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2024.07.02

ファインジュエリー不朽のアーカイブ!「シャネル パトリモニー」新たな伝説の始まり

宝飾の聖地、ヴァンドーム広場18番地に佇む「シャネル ファイン ジュエリー本店」。2022年に大規模なリノベーションを終えて新たにオープンしたブティックの地下には、ファインジュエリーとウォッチのアーカイブを収蔵する「シャネル パトリモニー」が設けられました。

ここには、ガブリエル・シャネルがデザインした作品から近年のクリエイションまで、宝飾と時計の名品、約800点を収蔵。そのすべてに、メゾンが継承する大胆な創造性と自由な精神が息づいています。過去と現在を繫ぐこの場所を、特別に取材! 年を追うごとに充実し、進化を続けるヘリテージを通して、20世紀を代表するデザイナーの永遠のスタイルと色褪せない魅力をひもときます。

「シャネル パトリモニー」には絶対に不可欠なコレクション! ガブリエル・シャネルのデザインによる芸術的ファインジュエリーを探して

「シャネル パトリモニー」の重要なパートを占める、ガブリエル・シャネル自身がデザインしたファインジュエリーのアーカイブ。現在、そのなかに収蔵されている作品は、多くが奇跡的に発見されたものばかり。アーカイブの蒐集が想像以上に困難を極めている理由を解説します。

1997年、ヴァンドーム広場18番地に移転した「シャネル ファイン ジュエリー本店」。名建築家ピーター・マリノによるリノベーションを経て、2022年5月にリニューアルオープンした。1階から3階までがブティック、地下1階に通常非公開の「シャネル パトリモニー」がある。

1937年に撮影された、リッツ パリのスイートルームに暮らすガブリエル・シャネル。そのバルコニーから広場を眺めると、現在ブティックのある建物も視界に入っていたはず。©Collection Schall /Roger Schall

「シャネル パトリモニー」の内部。壁一面に設置されたキャビネットには、テーマ別に分類された作品が収納されている。壁の中央に展示スペースがあり、右側にシガレットケースとハイジュエリーの名品、左側に1932年のハイジュエリーコレクション「Bijoux de Diamants(ダイヤモンド ジュエリー)」発表時の資料などが並ぶ。©Patrimoine de CHANEL, Paris / Photo Manuel Braun. Mannequin bust, year 1932, Collection Roodhorst. ©Gaumont-Pathé Archives.

本物か否かの区別なく、ジュエリーの創作に情熱を傾けたガブリエル・シャネル。1920年代、初めてコスチュームジュエリーを発表するにあたり、金細工師や専門の職人を招聘。ファインジュエリーの制作にも取り組み始め、’30年代には、友人や親しい顧客からの注文を受けるようになっていました。

1957年、デッサンを描かないガブリエルは、宝飾用の粘土を形づくってデザインを具現化していた。©Mark Shaw / mptvimages.com

’90年代、「シャネル」はファッションとジュエリーのアーカイブを充実させることを決定し、その蒐集に動き出します。しかし、ガブリエル自身がデザインした初期のジュエリーを見つけ出すことは困難を極めました。なぜなら、そのファインジュエリーはデッサンが保管されておらず、メゾンの刻印がないものも多かったのです。そのため、作品によっては、当時の記事や写真、所有者がどのような人物であるかが判断の材料になりました。

1937年、ビザンチン様式風のブレスレットをつけたガブリエル・シャネル。これと同タイプのブレスレットが昨年発見され、アーカイブに収蔵された。©Boris Lipnitzki / Roger-Viollet

現在、「シャネル パトリモニー」には、ガブリエルがデザインまたは所有したジュエリーが、約40点収蔵されています。昨年、新たに3点発見され、そのなかには彼女とフルコ・ディ・ヴェルドゥーラによる作品も…。イタリア貴族のヴェルドゥーラは’30年代、ガブリエルと協業し、マルタ十字をあしらった七宝製ブレスレットなどの名作を生み出しました。

生涯、シンプルな美しさを愛する一方で、華やかなバロック様式や絢爛たるビザンチン芸術にも心惹かれたガブリエル。そうした矛盾をも洗練に変える稀有なセンスは、初期のファインジュエリーのデザインにこそ色濃く表れています。

1932年、次の画像のチョーカーと似たネックレスを纏ったガブリエル。リメイクは1度とは限らない。©CHANEL-Private archives / All rights reserved

ガブリエルがデザインまたは所有した約40点のジュエリーの一部。これらは、すべてファインジュエリー。
〈上段〉右は、中世美術の影響を受けたネックレス。1936年『アメリカン・ヴォーグ』の表紙を飾った。左は、19世紀のロングネックレスを、チョーカーとブレスレットにリメイクしたもの。
〈中段〉ブレスレットはどちらも1930年代の作品。ペイズリー形の2点セットのブローチは、1930年代半ば、女優リリー・ダミタのためにつくられた。
〈下段〉右のピンブローチはガブリエルの友人レディ・アブディによる注文。刻印はなく、写真などの資料で判断された。中央のブローチには刻印があり、1930年代半ばのもの。左端のエメラルドリングにも刻印があり、1936年製作と判明。
※この特集に掲載した作品に関する問い合わせ先:シャネル カスタマーケア 0120・525・519
※特集内の表記のない画像は、すべて©CHANELです。
※本記事は『和樂』2024年6,7月号の転載です
コーディネート/今津京子 写真提供/シャネル
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福田 詞子(英国宝石学協会 FGA)

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