「川端龍子ー超ド級の日本画ー」展で神作「草の実」を堪能! 

「川端龍子ー超ド級の日本画ー」展で神作「草の実」を堪能! 

目次

昭和の狩野永徳!川端龍子何者ぞ?

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「内覧会狂想曲」。かつてこんなタイトルの企画がINTOJAPANで繰り広げられていたことを何人の方が覚えていらっしゃるでしょう。内覧会狂想曲とは、和樂前編集長にして、元公式キャラクターであるアンドリュー橋本が注目の展覧会の内覧会をレポートするもの。大阪生まれのイギリス育ちを自称するアンドリューが、その独特の言語感覚ー大阪的感覚と大英的感覚が入り混じったーで展覧会をレポートするというリアル、かつ、一種珍妙な描写で大人気を博していました。しかし、2017年の正月、アンドリューは突如として公式キャラクター卒業を和樂のフェイスブック上で宣言。それとともに内覧会狂想曲もひっそりと姿を消してしまいました。

何を隠そうそもそも内覧会狂想曲というタイトルは私、セバスチャン高木がつけたもの。しかもブログの内容がアンドリューとかぶるということでブログの内容まで変えていたのです(そちらの顛末はこちらからご覧ください)。ということで今回突然ですが、私、内覧会狂想曲復活をここに華々しく宣言します!もうアンドリューが書かないなら自分で書く!というわけで東京広尾にある山種美術館で開催中の「川端龍子ー超ド級の日本画ー」展に行ってまいりました。

川端龍子(かわばたりゅうし 1885−1966)は大正から昭和にかけて活躍した日本画家。明治学院大学教授で、山種美術館の顧問を務める山下裕二先生も展覧会の図録で書いていますが、たまーに「りゅうこ」っていう女性だと思っている方もいらっしゃいますから注意してくださいよ! 

龍子は最初、洋画を学びつつ、生計を立てるために20代で新聞や雑誌の挿絵を手がけていました。その後、修行のためにアメリカに渡り、帰国後日本画に転向します。独学で日本画を学んだ龍子は院展の同人になりますが、あまりにも独創的な発想と斬新な色使いで構成された超巨大な作品が「会場芸術」という批判を受け、院展を脱退。自らが主催する青龍社を立ち上げ、以後亡くなるまで青龍展で作品を発表し続けました。その迫力に満ちた作風から「昭和の狩野永徳」とも評されたと言いますから、そのスケールの大きさが想像されます。だってあの桃山巨木主義の先駆けとなった「檜図」やら、織田信長が上杉謙信のご機嫌伺いに贈ろうとしたという「洛中洛外図屏風 上杉本」を描いた永徳ですよ! とことんネームバリューに弱い私など、もうそれだけで龍子すご!って思ってしまいます。

兎にも角にも今回の展覧会は龍子没後50年を記念して、初期から晩年の代表作を通して龍子の画業を一気に俯瞰しようというもの。恐れず言えば知られざる日本画家川端龍子を発見するまたとない機会となっています。

何はともあれ「草の実」を目撃せよ!

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ものすごーく個人的な意見ですが、私、展覧会では、もう、ひとつの作品だけじっくりと見ればいいかな!と思っております。だって日本美術って、おそるべき研鑽をつんだ画家や絵師がそれこそ数ヶ月、もしかして、数年をかけて描いているんですよ。それを一度に何十点も見るなんてやっぱり無理だと思うんですよね。ですので、展覧会に行く時は「これだけは絶対に見る!」という一点を決めて、美術館に入るなりその作品めがけて突進!そして、とにかくそれだけを全精力をかけて見る。他の作品はお目当の作品を見た後に余力があればさっと見て、どうしても気になるものがあればもういちど来ることにしています。その方が、ずっと展覧会の記憶が残るなんて思っているのは、私だけでしょうか。

本展で私がもうこれだけは!と思う作品は、なんといっても「草の実」です。この絵は、すすきや女郎花(おみなえし)といった秋の草花を焼金(やききん)、プラチナ、青金などの金泥(きんでい)主体で描いたものですが、濃紺の絹地と金の草花のコントラストがあまりに印象的で思わず絵の前で立ちつくしてしまいます。

しかも描かれている草花は龍子の自宅近くに生えた雑草。この雑草を金で描くという発想がもうすごい!ですよね。まるで、命そのものを歌い上げているかのように見える本作は、奈良から平安にかけて記されたお経、紺紙金泥経(こんしきんでいきょう)をベースにしていると言いますから、龍子は身の回りにある雑草に宇宙そのものを見たのかもしれませんね。それくらいの存在感を放つ「草の実」は、まさにNever die to see!ですよ。

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「草の実」 1931年 絹本彩色 177.5×386.3cm 大田区立龍子記念館

龍子展の帰りに家の近所で撮ってみました!

