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世にも珍しい、つぶあん仕立ての絶品水ようかん
岬屋の「水羊羹(つぶあん、こしあん)」
「小倉って書いてある水ようかんは、たいていのものがこしあんに別炊きの小豆の粒を入れているの。うちは生菓子に使うつぶあんからつくります。大福に入っているような〝つぶしあん〟でもない。口どけが全然違うからね」と自作の「つぶあん仕立ての水羊羹」を語る3代目・渡辺好樹(よしき)さん。ふっくら炊き上がった小豆に、ほんの少しつぶれたものも混じった「岬屋」独自のつぶあん。理想は「舌の上で粒を転がすように楽しめる」ことで、それが寒天と合わさると口の中でほろりとくずれ、粒が強調されて至福の味わいが広がります。「といっても、つぶあんだけを寒天に煮溶かしても、こうはならないんだよ」とご主人。実はつぶあんをこしあんでのばすことにより、なめらかな水ようかんができるとか。今から約30年前に当代がレシピを確立したそうで、手間を手間とも思わずにつくり続けて今に至ります。対するこしあんは、コシの強い寒天の食感が楽しめる王道の味。あんの個性が違うのに、同じ口どけに仕上がるのもさすがの技です。
京都の名店「川端道喜(かわばたどうき) 」の流れを汲む、赤坂「ちまきや」で初代が修業し、昭和8(1933)年に開業。5月下旬から小豆の水ようかんを販売。そこから腰を据えて白小豆の準備に入り、6月からは希少な備中(びっちゅう)白小豆が楽しめる「白小豆の水羊羹」も店頭にお目見えします。
ケースの表面まで詰まっているのでずっしり重い
店舗情報
岬屋 みさきや
住所:東京都渋谷区富ヶ谷2-17-7
電話:03-3467-8468
営業時間:10時~16時 日曜・月曜休(8月後半と年始は休み)
●お取り寄せができます。電話にてお問い合わせを。
撮影/石井宏明 構成/藤田 優、後藤淳美(本誌)本記事は雑誌『和樂(2021年8・9月号)』の転載です。
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