Gourmet
2019.09.13

京都の魅力を御菓子にぎゅっと詰め込んだ和菓子屋「塩芳軒」

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厳選素材で丹精込めてつくられる雅な和菓子

-文/和樂スタッフ植田伊津子(茶の湯、和菓子に強い。人物クローズアップ、きもの等)-

古式ゆかしい長暖簾(ながのれん)を掲げる「塩芳軒(しおよしけん)」は、とりわけ老舗の風格がただようお店。塩芳軒の季節の上生菓子は、高雅な気品に加え、全体のバランスのよさが特徴だ。どれも、主張するギリギリの一歩手前で踏みとどまっているかのような行儀のよさがある。おそらくそれは、茶の湯菓子を主体として生きてきた塩芳軒の歴史に関係する。茶席の菓子は茶道具との関係が重視され、それだけが目立つのを嫌う。「分をわきまえる」ことが大切な要素なのだ。DMA-DSC_1758夏の菓子「笹のつゆ」。店頭には、常時5種類前後の季節の菓子が並び、1か月前後で入れ替えとなる。お誂えの菓子も10個以上より注文可(上生菓子は送付不可)。そのほかに純和三盆製の「雪まろげ」や、小引き出しに干菓子を詰めた「千代たんす」も好評だ。

そうした奥ゆかしい感性が行き届いているところに、京の老舗の真髄がある。こちらの「さざれ石」という和三盆の干菓子は、その名のとおり小さな石がモチーフで、かたちはシンプルの極致。君が代から引かれた古典的な銘がまた、「さすがだなあ」と感心させられる。
 
塩芳軒の初代当主は高家芳次郎(たかやよしじろう)。1882(明治15)年、菓祖・林浄因の流れを汲む塩路軒から別家(暖簾分け)し、創業したと伝えられている。林浄因(りんじょういん)は、初めて饅頭を中国から日本に紹介した人物だ。その後、1896(明治29)年に元聚楽第(じゅらくだい)の一角である西陣に移転し、大正初期ごろに現在の場所に店を構えたという。
 
塩芳軒は時代ごとに伝統を見つめ直し、時代の風を取り入れながら、新たな和菓子づくりにも取り組んできた。おいしい素材へのこだわりもひとしおだ。日々の源になっているのはお客様との対話で、顔の見える関係を大切にしている。

塩芳軒DATA

住所:京都府京都市上京区黒門通中立売上ル飛騨殿町180
アクセス:市バス 堀川中立売下車 「今出川駅」から徒歩約10分
定休日:日曜・祝日・月1回水曜日(不定)
営業時間:9:00-17:30
公式サイト:http://www.kyogashi.com