鮮出兵の際にも重宝されたと伝えられています。

このように、戦国武将と味噌の進化は、非常に強い結びつきがあるのです。

赤味噌(豆味噌)の特徴

豊富な栄養

味噌は「医者に金を払うよりも味噌屋に払え」といわれるほど栄養価が高く、日本国内はもちろん海外でも、健康食品として人気が高まっています。中でも、大豆・塩・水だけを主原材料とし、最低でも1年という長い熟成期間を要する赤味噌(豆味噌)は、特に栄養価が高いといわれています。
大豆は、畑の肉とも呼ばれ、たんぱく質や大豆イソフラボンが豊富です。長い熟成期間をとる赤味噌(豆味噌)には、ビタミンやミネラルの他、強い抗酸化作用のあるメラノイジンという物質も多く含まれています。
筋肉や皮膚などの優れた材料となり健康な体を作ることに加え、生活習慣病の抑制、老化の防止、さらに美肌効果も期待されています。
また、意外に感じるかもしれませんが、赤味噌(豆味噌)は他の味噌に比べ、塩分濃度が低いのです。

煮込んでも美味しい

米味噌や麦味噌は、加熱することで、持ち味である「甘み」や「香り」が飛んでしまいます。味噌は煮立てると味が落ちるというイメージは、米味噌や麦味噌には当てはまります。
しかし、赤味噌(豆味噌)は、煮込めば煮込むほど、持ち味である「旨み」や「コク」が出ます。また、塩分濃度も低いため、煮込んでも塩辛くなりません。そのため、赤味噌(豆味噌)文化圏では、味噌おでん、味噌煮込みうどん、どて煮など、味噌の煮込み料理が進化しました。また、カレーやパスタソースなどのいつもの料理に少しプラスすることで、旨みやコクが増します。

おわりに

味噌の中でも、特に栄養価が高く、煮込んでも美味しい赤味噌(豆味噌)。
生産は東海三県が主ですが、全国どこでも大手スーパーなどで手に入ることと思います。いつもの味噌にプラスして、赤味噌(豆味噌)も是非、手に取ってみてください。温かいものが恋しくなるこれからの季節、赤味噌(豆味噌)料理で、美味しく温まるのはいかがでしょうか。

また、東海地区以外ではなかなか手に入らないかもしれませんが、使い勝手の良いチューブタイプの赤味噌(豆味噌)もお勧めです。豆腐、ナス、風呂吹き大根、カツ、焼きおにぎりなどにそのままかけたり、調味料として使用したりと、その活用の幅は無限大です。

書いた人

名古屋生まれ、東京(小金井市)在住。京都の大学に通い、日本文化の素晴らしさに魅了される。趣味は茶道・着物・一人旅。銀行・コンサル勤務を経て、政治家見習い。