万能ソースが1つあれば、なんでもできる!
特に嬉しいのが、桂さん特製の「万能ソース」のレシピだ。
作っておくと、前菜もメインもちょっとした肴やシメの1皿までいろんなお料理に展開できる、まさに万能ソース! 簡単に作れて、同じソースを使っているとは思えない幅広い味わいが楽しめるのだ。
冷蔵庫に忍ばせておけば、思い立ったらいつでも宴が始められるお守りのような存在になる。
今宵も簡単に作れるソースとお料理を教えてください!とキッチンへ駆け込んだ。
スパイスや焼きたてパンの香り広がるキッチンで迎えてくれた桂さん。
教えてくれたのは、「生姜とスパイス」のソース。
15分ほどで簡単に作ることができた。そしてロゼワインがすすむ、すすむ……飲み過ぎ注意!の美味しい料理が次々と生まれていった。
今回はソースのレシピと、ソースで作った3皿を紹介する。
では、さっそく材料と手順を見ていこう。
なお、それぞれの調理の様子が伝わればと写真を多めに掲載しているが、手順そのものはいたってシンプルなのでご安心いただきたい。
◆生姜とスパイスのソース
まずは、ソース作りから。
(材料)
生姜 60g
玉ねぎ 120g
カルダモンパウダー 大さじ1
キャラウェイシード 大さじ1
米油 60cc
酢 大さじ1
塩 小さじ1
醤油 大さじ1
(作り方)
1.生姜をおろし、玉ねぎはみじん切りにする。みじん切りの大きさはこれくらい。
2.火をつける前の小鍋にキャラウェイシードと米油を入れ、中火にかける。
まずは、キャラウェイシードの香り出しをしていく。火が弱いと香りが出ないのでしっかりと中火で。
シード系のスパイスは、他の材料と混ぜるより先に火にかけたほうが香りが出るのだそう。シュワシュワと湧いてくると香りが引き立って部屋全体に芳ばしい香りにが広がった。
香りが出てきたら、玉ねぎを入れ、5分ほど煮る。
3.玉ねぎから甘い香りが出て来たらカルダモンパウダーを入れ、中火のままよく混ぜる。
4.生姜おろしを加え、さらに5分ほど煮る。
カルダモンと生姜が調和して、立体感のある香りが漂ってきた。
5.酢、塩、醤油の順に加え、強火で2〜3分煮て出来上がり。
日持ちするのも嬉しい
出来上がったソースは、半日ほど寝かせると油が馴染んで味が落ち着く。冷まして使うことをおすすめしたい。
冷蔵庫で5日ほど、冷凍庫に入れれば1ヶ月ほど保存が可能。
ジップロックなどに入れ、平たくして冷凍すると、カレーのルーのようにパキッと割って使える。休日に作っておいたら、平日どんなに辛くてもこのソースを励みにきっと強い気持ち(!!)で生き延びられる気がする。
◆旬な果実とくるみ・春菊のサラダ
では、お料理を作っていこう。
ちなみにこのサラダは、カットして和えるだけ! である。
(材料) ※2〜3人分
旬な果実 適量
くるみ 適量
春菊 適量
生姜とスパイスのソース 小さじ2
ディジョンマスタード 小さじ1
酢 小さじ1
1.季節の果物(今回は柿を使用。他にイチジク、ぶどう、夏みかん など)を食べやすい大きさにカットする。
春菊は柔らかい葉の部分を食べやすくひとくち大にちぎる。
2.ドレッシングを作る。生姜とスパイスのソース、ディジョンマスタード、酢を混ぜ合わせる。比率が「2:1:1」になるようにするとバランスが良い。
3.春菊とナッツを2のボウルに入れてサックリと混ぜる。
4.器に果実を盛り、その上に3を乗せる。
5.ブラックペッパーを振って仕上げる。
盛り付けのポイントは「余白」と「高さ」
柿を丸く並べたものと、縦一列にしたもの、2つのタイプの盛り付けを見せてもらった。
具材を平らに広げるのではなく、器に余白を作って高さのある盛り付けにすると美しく仕上がる。
◆ひき肉と木の子・レーズンのオーブン焼き ヨーグルト添え
お次は、今宵のメインディッシュ!
(材料) ※2〜3人分
合挽き肉 200g
お好みの木の子(今回はひらたけ1袋を使用・マッシュルームや椎茸なども合う)
生姜とスパイスのソース 大さじ4と1/2
レーズン 50g
卵 1個
パン粉 20g
ピンクペッパー 適量
ブラックペッパー 適量
ヨーグルト 適量
1.木の子は大きさを合わせるようにカットしておく。
2.ボウルに卵、パン粉、ソース、レーズンを入れて混ぜ合わせる。
3.2に合挽き肉を加えてよく混ぜる。
4.耐熱皿に混ぜ合わせたものを敷き詰める。
5.木の子を4の上に乗せる。
6.トースターやオーブンで15〜20分ほど焼く。
5.指先で軽く潰したピンクペッパーとブラックペッパーを振って、脇にヨーグルトを添える。
さあ、食卓で取り分けていただこう。
◆イチジクにカッテージチーズとソースを添えて
最後にもう1皿。
お肉が焼き上がるまでの時間に、こんな1品を出してくれた。
カットしたイチジクにカッテージチーズと今回のソースを乗せ、はちみつとプラックペッパー&ピンクペッパーをトッピングしたつまみ。
うまい。クセになる美味しさで飲んで食べての無限ループになってしまう。
ロゼに合わせるのにはカッテージチーズ、赤ワインならブルーチーズを乗せると良いそうだ。
今年最後のイチジクになりそうな今時分。季節の移り変わりを感じる1皿だ。洋梨などで作っても美味しい。
その土地のものが生む調和
この日は甲州のロゼワインをいただいたがお料理と抜群の相性でうっとりとした。「生姜とスパイスのソース」には和の調味料である醤油が使われている。そのことも日本のワインに合うポイントだと桂さん。
時期にあった旬の食材が美味しいように、その土地にあった調味料はおいしさを引き立ててくれるようだ。
お魚料理にも、締めにも
簡単に作れることに加えて、冒頭で申し上げたように「同じソースを使っているとは思えない幅広い味わいが楽しめる」ことが大きな魅力の万能ソース。今回のお料理も、一緒に食卓に並べても飽きずに食べられる美味しさだ。しかも、それぞれに個性豊かな味わいがある。
サラダはお酢を合わせたこともあり、味がキリッと絞まり柿と合わせても甘くなりすぎない。オーブン焼きはお肉と合わせて加熱したことで全体の味とまろやかに溶け合って旨みを引き出していた。
その他にも、魚と木の子をソテーした上にソースとして乗せたり、サバ缶と合わせてパスタにしたり、ツナと木の子と一緒に炊いたら洋風炊き込みご飯にもできるという。どれも試してみたい……。
万能ソースがあると、料理のハードルが下がって作ることが楽しみになる。そしてお酒が進む良い夜が過ごせる予感がする。
日々の暮らしの中に、季節を味わうひと時を。
ぜひお試しあれ!
訪ねた料理人
田中桂(たなか かつら)
お酒さそう料理人。辻日本料理専門学校を卒業後、創作懐石料理、家庭料理をメインに、エスニックやビストロでも経験を積む。池尻大橋にて季節料理・酒処”さそう”店主をつとめた。NHKラジオレギュラー出演、料理雑誌ダンチュウや食楽、料理通信にてレシピ公開を手がけるなど活動は多岐に渡る。