ルーヴル美術館との特別な繋がり

ヴァシュロン・コンスタンタンは1755年、スイス・ジュネーブに創業しました。以後270年にわたり時計製造の伝統を継承し、革新を重ねてきた同社は、世界で最も長い歴史を持つ時計マニュファクチュールとして知られています。
その長い歴史のなかで、ルーヴル美術館との出会いは特別な意味を持ちます。両者の関係は2016年に始まりました。ルーヴル美術館に保管されていた置時計《天地創造》(1754年、ルイ15世に献呈)の修復をヴァシュロン・コンスタンタンが担ったのです。精緻な細工を持つこの時計を蘇らせたことが契機となり、2019年には正式にパートナーシップが結ばれました。
以来、両者は「歴史や文化、技術の継承」という共通の理念のもと協働を続けています。2020年にはコロナ禍においてクリスティーズが開催したチャリティオークション「Bid for the Louvre」にユニークピースを出品しました。落札者はルーヴル美術館に所蔵されている作品を1つ選び、メゾンはその作品をモチーフとした腕時計を製作し、売上をルーヴル美術館内にある教育的なワークショップを支援する「Le Studio」に寄付しました。
さらに2022年と2024年には職人技を讃える国際的な工芸展「ホモ・ファーベル」にも共同出展し、工芸と文化を世界に向けて発信してきました。
新作置時計《ラ・ケットゥ・デュ・タン》の誕生

こうした歩みを背景に迎えたのが、2025年の270周年です。その節目を祝う場として選ばれたのがルーヴル美術館でした。そして、発表されたのが、270周年の集大成として製作された置時計《ラ・ケットゥ・デュ・タン(時の探求)》です。半球体のドーム、ロッククリスタルの時計キャビネット、台座からなるこの置時計は計時装置としての精密さに加え、高級時計製造の伝統、職人の卓越した技術、そしてオートマトンの機構美を融合させています。
この時計の製作には世界最高のオートマタ製作者として知られているフランソワ・ジュノーや著名なフランス人音楽作曲家のウッドキット、ジュネーブ天文台の天文学者といったさまざまな分野の第一人者が携わりました。オートマンは、メゾンが誕生した1755年9月17日のジュネーブの星空を再現したドームの天空図をさした後、現在の時刻を示し、天体の時と地上の時間を繋いでいるのです。
世界中からゲストを迎えた晩餐会は、ルーヴル美術館のマルリーの中庭で盛大に行われ、周年を祝う華やかな時間の中、メゾンと美術館の関係の深さがあらためて示されました。

その姿は、単なる時計を超えた存在感を放っています。その意匠の細部には、世代を超えて受け継がれた技術が息づき、同時に未来へと挑む探求心が感じられます。270周年という節目に誕生した《ラ・ケットゥ・デュ・タン》は、メゾンの哲学を体現する作品であるといえるでしょう。
《天地創造》と並ぶ一般公開
この《ラ・ケットゥ・デュ・タン》とパートナーシップのきっかけとなった《天地創造》は、ルーヴル美術館で開催中の展覧会「Mécaniques d’Art(メカニック・ダール ‒ 機械美の芸術)」にて11月12日まで一般公開されています。会期は2025年9月17日から11月12日まで。展示では、パートナーシップのきっかけとなった《天地創造》と並んで公開されています。

《天地創造》は18世紀の宮廷文化を背景に生まれた作品。一方の《ラ・ケットゥ・デュ・タン》は、21世紀の節目に誕生した芸術作品といえるでしょう。異なる時代に生まれた二つの置時計が並ぶ光景は、時を超えて受け継がれてきた文化の連続性を感じさせます。来館者にとっては、過去と現在、そして未来をつなぐ時の物語に触れる体験となるでしょう。
文化と時計製造が交わる瞬間
時計製造における「探求」の旅を続けるヴァシュロン・コンスタンタンにとって、時計は精緻な機構を備えた道具であると同時に、芸術品でもあるのです。その両面を改めて示したのが、今回の節目だといえるでしょう。メゾンの周年を祝うと同時に、これからもルーヴル美術館と続く、文化、芸術、技術の継承におけるパートナーシップは、まさにラグジュアリーの本質である「世代を超えて受け継がれる価値」を映し出しています。
展覧会情報
展覧会名:「Mécaniques d’Art(メカニック・ダール ‒ 機械美の芸術)」
会場:ルーヴル美術館
公開期間:2025年9月17日(水)〜11月12日(水)
タイトル画像 / Photo : Yuji ONO

