Lifestyle

2023.11.22

秋の夜長レシピ、生姜とスパイスのソースで広がるワイン時間。「今宵、お酒さそう料理を」

ご近所のネコと散歩していてると、大きなお月さまが昇ってくるところだった。だいぶ肌寒くなって空気も乾燥してくると、月が冴えざえと美しい。 こんな夜は家でゆっくり一杯やりたくなる。夜長にワインと何か......美味しいものを食べたい。さて、なにを作ろうか?季節の変わり目、わたしは料理人の桂(かつら)さんを訪ねる。お酒を誘う料理が得意な桂さん。旬の食材と独特のスパイス遣いで、季節の気分にそっと寄り添うお料理を教えてくれる。

万能ソースが1つあれば、なんでもできる!

特に嬉しいのが、桂さん特製の「万能ソース」のレシピだ。
作っておくと、前菜もメインもちょっとした肴やシメの1皿までいろんなお料理に展開できる、まさに万能ソース! 簡単に作れて、同じソースを使っているとは思えない幅広い味わいが楽しめるのだ。
冷蔵庫に忍ばせておけば、思い立ったらいつでも宴が始められるお守りのような存在になる。

今宵も簡単に作れるソースとお料理を教えてください!とキッチンへ駆け込んだ。

スパイスや焼きたてパンの香り広がるキッチンで迎えてくれた桂さん。
教えてくれたのは、「生姜とスパイス」のソース。
15分ほどで簡単に作ることができた。そしてロゼワインがすすむ、すすむ……飲み過ぎ注意!の美味しい料理が次々と生まれていった。
今回はソースのレシピと、ソースで作った3皿を紹介する。

では、さっそく材料と手順を見ていこう。
なお、それぞれの調理の様子が伝わればと写真を多めに掲載しているが、手順そのものはいたってシンプルなのでご安心いただきたい。

◆生姜とスパイスのソース

まずは、ソース作りから。

「味見に」と、匙に乗せてもらったソース。生姜とカルダモンが香りのベースとなっている。つぶつぶのキャラウェイシードを噛むと華やいだ香りが口の中に広がってアクセントに。このままでも酒のアテになってしまい、大変キケンである。

(材料)
生姜 60g
玉ねぎ 120g
カルダモンパウダー 大さじ1
キャラウェイシード 大さじ1
米油 60cc
酢 大さじ1
塩 小さじ1
醤油 大さじ1

カルダモンパウダーは、カレーなどでよく活躍するスパイス。キャラウェイシードは、甘い香りとスッと爽やかな香りをあわせ持つ華やかなスパイス。パウダーにせずシードのまま使うことで、歯ごたえと噛んだ瞬間の香りの広がりが楽しめる。お菓子やザワークラウト、ピクルスなどによく使われる。どちらも日常的に使えるシーンの多いスパイスなので、気軽に取り入れたい。

(作り方)
1.生姜をおろし、玉ねぎはみじん切りにする。みじん切りの大きさはこれくらい。

2.火をつける前の小鍋にキャラウェイシードと米油を入れ、中火にかける。

まずは、キャラウェイシードの香り出しをしていく。火が弱いと香りが出ないのでしっかりと中火で。


シード系のスパイスは、他の材料と混ぜるより先に火にかけたほうが香りが出るのだそう。シュワシュワと湧いてくると香りが引き立って部屋全体に芳ばしい香りにが広がった。

香りが出てきたら、玉ねぎを入れ、5分ほど煮る。

3.玉ねぎから甘い香りが出て来たらカルダモンパウダーを入れ、中火のままよく混ぜる。

カルダモンは生姜との相性抜群。火を通すことで、粉っぽさが消えて、まろやかになる。甘くエキゾチックな香りは、「スパイスの女王」と呼ばれることもあるのだとか。

4.生姜おろしを加え、さらに5分ほど煮る。

カルダモンと生姜が調和して、立体感のある香りが漂ってきた。

5.酢、塩、醤油の順に加え、強火で2〜3分煮て出来上がり。

酢は尖った風味をまろやかにしたいので最初に加え、続いて塩。醤油は焦げやすいので、酢と塩を入れて鍋の温度が少し下がったところに入れる。

日持ちするのも嬉しい

出来上がったソースは、半日ほど寝かせると油が馴染んで味が落ち着く。冷まして使うことをおすすめしたい。
冷蔵庫で5日ほど、冷凍庫に入れれば1ヶ月ほど保存が可能。
ジップロックなどに入れ、平たくして冷凍すると、カレーのルーのようにパキッと割って使える。休日に作っておいたら、平日どんなに辛くてもこのソースを励みにきっと強い気持ち(!!)で生き延びられる気がする。

