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夢は自分の刀をつくること?!【刀剣博物館編_3】尾上右近の日本文化入門_INTOJapaaaaN!

刀剣の鑑賞法歴史を学びつつ、すっかり鎌倉時代の刀剣「助真」に魅了されたケンケン。さらに3F展示室では、現代刀匠の刀剣を拝見しながら石井さんとの対談スタート!

尾上右近

自分の刀をつくりたくなりました!

右近 鑑賞の仕方を初めて教えていただいて、まず反りを見てという、見る順番として理にかなっているとすごく感じました。正しい順番で知っていくという感覚がすごくしました。

石井 われわれも先輩からいろいろ教えていただいて、鑑刀道じゃないですけど、見る上での順序だてた筋道で見ていくと、より理解が深まる。そういう側面はあると思います。ただ、刀も見れば見るほど、その奥深さに困惑することがあります。時代によって、ある程度の分類分けや、流派や刀工のクセなど特色はありますが、教科書にはないちょっと外れた出来とかいろんなものがあって、またそれが面白く、味わいでもあるんです。なかなか一筋縄ではいかないのが刀の魅力。やればやるほど知りたくなる、そういうところも面白いですね。

尾上右近

右近 パッと見て、この年代のどういう系統の人だか、おわかりになりますか?

石井 時代と流派、系統は大体わかりますが、われわれ鑑定家が見ても、どこの特色を重点的にとらえるかにより、意見が異なることもあります。それがまた難しいところでもあります。

右近 好みもあるんでしょうね。

石井 あります。日本刀には、大和、山城、備前、相州、美濃と5か伝あるんですね。私は鎌倉で発祥された相州伝が好きです。華やかな刃文もいいですが、相州伝の刃文の中にはたゆたうと言うのでしょうか、そういう刃文が基本。それから、日本刀の刃文の構成物質として沸(にえ)とか匂(におい)という、微量の微粒子が集まって刃文というのが出来上がります。目に見えるのを沸、目に見えないほど細かいのを匂と言いますが、私は目に見えるぐらいの粗さの沸の粒子が目立つ、わりと荒々しい感じの刃文が好きなんです。

右近 お好きということがひしひしと伝わってきますね(笑)。

石井 本当に千変万化というか、1本たりとも同じ刀はないわけです。刀の鑑定で刀剣博物館には何千本という刀がこちらに来るんですが、オーッまだこんなのがあるのか、よく今まで何の指定も認定も受けずに残っていたなというものが今だに出てくるんですよ。

右近 そういうお話を聞いたり、見たりするうちに、自分の刀をつくりたくなっちゃいますね。僕は直刃(すぐは)がけっこう好きです。わりと自然で、品格があり、ちょっと奥ゆかしさがあるようなもの。でも今日はやっぱり助真がいちばん印象に残りました。実用性がある時代のもの。美しさを追求してとか作為ということではない中でごく自然体の中で生まれてきた名刀。ましてや人の命を取るためのものとは思えない美しさと、自然な魅力がありました。やはり手に持たせていただいたのが大きいと思うんですけど。江戸時代になってからのもう1本の刀と比較しても、全然違うような気がしたんです。

石井 おお、最初でそういうご感想を抱かれるのは、やっぱりお仕事柄も反映されているのかなというふうに思いますね。

尾上右近

石井 たたら製鉄から考えると、ものすごい人間の力が関わっています。みんなハンドメイドなわけですから。これだけ科学技術が進んでデジタル化された社会であっても、まず工場ではつくれない。ひとりの人間が槌を打って初めて出来上がっていく刀なんです。研ぎにしても鞘にしても全部が人の手ででき上がっているという。そういう意味では超アナログな世界です。でも人間がつくっているというところに最終的には究極の価値があるということですね。

右近 そうですね。ますますつくりたくなっちゃうね(笑)。

石井 いつでも、ご相談に乗りますよ。

右近 ほんとですね、絶対、絶対。 

右近 歌舞伎俳優には、茶碗とかいろんな趣味をお持ちの方がいらっしゃるけど、自分の刀をつくったという人はあまり聞いたことがない。僕の本名は「研佑」(けんすけ)です。研ぐという字なんですよ。

石井 おお、まさしく!

右近 鞘とかも好きなのがあるんです、堆朱とか…。夢がふくらむなあ。刀をつくったら僕の自主公演「研の會」のロビーで刀を展示しようかとか。そんなふうに今、勝手に思い描いてました。銘は「和樂」でいいね(笑)。

右近 刀を注文したら、つくってもらってるところを見に行きたいです。

石井 もし機会があれば、たたら製鉄も実際にご覧になっていただければ、日本刀に対する認識がガラッと変わると思います。三昼夜、不眠不休で交代で命がけでやるという。あれは一種の神事に近いものです。毎年、いちばん寒くて湿気の少ない1月に行われます。

右近 ご縁があれば、是非、拝見しに伺いたいです。

尾上右近

石井 刀というのは、そこに存在するだけで引き締まるという独特の緊張感があります。よく聞く話として、乱れた心を落ち着かせるために自分はときどき刀を鑑賞するんだという方もいらっしゃるんです。精神修養じゃないですけども、日常のいろんな悩み事や浮き沈みとか、そういうことをグッと抑えるために刀を取り出して、ひとりで見るという方もいらっしゃるみたいですね。

右近 今日はありがとうございました。

石井 初めてなのに本当に自然な感じでご覧になっていたので、やっぱり流石だなという感じがしました。

右近 いえいえ、刀がすごいなと思いました。刀!とあまり思わないでスッと入らせてもらったという感じです。耳鳴りはしましたけど(笑)。

石井 今、5月20日(日)まで、うちの格付け審査で上から2番目に新たに指定された重要刀剣等の指定展を開催中ですが、そのあと5月26日(土)〜7月16日(月)には、さらに上の特別重要刀剣等新指定展があります。これは新しく指定された重要文化財に準ずるほどの名刀ですので、是非ご覧ください。

右近 あ、僕はちょうどうかがえます。

石井 お待ちしています。私も、今日いろいろお話していると歌舞伎を拝見したくなりました。

右近 嬉しいです。是非!

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ケンケンが刀剣博物館に!
刀剣の歴史って?

【尾上右近の日本文化入門】

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第2回『大観と言えば富士?!』
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<プロフィール>尾上右近(おのえうこん) 歌舞伎俳優。屋号は音羽屋。1992年生まれ。江戸浄瑠璃清元節宗家で高輪派の家元・七代目清元延寿太夫の次男として生まれた。兄は清元節三味線方の清元昂洋。曾祖父は六代目尾上菊五郎。母方の祖父は鶴田浩二。2000年4月、本名・岡村研佑(けんすけ)の名で、歌舞伎座公演『舞鶴雪月花』松虫で初舞台を踏み、名子役として大活躍。05年1月新橋演舞場『人情噺文七元結』長兵衛娘・お久ほかで二代目尾上右近を襲名した。舞踊の腕も群を抜く存在。本名の研佑からケンケンの愛称で親しまれており、愛される存在。今年2月に七代目清元栄寿太夫を襲名披露し、歌舞伎俳優と清元の二刀流で躍進中。3月には第39回松尾芸能賞の新人賞を受賞した。5月は御園座のスーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』に出演予定。7月6日〜22日『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル』(紀伊国屋サザンシアターTAKASHIMAYA)に出演予定。8月26日、27日は自主公演「研の會」を控えている。
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文/新居典子 撮影/三浦憲治 構成/新居典子・久保志帆子

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