「草の実」のあまりの衝撃にふらふらしながら帰宅の途についた私ですが、実は道草観察を趣味としております。なので、この絵に描かれている草花たちがかわいくて仕方がないんですよねー。日頃名前も覚えてもらえない、いや別に路傍の草たちは自分に名前がつけられていることなんてどうでもよいと思うのですが、そんな草花を生命賛歌として描いた龍子ってなんて素敵なんだろうなどと思っていると、あれ?マンションの脇に生えているではないですか、「草の実」で見た草が。向かって左側中央でひときわ光り輝く幅広の葉を持つ植物、これ、「タケニグサ」って言うんですよ。昔、竹をやわらかくして加工しやすくするために一緒に煮られたことからこの名がついたと言われているのですが、いたるところに生えている割には、あんまり知られていませんよね。そんな名もなき草に愛おしさを感じながら散歩するのっていいですよ!「草の実」はそんな小さな喜びを私たちに気づかせてくれる絵でもあるんです。

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会場芸術の記念碑的作品

一点だけ見ろとか言っておいてなんですが、本展における他の注目作品も見ておきましょう。まずは、龍子の「会場芸術」の記念碑的存在とも言える「鳴門」。本作は龍子が院展を脱退した後に立ち上げた青龍社の第一回展で発表されました。「でっかくて派手な絵ばっかり描いてさ、あいつ」と批判される中、あえて185.5×420センチの、青い荒波と白い波の色使いがこれでもかこれでもかと迫って来る巨大な絵を出展すると言う叛逆の精神のなんと潔いことよ!Nirvanaのカートコバーンやレゲエの神様ボブマーリーに憧れるつつ、バビロンな社会にどっぷりと浸かってしまっている私にはもうたまりません。

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「鳴門」 1929年 絹本彩色 185.5×420cm 山種美術館

なんと戦闘機の機体を半透明で描写!

「香炉峰」は海軍省嘱託画家として偵察機に同乗し、そこから見た廬山の景観を描いた作品。画面いっぱいに描かれた戦闘機の機体が半透明に描写され、パイロットは自身の姿として描き出されています。いわゆる戦争画ですが、龍子にかかるとこんなとんでもない絵になってしまうのがなんとも不思議。山下裕二先生が、本展のサブタイトルである「超ド級の日本画」にぴったりとこの絵に関して語っているのも納得です。

7_大田区立龍子記念館 川端龍子 香炉峰 00(全) 1939年 圧縮版

「香炉峰」 1939年 紙本彩色 242.5×726.5cm 大田区立龍子記念館

爆弾で吹き飛ぶ様を植物で表現

終戦直前の1945年8月13日、龍子の自宅に米軍の爆弾が落ちました。龍子は防空壕で難を逃れましたが、何人もの近しい人をこの爆撃で亡くしました。この絵は菜園の夏野菜が吹き飛ぶ瞬間を描写したものですが、仏を供養する散華という言葉が使われていることからもわかるように、この野菜たちは今まさに終わらんとする生命の象徴として見ることができるかもしれません。画面に散らされた金の箔や砂子は、爆発の閃光の残酷な美しさを伝えています。

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「爆弾散華」 1945年 紙本彩色 249.0×188cm 大田区立龍子記念館

こんなすごろく付録につけたいなぁ!

最後に紹介するのは、雑誌「少女の友」につけられた付録の双六。龍子は若い頃生計をたてるために挿絵画家として活躍していました。和樂といえば付録、付録といえば和樂と言われる雑誌の編集長として、私、この付録には負けられません!(え?展覧会とは関係ない??) 

駆け足で巡りましたが、川端龍子いかがしたか? まだまだ私たちの知らない日本美術、たくさんありますよね。「帰ってきた内覧会狂想曲」では、これからも大注目の展覧会をいち早くレポートします。お楽しみに!

和樂編集長 セバスチャン高木

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「花鳥双六」 1917年 実業之日本社 多色刷木版

「川端龍子ー超ド級の日本画ー」展 
会期:〜2017年8月20日(日)
*会期中、一部展示替えあり(前期: 6/24~7/23、後期: 7/25-8/20)
会場:山種美術館
主催:山種美術館、日本経済新聞社
協力:大田区立龍子記念館
開館時間: 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日:月曜日(但し、7/17(月)は開館、7/18(火)は休館)
入館料:一般1200円(1000円)・大高生900円(800円)・中学生以下無料
※( )内は20名以上の団体料金および前売料金。
※障がい者手帳、被爆者健康手帳をご提示の方、およびその介助者(1名)は無料。
[お得な割引サービス]
きもの・ゆかた割引:会期中、きもの・ゆかたでご来館のお客様は、団体割引料金となります。
リピーター割引:使用済み入場券(有料)のご提出で会期中の入館料が団体割引料金となります(1名様1枚につき1回限り有効)。
※リピーター割引は、同一の展覧会を2回目以降にご覧いただく場合に有効。
 他の展覧会の入場券はご使用いただけません。
※ 複数の割引の併用はできません。
主な出品作品: 《華曲》◇、 《鳴門》、 《真珠》◆、 《黒潮》、 《月光》、 《鶴鼎図》、 《五鱗》◆、 《八ツ橋》◇、 《松竹梅》のうち「梅(紫昏図)」他(以上、山種美術館)、 《慈悲光礼讃(朝・夕)》◆、 《角突之巻(越後二十村行事)》【会期中巻替】、 《金閣炎上》◇(以上、東京国立近代美術館)、 《請雨曼荼羅》、 《草の実》、 《龍巻》、 《香炉峰》、 《爆弾散華》、 《百子図》、 《夢》、 《十一面観音》他(以上、大田区立龍子記念館)、 《白堊と群青》(東京美術倶楽部)など
約60点(すべて川端龍子筆)
※会期中、一部展示替えあり。◆前期: 6/24~7/23、◇後期: 7/25~8/20、無記載は全期間展示。

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