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『葛飾北斎』と『歌川広重』のライバルストーリー。二人の世界的浮世絵師

北斎と広重の出会い〜72歳までの北斎〜

北斎の経歴をひもとくと、早くも6歳にして絵筆をとり、19歳で浮世絵師・勝川春章(かつかわしゅんしょう)の弟子となり、絵師としての活動をスタート。やがて挿絵などで頭角を現しますが、師匠の没後に勝川派から破門され、北斎は独自の画境を目ざすようになっていきます。
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北斎『正宗娘おれん 瀬川菊之丞』

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やまと絵や琳派を学んだ北斎は、宗理(そうり)の号で狂歌絵本の挿絵を手がけ、肉筆で描いた美人画は評判となりますが、当時は歌麿(うたまろ)や写楽(しゃらく)の絶頂期。美人画で名を成すにはいたらず、日々の暮らしにも困るようになっていきます。北斎が40代になったころ、寛政の改革によって読本(よみほん)が流行。北斎はその挿絵を一手に引き受け、創意工夫を凝らした絵が評判となります。50代半ばに読本挿絵を一段落させたころには弟子や私淑者が全国に多数いて、彼らの絵手本として作成した版画『北斎漫画』で北斎の名は不動のものとなります。そのようにして腕を磨いた北斎が70歳を過ぎて挑戦したのが、『冨嶽三十六景』シリーズでした。さまざまな富士の姿を描いた36枚の連作は、浮世絵の世界に風景画という新たなジャンルを確立し、北斎はついに浮世絵の頂点に上りつめたのです。
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北斎『冨嶽三十六景 東都浅草本願寺』

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しかし、北斎が浮世絵師としてトップに君臨したのも束の間。『冨嶽三十六景』が大ヒットした2年後の天保4(1833)年、北斎を凌駕(りょうが)するような絵師が現れます。それが、五街道のひとつである東海道の宿場を題材にした連作『東海道五拾三次』で空前の大ヒットを記録した歌川広重でした。

北斎と広重の出会い〜35歳までの広重〜

広重は寛政9(1797)年、幕府御家人(ごけにん)の火消同心、安藤家に生まれています。13歳で両親を亡くした広重は家計を助けるため、浮世絵師を志して歌川豊広(うたがわとよひろ)に弟子入りし、16歳で広重の画号を授かります。歌川派は美人画や役者絵を得意としていたのですが、広重はそれにとらわれることなく、円山応挙の影響を受けて写生を重視し、独自に腕を磨いていきます。そんな広重が満を持して描いたのが風景画『東都名所』(とうとめいしょ)でした。
s_DMA-ph4 広重『名所江戸百景 王子不動之滝』
広重『名所江戸百景 王子不動之滝』

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しかし、自信作にもかかわらず評判は今ひとつ。その理由は、同じ年に北斎の『冨嶽三十六景』が発表されていたから。72歳の老人が描いた富士山は、当時35歳の広重から見ても斬新かつ革新的で、大きな衝撃を受けたといいます。広重は出端をくじかれたものの、かえって意欲をかきたてられ、一立斎(いちりゅうさい)と号を改めて新たな風景画・名所絵の境地を模索します。そうして2年後、有名版元「保永堂」(ほうえいどう)に依頼を受けて世に送り出したのが『東海道五拾三次』シリーズだったのです。東海道の53の宿場を取材し写生して描き上げた広重の風景画が大当たりをとった背景には、富士山信仰やおかげ参りなどの旅行ブームもありました。

ライバルとして火花を散らすふたり

広重の快作『東海道五拾三次』に対して北斎は『諸国瀧廻り』や『諸国名橋奇覧』などを発表しますが、広重の優位が揺らぐことはありませんでした。ふたりはさらに花鳥画でも競合するようになり、北斎はテクニックを駆使し、広重は抒情的かつ感傷的な画風を追求。結局、江戸庶民の支持を集めたのは広重でした。
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画像左→北斎『桜花に鷹図』
画像右→広重『月に雁』

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その結果、北斎はみずから開拓した風景画に執心することなく肉筆画へシフト。90歳になっても画業に対する熱意は薄れることがなく、没する間際まで絵筆をとり続けました。対する広重はよりいっそう写生を重視し、風景の中に自分の思いを込めた風景画を数多く残します。そんな広重も、富士山をテーマにした『不二三十六景』を描いたのは北斎の没後のこと。
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広重『不二三十六景 東都江戸橋日本橋』

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『冨嶽三十六景』と『東都名所』が同年に発表されるという運命の出会いがなければ、その後のふたりの画業はまた違ったものになっていたのかもしれません。

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