◆旬な果実とくるみ・春菊のサラダ

では、お料理を作っていこう。
ちなみにこのサラダは、カットして和えるだけ! である。

(材料) ※2〜3人分
旬な果実 適量
くるみ 適量
春菊 適量
生姜とスパイスのソース 小さじ2
ディジョンマスタード 小さじ1
酢 小さじ1

くるみは軽く焼くか炒っておくと香りが出る。

スーパーでは、粒マスタードのお隣あたりで見かける「ディジョンマスタード」。使い慣れない方が多いかもしれない(筆者も桂さんに教わって初めて使い始めた)が、サンドイッチをはじめ簡単なドレッシング作りや和え物などに使いやすいのでぜひおすすめしたい。

1.季節の果物(今回は柿を使用。他にイチジク、ぶどう、夏みかん など)を食べやすい大きさにカットする。

春菊は柔らかい葉の部分を食べやすくひとくち大にちぎる。

茎は硬いことが多いので別によけて保存しておき、お味噌汁などに使うと◎

2.ドレッシングを作る。生姜とスパイスのソース、ディジョンマスタード、酢を混ぜ合わせる。比率が「2:1:1」になるようにするとバランスが良い。

3.春菊とナッツを2のボウルに入れてサックリと混ぜる。

春菊がシンナリしてしまわないように、ヘラで軽くサックリ混ぜるのがポイント。

4.器に果実を盛り、その上に3を乗せる。

葉物を盛り付ける時は、高さを出すと美しい仕上がりに。数回に分けて、箸でつまんだ束を90度ずつたがい違いの向きに積み上げていくようなイメージだ。

5.ブラックペッパーを振って仕上げる。

盛り付けのポイントは「余白」と「高さ」

柿を丸く並べたものと、縦一列にしたもの、2つのタイプの盛り付けを見せてもらった。
具材を平らに広げるのではなく、器に余白を作って高さのある盛り付けにすると美しく仕上がる。

民藝の器が好きという桂さん。今回使用したのは、大分県の小鹿田焼(おんたやき)。作り手によって表情の異なる飛び鉋(とびかんな)の技法で作られた器だ。柿の色が映えて美味しそう。器は好きな作家さんのものを少しずつ集めたり、旅先で目に留まったものを連れ帰ってくるのだそう。

縦一列に並んだ柿と高く盛り付けられた春菊。奥行きが出て立体感が印象的。

◆ひき肉と木の子・レーズンのオーブン焼き ヨーグルト添え

お次は、今宵のメインディッシュ!

(材料) ※2〜3人分
合挽き肉 200g
お好みの木の子(今回はひらたけ1袋を使用・マッシュルームや椎茸なども合う)
生姜とスパイスのソース 大さじ4と1/2
レーズン 50g
卵 1個
パン粉 20g
ピンクペッパー 適量
ブラックペッパー 適量
ヨーグルト 適量

1.木の子は大きさを合わせるようにカットしておく。

柄(え)の部分は角切りに。

カサは手で割いていく。加熱で小さくなるので大きめでOK。

2.ボウルに卵、パン粉、ソース、レーズンを入れて混ぜ合わせる。

3.2に合挽き肉を加えてよく混ぜる。

手を使って混ぜると肌の温かさで肉の脂溶けて焼き上がった時にボソボソとしてしまうことがあるので、ヘラで混ぜると良い。ひき肉の赤みと脂が混ざり合って、ピンク色になるまでしっかりと混ぜる。

「しっかり混ぜる」のは、この料理の頑張りどころ!

きれいなピンク色に。ハンバーグなどを作る時もこのピンク色を目安にすると美味しくできる!とのこと。

4.耐熱皿に混ぜ合わせたものを敷き詰める。

焼くと中心部分が盛り上がってくるので、中央を少しへこませておくと良い。

ラップを乗せた上から手で押さえると、まんべんなくしっかりと整えられる。具材がミチっとした仕上がりに。

5.木の子を4の上に乗せる。

木の子は、柄の部分を押し沈めるよう先に乗せて、カサの部分をその上に乗せると焼き上がりの見栄えが良くなる。溢れるほどの量でも焼くと縮んで収まるので大丈夫!

6.トースターやオーブンで15〜20分ほど焼く。

トースターでも高温の状態で焼けば十分に火が通る。肉汁が器の外に漏れるのが心配な場合は、下にアルミホイルを敷いておくと良い。

5.指先で軽く潰したピンクペッパーとブラックペッパーを振って、脇にヨーグルトを添える。

ヨーグルトの種類は、ブルガリアなど酸味のあるタイプが相性が良い。

さあ、食卓で取り分けていただこう。

取り分けた後に、ヨーグルトをソースのように添えて。取り皿は、骨董屋さんで見つけたものだそう。

◆イチジクにカッテージチーズとソースを添えて

最後にもう1皿。
お肉が焼き上がるまでの時間に、こんな1品を出してくれた。

カットしたイチジクにカッテージチーズと今回のソースを乗せ、はちみつとプラックペッパー&ピンクペッパーをトッピングしたつまみ。


うまい。クセになる美味しさで飲んで食べての無限ループになってしまう。

ロゼに合わせるのにはカッテージチーズ、赤ワインならブルーチーズを乗せると良いそうだ。
今年最後のイチジクになりそうな今時分。季節の移り変わりを感じる1皿だ。洋梨などで作っても美味しい。

それぞれの料理は小皿に取り分けた後も美しかった。食卓の器選びのポイントは「揃えすぎないこと」だという。

その土地のものが生む調和

この日は甲州のロゼワインをいただいたがお料理と抜群の相性でうっとりとした。「生姜とスパイスのソース」には和の調味料である醤油が使われている。そのことも日本のワインに合うポイントだと桂さん。
時期にあった旬の食材が美味しいように、その土地にあった調味料はおいしさを引き立ててくれるようだ。

お魚料理にも、締めにも

簡単に作れることに加えて、冒頭で申し上げたように「同じソースを使っているとは思えない幅広い味わいが楽しめる」ことが大きな魅力の万能ソース。今回のお料理も、一緒に食卓に並べても飽きずに食べられる美味しさだ。しかも、それぞれに個性豊かな味わいがある。
サラダはお酢を合わせたこともあり、味がキリッと絞まり柿と合わせても甘くなりすぎない。オーブン焼きはお肉と合わせて加熱したことで全体の味とまろやかに溶け合って旨みを引き出していた。

その他にも、魚と木の子をソテーした上にソースとして乗せたり、サバ缶と合わせてパスタにしたり、ツナと木の子と一緒に炊いたら洋風炊き込みご飯にもできるという。どれも試してみたい……。
万能ソースがあると、料理のハードルが下がって作ることが楽しみになる。そしてお酒が進む良い夜が過ごせる予感がする。
日々の暮らしの中に、季節を味わうひと時を。
ぜひお試しあれ!

訪ねた料理人


田中桂(たなか かつら)
お酒さそう料理人。辻日本料理専門学校を卒業後、創作懐石料理、家庭料理をメインに、エスニックやビストロでも経験を積む。池尻大橋にて季節料理・酒処”さそう”店主をつとめた。NHKラジオレギュラー出演、料理雑誌ダンチュウや食楽、料理通信にてレシピ公開を手がけるなど活動は多岐に渡る。

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小俣荘子

淡路島生まれ、横浜育ち。海が見えると安心する。ある夏、腕に火傷を負って治療のため長袖必須に。猛暑に溶け落ちる窮地を浴衣に救われ涼しく過ごす。以来、昔ながらのものを日常に取り入れるのが面白くなり、入り口探しがライフワークとなる。紙でできたものと小さいものに目がない。旅先の美術館カフェでぼんやりする時間が好き。 https://linktr.ee/omata_shoko
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